環境省は15日、ペットショップや動物の展示施設などの動物取扱業者が守らなければならない飼養管理の基準を定めた省令を改正し、公布した。これまで具体的な数値や義務を定めていたのは犬と猫だけだったが、改正でうさぎやハムスター、モルモット、フェレットなど犬猫以外の哺乳類にも広げる。ケージの広さを動物の体の長さから計算して下限を決めるほか、展示は原則として1日12時間まで、夜間の触れ合いや販売は原則禁止とする。施行は2027年6月1日。
何が変わるのか
改正したのは「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」で、業界や自治体では「飼養管理基準」と呼ばれている。動物愛護管理法21条に基づく環境省令で、動物を販売、保管、貸し出し、訓練、展示する事業者などに守ることを義務付けている。
動物取扱業者の飼養管理基準は、2019年6月に公布された改正動物愛護管理法に根拠がある。改正法は、基準として定める事項に飼養設備や従業員の数、繁殖の方法など7つの項目を明記し、犬猫を販売する業者の基準は「できる限り具体的なもの」でなければならないと定めた。
これを受けた省令は21年4月に公布され、同年6月に施行された。ただ、具体的な基準が定められたのは犬と猫だけだった。運用指針によると、犬猫以外の哺乳類や鳥類、爬虫類については「定性的な記載に留まっている」状態で、省令の制定時にまとめられた中央環境審議会の答申(21年1月)でも、これらの動物の基準は「今後検討を進めるものとする」とされていた。
環境省は22年から犬猫以外の哺乳類の基準づくりに着手し、有識者による「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」や中央環境審議会動物愛護部会での審議を経て、今回の改正にこぎつけた。鳥類と爬虫類の基準は今回の改正には含まれていない。
基準の対象は、ペットショップで売られる小動物だけではない。環境省が併せて策定した解説資料(運用指針)は、動物ごとの解説書を作る対象として、うさぎ、ハムスター、モルモット、シマリス、チンチラ、デグー、フクロモモンガ、ヨツユビハリネズミ、フェレットのほか、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシなどを挙げている。
ケージの広さは「体の長さ」で決める
改正の柱は、ケージの広さに数値の下限を設けたことだ。基準は鼻先から尾の付け根までの長さ(頭胴長)を物差しにする。
うさぎは1頭当たり、縦が頭胴長の2倍以上、横が1.5倍以上、高さが1.7倍以上とする。頭胴長40センチのうさぎであれば、縦80センチ、横60センチ、高さ68センチが最低限の大きさになる計算だ。ハムスターは1頭のみ飼う場合、床面積を頭胴長の2乗の7.5倍以上、高さを頭胴長の2倍以上とし、2頭目以降は1頭ごとに2乗の2.5倍以上を追加する。モルモットは床面積が頭胴長の2乗の6倍以上、高さが1.5倍以上で、2頭目以降は1頭ごとに2.25倍以上を加える。複数を同じケージで飼う場合は、最も体の大きい個体の頭胴長を基準にする。
| 動物 | 床面積の下限(1頭) | 高さの下限 | 2頭目以降の追加 |
|---|---|---|---|
| うさぎ | 縦は頭胴長の2倍、横は1.5倍 | 頭胴長の1.7倍 | ― |
| ハムスター | 頭胴長の2乗の7.5倍 | 頭胴長の2倍 | 1頭ごとに2乗の2.5倍 |
| モルモット | 頭胴長の2乗の6倍 | 頭胴長の1.5倍 | 1頭ごとに2乗の2.25倍 |
数値の下限を定めなかったその他の哺乳類も、自然な姿勢で立ち上がったり横たわったりする日常の動作が無理なくできる広さが必要とした。飼う期間が長くなる場合は、走る、登る、泳ぐといった運動ができる広さを確保するか、決まった頻度と時間で運動させることを求める。
運用指針は、下限とは別に「推奨事項」として、より広いケージの目安も示した。うさぎの場合、長く飼う場合の床面積は最低限の4倍以上が望ましいとし、頭胴長40センチの1頭なら1万9200平方センチ以上という例を載せている。チンチラ、ヨツユビハリネズミ、フェレットについても、頭胴長の2乗に掛ける倍率で推奨の面積を示した。
展示は1日12時間まで、夜間の触れ合いは禁止
飼育環境では、寒さや暑さで健康に支障が出るおそれのある状態に置くことを禁じ、飼養施設に温度計と湿度計を置くことを義務付けた。温度に一律の上限や下限は設けていない。運用指針は理由として、数値を決めると「ぎりぎり満たすが動物の飼養又は保管の状態としては適切でない状態」を招きかねないことや、季節や地域、動物の種類による差が大きいことを挙げる。そのうえで、犬猫以外の哺乳類に適した温度は20〜28度(チンチラやヒツジ、ヤギ、ウシなどは25度まで)を基本とする考え方を示した。自然光や照明で昼夜の変化に応じた明るさを保つことも義務になる。
展示の時間は原則として午前8時から午後10時までの間とし、1日12時間を超えてはならない。長時間続けて展示する場合は、動物が休める場所へ自由に移れるようにするか、それができなければ6時間おきに展示しない休憩を設ける。販売などのために輸送した後は、2日間以上、目で見て状態を確かめることも求める。
客と動物の触れ合いにも規制がかかる。販売、貸し出し、展示の事業者は、特別な事情がない限り、夜間に客と動物を触れ合わせたり、動物を引き渡したりできなくなる。さらに、動物が客との接触を避けられる場所を常に確保すること、触れ方を客に事前に確認すること、触れる前後に手指を消毒させること、客の数や場所の広さに見合う職員を置くことは、犬猫にも新たに義務付ける。幼すぎる動物や、人にもうつる感染症にかかった動物を触れ合いに使うことも認めない。
このほか、獣医師の診療が必要な場合に受けさせること、繁殖に適さない個体を交配させないこと、毛が糞尿で固まったり爪や歯が伸びたまま放置されたりした状態を禁じることなども盛り込んだ。訓練や芸を教える際に殴る、蹴るといった行為も禁止し、規制の対象に動物を貸し出す事業者も加えた。
既存店には1年の猶予、守らなければ登録取り消しも
施行は27年6月1日だが、ケージの広さに関する基準には経過措置を設けた。概要資料は、ケージの更新などに準備期間が必要なためと説明している。新たに事業を始める業者は27年6月1日から、既にある業者は28年6月1日から適用される。
動物取扱業を指導・監督するのは都道府県などの自治体で、事業者の個別の判断は環境省ではなく自治体が行う。運用指針は自治体の職員が立ち入り検査で使うことを想定したチェックリストを付け、基準を満たさない事業者には登録の取り消しを含めた「制度の厳格な運用」を行うとしている。指針は、勧告はあくまで行政指導で、従わないことを理由にすぐに登録取り消しや罰則には結びつかないと注意を促したうえで、改善の意思がない悪質な事業者には、勧告、措置命令、業務の停止、登録の取り消し、刑事告発を効果的に使い、厳格に対応するよう求めている。
指針はまた、今回の改正が野生動物の飼育や販売、触れ合いへの利用を「推奨するものではない」と明記した。家畜化されていない野生動物は特別な飼育環境が必要で、人に危害を加えるおそれのある種もあり、逃げ出せば生態系に影響が出かねないとして、飼う側に重い責任を自覚するよう求めている。
施行までの約7か月半の間に、事業者はケージの入れ替えや展示時間の見直しといった準備を、自治体は立ち入り検査の体制づくりを進めることになる。環境省は運用指針とは別に、動物の種類ごとに整理した解説書も作るとしている。
