厚生労働省は9月9日、令和6(2024)年度の国民健康保険(市町村国保)の財政状況を公表した。加入者1人当たりの保険料(税)の調定額は10万7856円で、前年度の10万997円から6859円増えた。伸び率は6.8%で、資料に示された令和2年度以降の5年間では最も大きい。1世帯当たりでは14万7926円から15万5462円へ7536円増え、伸び率は5.1%だった。
調定額は、市町村が加入者に課すと決めた保険料の額をいう。実際に納められた額ではなく、請求ベースの負担額にあたる。国民健康保険は自営業者や無職の人、退職して会社の健康保険を抜けた人などが入る公的医療保険で、令和6年度末の加入者は2204万人、1542万世帯だった。加入者は前年度より105万人減っている。
所得は2.1%減、医療費の伸びは1.1%
保険料が上がる一方で、加入者の所得は減っている。国民健康保険実態調査による1人当たりの課税標準額は75.4万円で、前年度の77.0万円から2.1%下がった。1世帯当たりでも112.7万円から108.8万円へ3.5%下がっている。課税標準額は所得の総額から基礎控除などを差し引いた額で、前年度分の所得をもとに集計している。
医療費の伸びも、保険料の伸びには届かない。加入者1人当たりの保険給付費は36万1302円で、前年度の35万7261円から1.1%増えるにとどまった。給付費が1.1%しか増えていないのに保険料が6.8%上がったことになる。
保険料を抑えていた市町村の穴埋めが253億円減った
差を埋めているのが、市町村の一般会計からの繰り入れである。国民健康保険には、法律で決められた分とは別に、市町村が独自の判断で一般会計から国保の会計にお金を移す「法定外繰入金」がある。原資は住民税などの税金で、これを入れれば保険料を低く抑えられる。
令和6年度の法定外繰入金は1636億円で、前年度から339億円、17.2%減った。このうち赤字の穴埋めなどを目的とする「決算補填等目的」の分は923億円で、前年度の1220億円から297億円減っている。内訳をみると、最も大きい「保険料の負担緩和を図るため」の繰り入れが821億円で、前年度の1074億円から253億円減った。保険料の収納不足を埋めるための繰り入れも120億円から72億円に減っている。
穴埋めをやめれば、その分は保険料として加入者に回る。国は決算補填等目的の繰り入れを解消する方針を示しており、市町村はその方向に沿って繰り入れを縮めている。
収支そのものは改善した。決算補填等目的の繰入金923億円を除いた精算後の単年度収支は235億円の赤字で、1803億円の赤字だった前年度から赤字幅が1568億円縮んだ。繰越金などを反映した収支差引合計額は4686億円の黒字である。単年度収支が赤字の市町村は1716のうち1034で、前年度の1156から減った。
急上昇を防ぐ「激変緩和」の期間は2023年度で終わっている
令和6年度は、保険料の急な上昇を抑えるための移行期間が終わった翌年度にあたる。
厚労省保険局国民健康保険課が令和6年6月26日にまとめた「保険料水準統一加速化プラン(第2版)」によると、国民健康保険は加入者の年齢構成が高く医療費の水準が高い一方、所得水準が低いという課題を抱えてきた。このため平成30年度の国保制度改革で国の財政支援を拡充し、市町村だけでなく都道府県と共同で運営する仕組みに改めた。同プランは「平成30年度から令和5年度まで、都道府県単位化に伴う保険料の激変緩和期間(都道府県単位化に伴う保険料の急上昇を防ぐための期間)としてきた」と記している。
国はさらに、都道府県内で保険料の水準をそろえる作業を進めている。同プランは、令和6年度から11年度までの国保運営方針の期間中に都道府県ごとの「納付金ベースの統一」を目指し、次の期間の中間にあたる令和15年度までに「完全統一」へ移ることを目標に掲げた。遅くとも令和17年度までの移行を目標とするとしている。目標年度を決めていない都道府県については、令和8年(2026年)までに意思決定できるよう取り組みを進めるとした。同じ都道府県内であれば、住む市町村によって保険料が違う状態をなくす方向である。
滞納世帯は平成30年以降で初めて増加、収納率は島根が最高で東京が最低
負担増は納付の状況にも表れている。令和7年6月1日現在で保険料に一部でも滞納がある世帯は185万2301世帯となり、前年の182万9802世帯から2万2499世帯増えた。全世帯に占める割合は11.4%から11.9%に上がった。滞納世帯は平成30年の267万1058世帯(14.5%)から減り続けており、増加に転じたのは公表資料でさかのぼれる平成30年以降で初めてである。
保険料の収納率は93.99%で、前年度の94.20%から下がった。政令指定都市と特別区の平均は92.94%から92.55%へ、市部平均は94.01%から93.79%へ下がり、町村部平均は94.93%から94.86%と下げ幅が小さかった。
都道府県別では島根県の96.78%が最も高く、長野県96.11%、新潟県95.93%が続いた。最も低いのは東京都の91.16%で、大阪府92.45%、千葉県92.70%の順に低い。前年度からの下げ幅が大きかったのは大阪府、山口県、大分県だった。
