日本銀行は10月9日、金融機関が日銀からお金を借りる際などに差し入れる担保について、評価の掛け率(掛目)を見直すと発表した。2026年11月27日から実施する。年1回の定例の検証に基づくもので、住宅ローン債権を束ねた信託受益権の掛目は59%から51%に、残存期間が20年超30年以内の国債は95%から94%に下がる。残りの期間が長い担保ほど引き下げ幅が大きい。
担保の「掛目」とは何か
日銀は金融調節の一環として、金融機関にお金を貸したり、国債を売買したりしている。日銀が供給するお金の量の推移は、マネタリーベース、9月は532兆8464億円で前年同月より15.2%減 2024年4月のピークから157兆円縮み2020年5月以来の低い水準 国債の買い入れは10〜12月に月2兆3000億円で伝えた。貸し付けの際には、金融機関から国債や社債、企業向けの貸付債権などを担保として受け入れる。日銀が担保として認めるものを「適格担保」と呼ぶ。
担保の価値は額面どおりには評価しない。日銀の「適格担保取扱基本要領」は、担保の価格を、時価や残存元本額などに「掛目」を掛けた値と定めている。掛目が95%の国債なら、時価100億円分を差し入れても担保としては95億円分にしかならない。担保を処分してお金に換えるまでの値下がりに備える仕組みだ。
掛目の決め方も同じ要領に書かれている。時価が分かる担保は、担保権を行使するまでの期間に過去の時価がどれだけ動いたかをもとに算定する。時価が分からない貸付債権などは、理論価格の動きをもとにする。そのうえで、担保の種類と掛目を「原則として年1回の頻度」で検証し、必要な見直しをすると定めている。
今回の発表文は、見直しの理由を「金融市場の情勢等を踏まえて行った定例の検証の結果」とし、「本行資産の健全性および市場参加者の担保利用の効率性を確保する観点」から行うと説明している。
国債・社債は期間20年超の区分だけ下がる
債券のうち、国債の掛目は残存期間が1年以内と1年超5年以内が99%、5年超10年以内が98%、10年超20年以内が97%で、いずれも変わらない。引き下げは20年超の部分に限られ、20年超30年以内は95%から94%に、30年超は94%から93%になる。
ほかの債券も同じく20年超の区分だけが動く。政府保証付債券と地方債は20年超30年以内が94%から93%に、30年超が93%から92%に下がる。社債、財投機関等債券、資産担保債券、不動産投資法人債、外国政府債券、国際金融機関債券は、20年超30年以内が93%から92%に、30年超が92%から91%になる。国債から元本部分を切り離した分離元本振替国債などは、94%から93%、92%から91%に下がる。
日銀が国債を一時的に買い入れたり売却したりする「条件付売買」の価格比率も一部変える。この取引では、時価をこの比率で割った額を売買価格とする(「国債の条件付売買基本要領」)。今回は残存期間10年超20年以内の利付国債と国庫短期証券について、買い入れの比率を1.016から1.017に、売却の比率を0.985から0.984に改める。日銀が買い入れるときに払う額が時価に比べて少し小さくなる。
貸付債権は期間が長いほど大きく下がる
下げ幅が大きいのは、市場で売買されない貸付債権だ。企業を債務者とする電子記録債権と企業向けの証書貸付債権は、残り1年以内の96%は据え置く一方、1年超3年以内を90%から88%に、3年超5年以内を82%から77%に、5年超7年以内を76%から69%に、7年超10年以内を66%から57%に引き下げる。
政府や政府保証付きの貸付債権は、7年超10年以内が76%から66%に、地方公共団体向けは74%から64%になる。
企業や地方公共団体の債務を幅広く担保に取るための「特則」の対象も見直す。特則は、日銀によると「金融調節を円滑に遂行する観点から、当分の間」設けているもので、金融機関自身の自己査定で業況が良好とされた先の債権なども担保に認めている。こうした自己査定型の電子記録債権・証書貸付債権は、7年超10年以内が35%から29%に、5年超7年以内が48%から42%に下がる。
米ドル建ての企業向け証書貸付債権も全区分で下がり、1年以内は86%から85%に、7年超10年以内は39%から38%になる。
最も大きく動いたのは、住宅ローン債権を信託財産とする信託受益権だ。担保の価格は、住宅ローン債権の残存元本などの合計額に掛目を掛けて出す。この掛目が59%から51%になる。同じ100億円分の住宅ローン債権なら、担保としての評価は59億円から51億円に減る。
前年の見直しとの比較
日銀は前年も同じ時期に掛目を見直している。2025年10月10日に公表し、同年11月27日に実施した改正では、国債など債券の担保の掛目は変えなかった。動いたのは貸付債権などで、企業を債務者とする電子記録債権の7年超10年以内は68%から66%、住宅ローン債権の信託受益権は60%から59%に下がった。米ドル建ての企業向け証書貸付債権はこのとき、85%から86%など逆に引き上げられていた。
今回は国債を含む債券の長期区分にも引き下げが及び、貸付債権の下げ幅も前年より大きい。住宅ローン債権の信託受益権は、前年が60%から59%だったのに対し、今回は59%から51%に下がる。
掛目が下がれば、金融機関は同じ額を日銀から借りるのにより多くの担保を差し入れる必要がある。新しい掛目は11月27日から適用される。
