総務省は9月16日、情報通信審議会の上空利用検討作業班(第16回)の配布資料を公開した。農薬をまくドローンに、専用の契約なしで普通の携帯電話のSIMカードを載せて飛ばせるようにする規制緩和について、技術的な検討結果のまとめ案を示したもので、作業班は17日午後に開かれる。案は、緩和の前提となる「高さと周波数を守らせる仕組み」がまだないとして、「今後の技術革新や運用形態の変化等の機会を捉えて、改めて検討を行うこととしたい」と結んでいる。年明けから半年以上続いた検討は、当面の見送りという形で一区切りとなる。

飛ばすだけで月4万9800円

携帯電話の電波は本来、地上で使うことを前提に設計されている。空に上がった端末は、周りの基地局から遮るものなく見通せてしまうため、電波が遠くまで届き、他の利用者の通信をじゃまする。このため携帯回線をドローンに積むには、送信電力を強く抑える「上空用の送信電力制御」を適用することが条件とされ、利用者は大手3社が用意する「上空利用プラン」を契約する必要がある。

千葉市が今年1月の資料でまとめた料金は、ソフトバンクが月4万9800円(120ギガバイト)、NTTドコモが同じく月4万9800円(120ギガバイト)または従量制で月1万2500円から、KDDIが月4万9800円、年48万円、あるいは年15万円と従量料金の組み合わせとなっている(いずれも税込み、2025年12月時点)。プランを出しているのは大手3社だけで、飛ばす場所と時間はあらかじめ通信会社と調整しなければならない。送信電力を絞っている分だけ通信も遅く、映像を送るのが難しいという難点もある。

千葉市が特区で求めた「地面と同じ扱い」

この負担を下げるよう求めたのが千葉市だった。同市は農薬散布ドローンの遠隔自動運航の実証実験を行い、操縦者が現地にいなくても散布できることを確かめたうえで、国家戦略特区の規制改革提案として、地表すれすれを飛ぶ散布ドローンには地上の携帯電話と同じ送信電力制御を認めてほしい、つまり普通のSIMで飛ばせるようにしてほしいと要望した。散布作業の担い手不足が進むなか、通信費が上がれば1ヘクタールあたり1万円から2万円という散布料金に跳ね返り、普及の妨げになるという主張である。

要望は1月20日の第67回国家戦略特別区域諮問会議で取り上げられ、これを受けて総務省は2月から技術的な検討に入っていた。

干渉は2デシベル増、だが守らせる方法がない

検討は、ドローンの高さを5メートルないし10メートル以下に限り、地上の携帯電話と同じ送信電力制御を当てはめた場合に、これまでの共用条件が崩れないかを調べる形で進んだ。計算はドコモ・テクノロジが担当した。

その結果、空を飛ぶ端末が全体の2割を占め、高さを5メートルとした場合、地上の携帯電話基地局と、隣り合う周波数で動く既存の無線設備が受ける電波干渉は、地上の端末だけの場合と比べておよそ2デシベル増える見込みとなった。2デシベルはおよそ1.6倍にあたる。高さを10メートルにすると、既存の無線設備への干渉は最大で6デシベル程度、約4倍まで増えた。干渉を受ける側として挙がったのは、800メガヘルツ帯のラジオマイクやMCA無線、気象衛星の受信設備などである。

問題は、仮に既存の無線の側がこの増加を受け入れられるとしても、利用者が本当に5メートル以下でしか飛ばさないこと、そして上空利用が認められていない700メガヘルツ帯と1.5ギガヘルツ帯で電波を出さないことを、技術的に担保する手立てが今のところないという点だった。守られなければ電波法違反になりかねない。資料はこの2点を「課題として残る」と明記している。

残ったのは制度ではなく仕組みの宿題

つまり今回の検討は、「干渉が大きすぎるからだめだ」という結論ではない。数字の上では、低く飛ぶ限り影響は抑えられることが確かめられた。足りないのは、ドローンが約束どおりの高さと周波数で飛んでいることを機械の側で証明する仕組みのほうである。ドローン側の機能や、通信会社が飛行の予定を把握する運用が整えば、話は前に進む余地が残る。総務省が「改めて検討を行う」と書いたのは、その含みだろう。