厚生労働省は10月9日、有料老人ホームに新しく導入する「登録制」の施行日を2027年12月とする方針を、有識者検討会に示した。すでにあるホームが登録へ移るための経過措置期間は1年で、2028年12月に終わる。この日の第10回検討会で制度の対応方針を取りまとめ、厚労省は年内に政省令を公布する。

条例づくりとシステム構築に2年をかける

登録制は、2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」で老人福祉法に設けられたしくみだ。施行日は公布から2年を超えない範囲で政令で定めるとされており、いつになるかはこれまで示されていなかった。厚労省は資料で、事業者と自治体の準備期間や事務負担、システム整備にかかる期間を考えて2027年12月とする予定だと明記した。

そこまでの段取りも示された。政省令は2026年12月に公布し、通知などは2027年度に出して周知する。都道府県などは同じ2027年度に条例を定め、厚労省は自治体向けの説明会を開く。新しい登録システムは2026年度から構築を始め、施行と同じ2027年12月に動かす。既存ホームの移行の受け付けは施行から1年で締め切り、2028年12月以降は新規と更新の登録事務に移る。あわせて創設される「登録施設介護(予防)支援」の施行は、公布から3年以内に政令で定める日とされ、登録制より後になる。

登録の中身は9月18日の第9回検討会で示されたものを踏襲する。有料老人ホームに登録制、厚労省が基準案 系列の介護事業所の利用を入居条件にするのは禁止 居室は原則個室で1人13平方メートル以上のとおり、系列の介護サービス事業所や医療機関の利用を入居の条件にすることを禁じ、居室は原則個室で入居者1人当たり13平方メートル以上、夜間・緊急時は職員が駆けつけられる体制を求める。夜間・緊急時の体制や、運営面で新たに義務となるものには、施行後も一定の経過措置期間を置く。

申請には約款と決算書も添える

登録の申請書には、施設の名称、入居対象者、ホームが提供する介護などの内容、ほかの介護サービス事業者と提携する場合はその情報、入居者紹介事業者を使う場合の手数料の設定の考え方を書かせる。添付書類は、登録を拒否される事由に当たらないことを示す誓約書、入居契約の約款、重要事項説明書、入居契約とケアマネジメント契約の独立性およびケアマネジャーの独立性を担保していることを示す書類、決算書・財務諸表などだ。届出だけで足りていた現行制度と比べると、契約書類と財務の中身を行政に出すことになる。

ただし、介護保険の特定施設の指定を受けているホームと、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として登録済みのホームは、すでに行政が基準の充足を確認しているとして簡素な手続きにする。特定施設は事業所番号と最低限の情報に加え、特定施設の指定申請では求めていない紹介手数料の考え方・誓約書・約款などを出せばよい。サ高住は登録番号と最低限の情報に加え、入居対象者や重要事項説明書、ケアマネジャーの独立性に関する書類、決算書などを出す。

新しい登録システムは、申請と届出、自治体の審査、情報公表までをその中で完結させる。都道府県が毎年の定期報告をもとに公表している有料老人ホームの情報も、同じしくみに乗せる。公表側は、現行の介護サービス情報公表システムを改修して条件検索や見やすさを高める。登録の対象から外れる届出ホームについても、登録基準とおおむね同じ内容の遵守事項を定める。現行の届出制では、有料老人ホーム、前払金の保全措置がない施設が25か所 13か所に指導したが改善はゼロ 未届の施設は568か所で全体の3.1%という状態が続いており、情報が行政と利用者に届くかどうかが制度の実効性を左右する。

入居者紹介業者の手数料に認定制度

ホームと入居希望者をつなぐ入居者紹介事業者については、優良事業者認定制度をつくる。現行の紹介事業者届出公表制度を前提に、紹介手数料の設定などを透明で中立・公正なしくみにするため、有料老人ホーム事業者、入居者紹介事業者、有識者ら公益代表の三者で協議する場を設けて制度設計を進め、2027年度から運用を始める。2026年度は研究事業を行う。

紹介事業者の存在は、入居のルートを見ると小さくない。厚労省が示した2025年度の調査では、新規入居者の紹介ルートはどの類型でも「医療機関・MSW等の紹介」が最も多く、特定施設では「紹介業者による紹介」が約3割を占める。一方で「ケアマネジャーの紹介」は5%以下にとどまる。住宅型とサ高住(特定施設でないもの)では、紹介業者による紹介が15%ほどだ。検討会では、利用者が検索したホームの電話番号が紹介事業者のものにつながり、ホーム側に紹介手数料が請求される例が報告された。登録基準の側でも、入居希望者の介護度や医療の必要度といった個人の状況に応じて手数料を決めるような設定を禁じる。

自室で自炊するだけなら「食事の提供」ではない

老人福祉法第29条は、高齢者を入居させて①食事の提供②入浴・排せつ・食事の介護③洗濯・掃除などの家事④健康管理のどれか一つでも提供していれば、名称にかかわらず有料老人ホームに当たると定める。このうち「食事の提供」の線引きが自治体によって揺れており、検討会でも解釈を示してほしいという要望が出ていた。厚労省は今回、自立した入居者が各個室のキッチンで自ら食事を作り、必要に応じて自分の意思で選んで併設の食堂を使っている場合などは、「食事の提供」を行っているとは判断しないとした。

登録制の対象となるホームの範囲も確定させた。中重度の要介護者を入居対象とするホームに加え、「要介護者であって、認知症の日常生活自立度がⅢ以上である者」を入居対象とするホームと、「要介護者であって、一定の医療ニーズを有する者」を入居対象とするホームを対象にする。医療ニーズの範囲は、保護の必要性が高い入居者がどこまでかを解釈通知で具体的に定める。第9回では「要介護者であって」という限定を外すべきだという意見も出た。要介護認定を受けていない人を集めれば登録から外れる抜け道になりうるという指摘だ。

厚労省の集計では、有料老人ホームは2024年6月30日時点で2万5198棟・定員95万1236人。うち住宅型が1万2668棟・39万2346人、介護付きが4559棟・28万801人で、ほかにサ高住が8301棟・28万7687戸ある。サ高住の約96%は有料老人ホームにも当たる。住宅型では要介護3以上の入居者の割合が2015年の48.9%から2025年は56.0%に上がっており、住まいとして届出だけで開ける施設に重い人が集まる構図が強まっている。認知症の日常生活自立度がⅢ以上の人の割合も、要介護1では2.7%、要介護2では17.2%だが、要介護3では44.1%、要介護4では47.9%、要介護5では65.1%と、要介護3を境に跳ね上がる。