警察庁は9月16日、令和8年(2026年)8月末時点の交通事故統計月報を公表した。今年に入ってからの交通事故の死者は1549人で、前年同期の1549人と1人も変わらなかった。事故の件数と負傷者はわずかに減っている。だが年齢層ごとに見ると、増えた層と減った層がほぼ同じ人数ですれ違っており、全体の横ばいはその差し引きの結果だった。
事故の数は減り、死者だけが動かない
8月末までの交通事故件数は18万3663件で、前年同期より215件(0.1%)少なかった。負傷者は21万6883人で333人(0.2%)減。死亡事故の件数も1519件で1件減っている。事故そのものは前年並みかやや少ないなかで、死者数だけが1549人で並んだ。
8月の1か月だけを取れば、死者は167人で前年同月の203人から36人(17.7%)減った。1日あたり5.4人で、今年の月別では最も少ない。ただし7月は220人で前年より35人(18.9%)増えており、月ごとの振れが大きい。1〜8月を通した1日あたりの死者は6.4人になる。
交通事故の死者数は長期では大きく減ってきた。最多だった昭和45年(1970年)は、8月末までに1万760人が亡くなっている。平成28年(2016年)の同じ時点の2449人と比べても、今年はその63%の水準にとどまる。減少の歩みが止まりつつあるのが、この数年の姿だ。
高齢者が減り、若者が増えた
内訳を見ると、65歳以上の死者は830人で、前年同期の861人から31人(3.6%)減った。逆に65歳未満は719人で、688人から31人(4.5%)増えている。ちょうど同じ31人が入れ替わる形で、合計が動かなかった。
増え方が最も大きかったのは20〜24歳で、67人から93人へ26人(38.8%)増えた。30〜34歳も28人から44人へ16人増、5〜9歳も5人から15人へ10人増えている。一方で70〜74歳は152人から128人へ24人減、65〜69歳は121人から99人へ22人減った。75歳以上の全体では、依然として死者の38.9%を占める。
移動の手段別では、自動車に乗っていて亡くなった人が566人(19人増)、歩行中が510人(1人増)、自転車に乗っていた人が170人(18人減)だった。全体の36.5%が自動車乗車中、32.9%が歩行中で、この2つで7割を占める構図は変わっていない。
10代の死亡事故率が85歳以上を上回った
事故を起こした側から見ると、若年層の増加はさらにはっきりする。死亡事故のうち、原付以上の車両を運転していて最も過失の重い「第1当事者」となった件数は、全体で1393件と前年同期より13件(0.9%)増えた。このうち16〜24歳は174件で、前年の128件から46件(35.9%)増えている。65歳以上は469件でほぼ横ばい(1件増)だった。
件数だけでは、その年代に何人ドライバーがいるかで見え方が変わる。そこで免許保有者10万人あたりに直すと、16〜24歳は2.42件から3.38件へ0.95件(39.4%)上がった。年齢層をさらに細かく分けると、16〜19歳が6.95件で全年齢層のなかで最も高い。従来から事故率の高さが指摘されてきた85歳以上の6.88件を、今年は上回った。16〜19歳の免許保有者は令和7年末で76万2731人と全体の0.9%にすぎないが、そのなかから53件の死亡事故が起きている。
高齢ドライバーについては、75歳以上の運転技能検査に「方向変換」追加へ 警察庁が改正案 合格者の事故率は検査対象外の高齢者の2倍以上のように、免許更新時の検査を厳しくする制度改正が続いてきた。今回の数字は、その対策とは別に、免許を取ったばかりの世代でリスクが上がっていることを示している。
速度超過と酒酔いが増えた
原因となった違反を見ると、増えたのは危険性の分かりやすい類型だった。最高速度違反による死亡事故は81件で前年の59件から22件(37.3%)増え、酒酔い運転は10件から24件へ14件増えている。優先通行妨害も43件から67件へ24件増えた。
対照的に、運転者の不注意にあたる「安全運転義務違反」は720件で、前年の788件から68件(8.6%)減った。うち漫然運転は229件から185件へ、脇見運転は146件から119件へ減っている。安全運転義務違反は全体の51.7%を占める最大の類型で、その減少にもかかわらず総数が増えたのは、速度と飲酒という意図的な違反が押し上げたためだ。
警察庁は9月21日から30日まで秋の全国交通安全運動、21日から10日間 9月1日に下がった生活道路30キロと自転車「青切符」の周知が柱を実施している。9月から10月にかけては、日没が早まって歩行者の被害が増える時期にあたる。年間の死者数は下半期に上振れする傾向があり、前年は下半期だけで1386人が亡くなった。今年の総数が前年を下回るかどうかは、これからの4か月で決まる。
なお本資料の数値は、交通事故件数と負傷者数が速報値、死者数と死亡事故件数が確定値で、令和8年9月9日までに入手したデータをもとにしている。
