OECD(経済協力開発機構)は9月、世界経済の中間見通し「Weathering Successive Shocks(相次ぐ衝撃を乗り切る)」を公表した。世界の国内総生産(GDP)の伸び率は2025年の3.4%から2026年は2.9%へ下がり、2027年は3.0%へ持ち直すとした。中東の紛争でエネルギー価格が上がった一方、人工知能(AI)関連の投資と生産が各国の成長を支えたとして、全体としては「多くの国で底堅さを保った」と評価している。見通しは9月16日までに得られたデータに基づく。

日本は今年の成長率が上がり、来年の物価見通しも上がった

日本のGDPの伸び率は、2025年の1.2%から2026年は0.8%、2027年は0.7%と見込む。2026年は6月に公表した見通しの0.6%から0.8%へ引き上げられ、逆に2027年は6月時点の0.8%から0.7%へ下げられた。OECDは日本について、企業の好調な利益を背景にした設備投資と政府支出が需要を押し上げる一方、政策金利の引き上げとエネルギー輸入費の増加がそれを打ち消すと説明している。

物価の見方はより大きく動いた。消費者物価の上昇率(生鮮食品やエネルギーを含む総合)は2025年の3.2%から2026年は1.8%へ鈍るが、2027年は2.6%へ再び高まる見通しで、2027年の数値は6月時点の2.2%から2.6%へ引き上げられた。OECDはその理由に、人手不足で締まった労働市場と、高い伸びが続く賃金を挙げている。食料とエネルギーを除いた「コア」の上昇率も、2026年の1.5%から2027年は2.0%へ上がるとみる。日本銀行については、金融緩和を段階的に縮めていく過程で追加の利上げが行われることを前提に置いた。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)がFRB、3年2か月ぶり利上げ 政策金利を年3.75〜4.00%へ 12人全会一致、前回反対の3人が求めた水準にで3年ぶりに利上げへ転じたのに続き、主要国の金融政策が引き締め方向にそろいつつある状況を織り込んだ形だ。

見通しの前提は「中東の紛争が収まること」

今回の見通しは、エネルギー価格が先物市場の値動き(9月14日時点)どおりに推移することを技術的な前提としている。指標となる北海ブレント原油は2026年10〜12月期に1バレル=105ドル前後で頭打ちとなり、2027年は平均85ドルへ下がる想定だ。欧州の天然ガス指標であるTTFも、同じ時期の1メガワット時=82ユーロから2027年は60ユーロへ下がるとみている。

もっとも、足元の需給は緩んでいない。OECDは国際エネルギー機関(IEA)の推計として、8月時点で世界の石油在庫が2月より5億700万バレル(6%あまり)少ないことを挙げた。欧州の天然ガスの貯蔵量は総容量に占める割合が15年以上で同時期として最低の水準にあり、米国の戦略石油備蓄は1982年以来の低さになっている。湾岸の生産・輸出が滞る影響は産油国自身にも及び、サウジアラビアの成長率は6月見通しの3.2%からマイナス1.8%へ大幅に下方修正された。供給側の下振れはIEA、今年の世界石油供給を日量570万バレル減に下方修正 湾岸の回復は2027年へ先送り 米軽油は開戦前の1.94倍でも示されており、OECDはホルムズ海峡の輸出制約が続いたり、紅海のバブエルマンデブ海峡など代替ルートが新たに滞ったりすれば、エネルギー価格がさらに上がり、一部の資源が不足する恐れがあるとした。

AI関連の投資が下支え、長期金利は15年ぶりの高さ

紛争の打撃を和らげたのがAI関連の投資と生産だ。米国・カナダ・オーストラリアではデータセンターの建設や機器への投資が4〜6月期のGDPを押し上げ、半導体の主要生産国である日本と韓国は技術関連の輸出が大きく伸びた。韓国の2026年の成長率は6月見通しの2.6%から3.7%へ引き上げられている。

一方で懸念材料も並ぶ。長期金利は多くの国で15年以上ぶりの高さに達しており、OECDは財政への不安に加え、AI関連企業による大量の社債発行を理由に挙げた。AI関連企業の利益が市場の期待どおりに伸びなければ、資産価格の急な見直しにつながりかねないとも警告している。物価では、G20(20か国・地域)全体の消費者物価上昇率が2025年の3.4%から2026年は4.1%へ上がり、2027年に3.6%へ下がる見通しだ。

中間報告とは何か

OECDの経済見通しは、詳細な国別分析を含む本編を年2回出し、その間に主要国の数値だけを改定する中間報告を挟む。今回はエネルギー価格の想定が6月から大きく変わった局面での改定にあたり、原油については6月本編の「供給の途絶が一時的にとどまる」シナリオとほぼ同じ水準を置いた一方、天然ガスは6月に想定した「途絶が長引く」シナリオをさらに上回る、6割ほど高い価格の道筋を前提としている。エネルギーの多くを輸入に頼る日本にとって、この前提が外れれば物価と成長の両方が見通しから離れることになる。