国土交通省は9月25日、台風第25号で堤防が決壊した千葉県の印旛沼周辺で、広範囲かつ長期的な浸水被害が続いているとして、千葉県、独立行政法人水資源機構、関東地方整備局の3者からなる「チーム印旛沼」を結成したと発表した。3者は「印旛沼周辺における緊急排水等オペレーション」に着手し、台風第26号の接近を考慮して1週間程度を目途に完了させることを目指す。
3本柱の対策
対策は3本柱で組まれている。1つ目は印旛沼そのものの水位を下げることだ。排水ポンプを最大限稼働させ、9月25日7時時点で約3.0メートルだった水位を、一両日中に平常時の2.3メートルまで下げた上で、さらに低下を図る。
2つ目は決壊した堤防の応急復旧である。対象は印旛沼などの3地区4か所で、国は今後の雨で水位が再び上がっても決壊箇所から氾濫しないよう、現地での施工方法を技術的に支援する。
3つ目が浸水している場所からの緊急排水だ。印旛沼周辺など千葉県内で既に動いている排水ポンプ車に加え、氾濫した水を早く抜くために台数を今後30台まで増やす。国交省が9月26日10時に公表した第10報によると、同省が派遣した排水ポンプ車は9月26日時点で22台、これまでの延べ95台・日にのぼる。このほか茂原市、佐倉市、印西市、白子町に7台を貸し出している。
決壊したのは県管理の3か所
千葉県の9月23日の報道資料によると、決壊したのは県が管理する北印旛沼の堤防約100メートルと、北印旛沼に流れ込む農業排水路である角川の堤防の一部だ。関東地方整備局の発表では、北印旛沼の決壊箇所は成田市船形干拓地先、角川集水路の決壊箇所は成田市下方地先で、その後に氾濫した水の影響で北印旛沼と利根川を結ぶ長門川(印旛郡栄町酒直地先)の堤防も決壊した。
このうち最も規模の大きい成田市船形干拓地先の約100メートルについては、関東地方整備局が9月25日に緊急復旧工事に着手した。工法は仮設の締め切りを土砂で築く「荒締切工」と、鋼の板を二重に打ち込む「鋼矢板二重締切工」の組み合わせで、施工は鹿島建設が担う。国交省の第10報では、千葉県が管理する14河川で浸水が確認され、国が管理する河川では氾濫による被害情報はなかった。台風の接近段階では線状降水帯の半日前予測、関東甲信と東海の7都県に 台風25号接近で東京は24時間250ミリ、伊豆諸島は最大瞬間風速50メートル予想のように、雨の警戒情報が前倒しで出されていた。
「2杯分以上」を抜いていた印旛沼
印旛沼の水は、水資源機構が管理する2つの排水機場のポンプで沼の外へ送り出す仕組みになっている。国交省の資料によると、印旛排水機場は利根川へ毎秒92立方メートル、大和田排水機場は花見川へ毎秒120立方メートルを流す計画だ。今回決壊した北印旛沼の堤防は、成田市船形干拓という干拓地に面し、決壊したもう1か所の角川は千葉県が「北印旛沼に流入する農業排水路」と説明している。
同機構の緊急情報によると、台風第25号への備えとして9月17日19時40分から沼の水を前もって抜く「予備排水」を始め、9月22日22時時点で約4500万立方メートルを排水した。印旛沼の貯水量は約1970万立方メートルとされ、沼2杯分以上を抜いた計算になる。それでも堤防の決壊は防げなかった。同機構が9月22日に千葉県と連名で公表した資料では、印旛沼の過去の最高水位は今年8月の線状降水帯による大雨の4.33メートルが最も高く、総雨量は352ミリだった。2位は令和元年10月の低気圧などによる4.28メートル、3位は2013年10月の台風26号による4.17メートルで、この夏から沼の水位は繰り返し高い水準に達している。台風第25号は台風25号、21日に「強い」勢力で東日本へ 関東は最大瞬間50メートル・24時間300ミリ予想 伊豆諸島は電柱倒壊のおそれのとおり、9月21日に強い勢力で東日本に接近していた。
千葉県で死者8人、住家被害1530棟
消防庁が9月26日10時に公表した第16報によると、千葉県では死者8人、行方不明3人、負傷者30人が確認された。住家被害は全壊36棟、半壊49棟、床上浸水624棟、床下浸水769棟、一部破損52棟の計1530棟にのぼる。避難指示は同県の1市町村で464世帯996人に出ている。全国では死者13人、行方不明4人、住家被害は計1592棟となっており、被害の大半が千葉県に集中している。
作業期限の根拠となった台風第26号(スリゲ)は、気象庁の9月26日15時45分発表によると、同日15時に沖縄の南を北北西へ毎時15キロで進み、中心気圧は996ヘクトパスカルだった。27日15時には中心気圧975ヘクトパスカルの「強い」台風に発達して沖縄の南約170キロに達し、29日から10月1日にかけては中心気圧960〜970ヘクトパスカルの強い勢力を保ったまま「日本の南」を東北東から北東へ進む見通しだ。チーム印旛沼は9月25日17時に第1回の連絡調整会議を開き、この1週間で応急復旧と排水を終える工程で動いている。
