日本銀行金融市場局は10月9日、金融機関どうしが短期の資金を貸し借りする市場の実態を調べた「東京短期金融市場サーベイ」の結果を公表した。17回目となる今回は7月末時点の状況を尋ね、日銀のオペレーション対象先など381先が回答した(回答率100%)。市場参加者が市場を使いやすいと感じているかを示す「機能度」は、市場全体で前年より改善した。一方、国債を担保にお金を貸し借りする有担保コール市場では、金利上昇で担保に使えない国債が増え、機能度が大きく下がった。
「短期金融市場サーベイ」とは
短期金融市場は、銀行や証券会社、信託銀行などが短期の資金をやり取りする場だ。担保なしで貸し借りする「無担保コール」、国債などを担保にする「有担保コール」、国債を売買の形で一時的にやり取りする「レポ取引」などがあり、借りた翌日に返す「翌日物(O/N物)」と、それより期間の長い「ターム物」に分かれる。
日銀金融市場局は2008年からこの調査を行っている。当初は隔年だったが、2013年から毎年実施している。対象は日銀のオペレーション対象先と主要な市場参加者で、今回は前回(2025年8月)の383先から381先になった。このうちオペレーション対象先は354先。主要な生命保険会社や損害保険会社、大手投資信託委託会社も協力している。
「使いやすさ」は国債レポで改善、有担保コールで悪化
機能度は、意図した金額やレートで取引できるかなどを踏まえ、市場参加者が「高い」か「低い」かを答えたものだ。日銀は「高い」と答えた割合から「低い」と答えた割合を引いた値を示している。
市場全体では、この値が2025年の19から2026年は24に上がった。市場別にみると、国債レポは24から29に、無担保コールは15から18に上がった。国債レポについて日銀は、国債の買い入れ減額が進み、国債を貸し出す補完供給の減額措置も実施されたことで、レポ市場の国債の需給が緩んだと説明している。参加者からは意図した規模・レートで取引できているとの指摘があったという。
これに対し、有担保コールは17から7に下がった。理由として日銀が挙げたのは金利の上昇だ。有担保コールの担保制度では、担保に差し出す国債や国庫短期証券の時価に一定の掛け率(掛目)を掛けた金額が額面に届かない銘柄は、担保として不適格になる。金利が上がると国債の価格は下がるため、こうした「担保割れ」の銘柄が増え、取引しにくくなったとの指摘が聞かれた。日銀の担保評価については、日銀が自らの担保の掛目を見直した「日銀、担保の掛目を見直し 住宅ローン債権は59%から51%に 長期の国債や企業向け貸付債権も引き下げ」も参照。
日銀からの借り入れは減り、市場での運用は増えた
取引残高(7月末時点)では、市場で資金を調達した側の残高が前年より減り、運用した側の残高は増えた。
調達側で減ったのは日銀からの借り入れだ。日銀の「貸出増加支援資金供給」の残高が減ったことで、日銀との取引は97兆円から72兆円に縮んだ。残高の大部分を占めるレポ取引は270兆円から263兆円で、日銀は「横ばい」と評価している。
運用側では、レポ取引が228兆円から226兆円で横ばいだった一方、コール取引は34兆円から39兆円に、国庫短期証券による運用は40兆円から43兆円に増えた。国庫短期証券については、利回りが上がるなか、ほかの商品から流動性の高い国庫短期証券へ運用を移した先があったという。企業向けのCPでの運用も、原油価格の上昇に伴う企業の資金需要でCPの発行残高が増え、幾分増えた。
無担保コール翌日物の金利も調べている。6月17日から7月16日の約定レート(加重平均)は、短資会社を通した取引(TONA)が0.977%、短資会社を介さない直接取引も含めた全体が0.983%だった。日銀が当座預金の一部に付ける金利(付利金利)は同じ期間に1.0%で、それを幾分下回る水準で推移した。
当座預金の減少に備え、期間の長い調達に関心
今回の調査では、手元資金の管理(流動性管理)を目的にした市場での調達も尋ねた。日銀は、国債買い入れの減額や貸出増加支援資金供給の残高減少で、日銀当座預金の残高は先行きも減り続けると見込んでいる。
2年以内に流動性管理のために使う見込みのある調達手段として最も多く挙がったのは、無担保コールのターム物だった。貸出増加支援資金供給の残高が減るなか、長く安定した調達手段として新たに取り組みを検討しているとの声が多かったという。
ターム物の残高は無担保コール全体の3割程度を占め、足もとで増えている。特に期間1か月超の取引が大きめに増えた。証券会社からは「株高を受けて、株式取引に係る在庫ポジションが拡大するもと、流動性指標を維持するため、高めのレートであってもターム物による調達を増やしている」との指摘があった。地方銀行からは、資金残高が社内目標を下回りそうな場合はターム物などで調達する方針だとの声が聞かれた。
無担保コール市場全体の残高は、2024年3月のマイナス金利解除後にいったん減ったが、その後は増え、マイナス金利下の2023年並みの水準に戻りつつある。日銀は今回の結果を、債券市場サーベイなどとあわせて市場の構造変化の把握に生かすとしている。
