内閣府政府広報室は10月9日、「国土強靱化に関する世論調査」の速報を公表した。「国土強靱化」という言葉を聞いたことがあるかを尋ねたところ、「聞いたことがない」が62.2%で、「聞いたことがある」の36.8%を上回った。一方、国土強靱化を「自然災害から命と暮らしを守り、いざというときに早急な回復を可能とする取組」だと説明したうえで重要かを聞くと、「重要だと思う」と「どちらかといえば重要だと思う」を合わせて98.0%に上った。

調査は全国の18歳以上の日本国籍を持つ3,000人を対象に、8月20日から9月27日まで郵送で行った。回収数は1,474人、回収率は49.1%。速報値は9月16日までに届いた調査票で集計しており、性別や年代といった属性別の結果は確報で公表する。回収数を含む数値は確報で修正される可能性があるとしている。調査の関係府省庁は内閣官房の国土強靱化推進室。

言葉の認知は4割に届かず 知ったきっかけはテレビが78.3%

言葉を「聞いたことがある」と答えた543人に、どこで聞いたかを複数回答で尋ねると、「テレビ」が78.3%で最も多く、「新聞・雑誌」53.6%、「インターネット」36.3%が続いた。「ラジオ」は9.9%、旧Twitterの「X」やFacebookなどの「SNS」は7.9%だった。「ポスター」は2.2%、「チラシ」は1.3%にとどまった。

国土強靱化は、2013年12月に公布された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」に基づく国の政策だ。政府は2014年6月に最初の国土強靱化基本計画を閣議決定し、2018年12月と2023年7月に改めて閣議決定した。法律そのものも2023年6月に改正されている。10年以上続く政策でありながら、その名前を知っている人は今回の調査で4割に届かなかった。

ただ、取組の中身を説明した後の質問では、肯定的な答えがそろって9割を超えた。今後、災害への事前の備えとして自分や家族、地域でできる「国土強靱化」に取り組みたいかを聞くと、「積極的に取り組みたい」が25.2%、「前向きに取り組むことを検討したい」が68.7%で、合わせて93.9%だった。「あまり取り組みたいと思わない」は4.6%、「取り組みたいと思わない」は0.5%だった。

政府が国土強靱化に積極的に取り組む必要があるかについては、「必要」72.3%、「どちらかといえば必要」26.1%で、合わせて98.4%。「必要ない」側は合わせて1.4%だった。

居住地の災害リスク「知っている」74.3%

自分の住む地域で地震などの自然災害が起きるリスクや、想定されている被害の大きさを知っているかも尋ねた。「よく知っている」は12.8%、「ある程度知っている」は61.5%で、合わせて74.3%。「あまり知らない」は23.4%、「ほとんど知らない」は2.2%だった。

「知っている」と答えた人の多くは「ある程度」にとどまり、「よく知っている」は1割強だった。言葉の認知と同じく、関心はあっても具体的な中身まで把握している人は限られているという構図が、この設問からも読み取れる。

役に立つと思う取組を複数回答で選んでもらった設問では、家庭での備えも上位に入った。「災害に対する事前の備えとして、個人が、備蓄食料や防災セットを用意する」は63.2%で、15の選択肢のうち3番目に多かった。「住宅・建築物の耐震化を進める」は52.4%だった。家庭でできる地震火災対策については地震火災の過半数は電気が原因 揺れを感知して電気を止める「感震ブレーカー」、首都圏の設置は約2割にとどまるでも取り上げている。

期待は「人命」と「老朽化対策」 政府は5年で20兆円強

国土強靱化のために効果的だと思う取組で最も多かったのは、「災害が起こった際に、人命を最大限に守ることを目指す」の85.7%だった。2番目は「道路や上下水道などインフラの老朽化対策を進める」で75.4%。災害が起きた後の「経済社会の速やかな復興」は62.7%、「インフラや建物に与える被害を最小化すること」は60.5%だった。一方、「津波や洪水に備えた大規模な堤防工事、護岸工事を実施する」は37.9%、「国が、防災施設を建設する」は40.4%で、大型の公共工事を挙げた人は相対的に少なかった。

国土強靱化基本計画が掲げる「5つの柱」のうち重要だと思うもの(複数回答)では、「国民の生命と財産を守る河川・ダム、砂防・治山、海岸などの防災インフラの整備・管理」が80.7%、「経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化」が72.0%だった。「地域における防災力の一層の強化及び地域力の発揮」は52.6%、「災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化」は46.7%、「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」は29.0%だった。地域防災力の担い手の現状は消防団員は71万8697人、1年で1万3526人減 女性・学生・機能別は増加 報酬が基準に届く市区町村は95.1%で伝えている。

政府はこの5本柱に沿って予算を配分している。2020年12月に策定した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では、2021年度から2025年度までの5年間で123の対策を実施した。事業規模はおおむね15兆円程度を目途とし、2024年度補正予算までに約15.6兆円(うち国費約8.0兆円)を確保した。

これに続くのが、2025年6月6日に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」だ。計画期間は2026年度から2030年度までの5年間で、「推進が特に必要となる施策」の事業規模を今後5年間でおおむね20兆円強程度と定めた。柱別では、ライフラインの強靱化がおおむね10.6兆円と最も大きく、防災インフラの整備・管理がおおむね5.8兆円、官民連携強化と地域防災力の強化がそれぞれおおむね1.8兆円、デジタル等新技術の活用がおおむね0.3兆円となっている。計画の概要は、考慮すべき点の一つとして「埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえたインフラ老朽化」を挙げている。

内閣官房は10月2日、この中期計画の進み具合を地図などで示す「国土強靱化の取組に関するダッシュボード」をウェブサイトに掲載した。個々の施設の整備状況や地域ごとの取組状況には差があるため、国民に分かりやすく伝えることが目的だとしている。国民の多くが取組の必要性を認める一方で、政策の名前は6割超に知られていないことが、今回の調査で数字として示された。