生物多様性条約の第17回締約国会議(COP17)が10月19日、アルメニアの首都エレバンで開幕した。会期は30日まで。2022年に採択された生物多様性の世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」について、各国の取り組みがどこまで進んだかを世界全体で確かめる初めての進捗評価(グローバルレビュー)が行われる。遺伝子組み換え生物の扱いを定めたカルタヘナ議定書の第12回締約国会合(CP-MOP12)と、遺伝資源の利益配分を定めた名古屋議定書の第6回締約国会合(NP-MOP6)も同時に開かれる。環境省は16日の発表で、日本政府代表団がハイレベル会合や各種交渉会合、サイドイベントに参加し、「積極的に議論に貢献します」としている。
2年に1度の締約国会議 今回は旧ソ連圏のアルメニアで
締約国会議(COP)は条約に加わる国・地域が集まる最高意思決定の場で、条約事務局の議事解説(注釈付き議題)によると、通常会合は2年ごとに開かれる。前回のCOP16は2024年にコロンビアのカリで開かれ、その場でCOP17の開催地が決まった。決定16/27は、アルメニアとアゼルバイジャンの両政府から開催の申し出があったことに謝意を示したうえで、COP17を「2026年の最終四半期にアルメニアのエレバンで開く」と定めている。
議事解説によれば、開会は19日午前10時で、カルタヘナ・名古屋両議定書の会合と合同で行う。前日の18日には、ハイレベルの開会式典が予定されていた。開会はCOP16の議長を務めたコロンビアのイレーネ・ベレス・トーレス氏(またはその代理)が宣言し、条約事務局のアストリッド・シューマッハー事務局長があいさつする。
議長国の選び方には決まりがある。過去の決定XIII/33で、COP17からは国連の5つの地域グループが順番に議長を出すこととされ、その順番は東欧、中南米・カリブ、アフリカ、アジア太平洋、西欧その他の順と定められた。COP17はこの輪番の最初の会合で、議長は東欧グループから選ばれる。
「昆明・モントリオール枠組」とは 2030年までの23の目標
今回の点検の対象となる昆明・モントリオール生物多様性枠組は、2022年12月のCOP15で採択された。2050年までに「自然と共生する世界」を実現することを長期の目標に掲げ、その途中の2030年までに達成すべき行動目標を23項目並べている。条約事務局の説明では、各目標の行動は「直ちに始め、2030年までに完了させる」必要がある。
目標の中には、数値で期限を区切ったものが多い。代表的なものを次にまとめた。
| 目標 | 内容 | 2030年までの数値 |
|---|---|---|
| 目標2 | 劣化した生態系の回復 | 少なくとも30%を効果的な回復の下に置く |
| 目標3 | 陸と海の保全(いわゆる30by30) | 陸域・内陸水域と、海域・沿岸域のそれぞれ少なくとも30%を保全 |
| 目標6 | 侵略的外来種の影響の抑制 | 導入・定着の速度を少なくとも50%減らす |
| 目標7 | 汚染の削減 | 環境中に失われる過剰な栄養分と、農薬・高危険性化学物質の全体的なリスクを少なくとも半減 |
| 目標18 | 生物多様性に有害な補助金などの見直し | 年5000億ドル以上を段階的に削減 |
| 目標19 | 資金の動員 | あらゆる資金源から年2000億ドル以上を動員。先進国から途上国への国際資金は2025年までに年200億ドル以上、2030年までに年300億ドル以上 |
目標6に関わる国内の外来種対策の動きは、外来種リスト11年ぶり改訂、596種類に キンギョ・ヒメダカも新たに掲載 飼育は禁止されずで伝えている。
初のグローバルレビュー 各国の国別報告書が土台に
COP17の暫定議題は、9番目の議題「計画、モニタリング、報告、レビュー」の中に、「昆明・モントリオール枠組の実施における集団的な進捗の世界的レビュー」と、枠組の進み具合を測る「モニタリング枠組」を並べている。
条約事務局の議事解説によると、グローバルレビューは枠組の「責任と透明性」の柱の一つとして位置づけられ、COP17と2回後のCOP19の2度にわたって行うことが決まっている。具体的な進め方はCOP16の決定16/32で合意され、主に各国が提出する国別報告書と、事務局がまとめる「集団的な進捗に関する世界報告書」に基づいて行う。レビューは締約国主導で進め、最終的にCOPの決定として、進捗の遅れや課題、特に途上国が実施に必要とする資金などの手段について勧告をまとめることになっている。
日本は今年2月20日、第7回国別報告書を英訳して条約事務局に提出した。環境省によると、報告書は2023年3月31日から2025年6月30日までを対象とし、2023年3月に閣議決定した「生物多様性国家戦略2023-2030」の中間評価と合わせて作った。環境省は、この報告書がCOP17で行われるグローバルレビューの「基礎情報となります」と説明している。
日本の現在地 保護地域とOECMの割合は陸21.0%、海13.3%
日本は国家戦略で、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させる「2030年ネイチャーポジティブ」を短期目標に掲げ、その国内目標の一つに30by30を位置づけている。保護地域に加え、保護地域以外で生物多様性の保全に役立っている区域(OECM)も含めて達成する方針だ。
環境省は、民間の取り組みで生物多様性が守られている区域を「自然共生サイト」として認定する制度を2023年度に始め、2026年6月末までに610か所を認定した。8月の発表では、2025年度に認定した2万3100ヘクタールのうち、保護地域との重複を除いた1万ヘクタールを国際データベースにOECMとして登録し、OECMの登録面積は6万4600ヘクタールになった。保護地域とOECMを合わせた割合は、陸域で21.0%(うちOECMは0.2%)、海域で13.3%で、いずれも目標の30%には届いていない。
生物多様性をめぐる国民の意識については、内閣府の調査を伝えた「生物多様性」の意味を知っている人は38.3% 4年前の29.4%から上昇 ただし「行動に移せていない」は33.7%から42.7%に増加 内閣府世論調査も参照してほしい。
資金の議論も続く カリ基金やローマでの合意を受けて
COP17では資金の問題も主要な議題になる。前回のCOP16は2024年11月にカリで中断し、翌2025年2月にローマで開いた再開会合で残りの議題を片づけた。条約事務局の2025年2月27日付の発表によると、ローマでは各国が資金動員の戦略に合意し、条約の資金メカニズムの恒久的な仕組みを整えることを決めた。決定16/34は、恒久的な資金メカニズムを運営する組織の形をCOP19までに決めると定めている。COP17の議事解説によれば、この戦略の実施状況はCOP17から毎回の会合で点検する。
カリでは、遺伝資源の「デジタル配列情報(DSI)」を商業利用する企業から拠出を受ける「カリ基金」の創設も決まった(決定16/2)。事務局の発表によると、基金は2025年2月26日に立ち上がり、資金の少なくとも50%を先住民と地域社会に配分する。先住民と地域社会に関わる条約の規定を扱う補助機関の新設も、カリで決まった(決定16/5)。
同時に開かれる2つの議定書は、条約を補う国際約束だ。事務局によると、カルタヘナ議定書は2003年に発効し締約国は173、名古屋議定書は2014年に発効し締約国は141(いずれも2025年2月時点)。日本政府代表団の具体的な顔ぶれは、16日の発表には示されていない。環境省は、会議結果を終了後に公表するとしている。
