公明党の西田実仁幹事長は10月18日、NHK番組「日曜討論」に与野党の幹事長らと出演し、政府が2027年4月からの実施を目指す2年間限定の飲食料品の消費税減税について「物価高対策として消費税を下げるのは非効率だ。足元で大変困っている家庭に給付をすぐに行うべきだ」と述べた。減税とセットで導入される支援金の詳細が分からず「国民に不安が募っている」として、誰が対象になるのかを個人ベースで示すよう政府に求めた。党の機関紙・公明新聞が19日、発言の大要を伝えた。
「同じ10兆円なら1人8万円の給付を」
公明新聞によると、西田氏は番組で、給付は実務面からも早く届けられるため優先すべきだと主張した。そのうえで、消費税減税に必要な財源と同じ10兆円を使うのであれば、1人当たり8万円の給付を公明党として提案していると説明した。
この給付案は、公明党が15日の政務調査会全体会議で、政府提出の消費税減税関連法案の対案として打ち出したものだ。公明新聞(16日付)によると、全体会議では、政府案はレジ改修に加え、農林漁業者や外食産業への影響など事業者の負担が大きく、それを支える追加の支出も必要になるため非効率だとの指摘が出た。減税分のすべてが小売価格に反映されるとは限らず、2年後に税率が元に戻る際には家計に深刻な影響が出るとも主張し、政府案と同じ約10兆円を使う場合の一案として、2年間で国民1人当たり約8万円を配る案を示した(公明、食料品減税法案の対案に「1人約8万円の給付」 岡本代表「このままでは賛成できない」)。
18日の番組での発言は、この対案を党の幹事長が改めて公の場で説明した形となる。
支援金は「誰が対象か示す必要」 政府案の中身
西田氏が不安の理由に挙げたのは、2年後の税率の戻りと、減税と組み合わせて導入される「就業者負担軽減支援金」の関係だ。西田氏は「2年後には確実に(税率が)上がる。その時に支援金の詳細が分からない以上、負担増がどうなるか分からず、国民に不安が募っている」と述べた。
内閣官房と財務省がまとめた法案の概要によると、政府案は2027年(令和9年)4月1日から2029年(令和11年)3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率を地方消費税と合わせて1%とする。現在の飲食料品の税率は8%だ。地方消費税の減収分は地方特例交付金で埋める。
支援金は、勤労所得が一定額を超え、合計所得金額が一定額以下であることなどの要件を満たす人に毎年1回支給する。ただ、所得の基準額や支給額は「政令で定める」とされ、法案の段階では具体的な金額が示されていない。西田氏が「個人ベースで誰が対象になるのかを示す必要がある」と述べたのは、この点を指している。支援金をめぐる国会でのやり取りは、公明、衆院予算委で支援金の「具体化」迫る 社会保険で手取り差、申告なしで反映を提案でも伝えた。
| 項目 | 政府案 | 公明党の対案 |
|---|---|---|
| 手段 | 飲食料品の消費税率を8%から1%に | 国民への現金給付 |
| 期間 | 2027年4月〜2029年3月の2年間 | 2年間 |
| 規模 | 約10兆円(公明党の見方) | 政府案と同じ約10兆円 |
| 家計への効果 | 減税+所得に応じた支援金 | 1人当たり約8万円 |
出典: 内閣官房・財務省「法律案について(概要)」、公明新聞(2026年10月16日、19日)
「答弁書でも効果は分からない」 昨年11月の政府見解
西田氏は番組で「消費税減税で物価が下がるか分からない。政府が閣議決定した答弁書でも効果は分からないとしている」とも述べた。
ここで言う答弁書は、牧山ひろえ参院議員が2025年10月27日に提出した「食料品に係る消費税率をゼロ%とする提案に関する質問主意書」に対し、政府が同年11月7日に参議院へ送った答弁書を指す。答弁書は、食料品の消費税率を引き下げても「事業者において、原材料費の高騰等により、経営上の判断から小売価格を据え置く場合も考えられる」とし、生産者や供給者への効果について「確たることをお答えすることは困難である」と記している。物価への波及についても、コストや需要の変化など様々な要素の影響を受けるとして、確たる答えは困難だとした。
同じ答弁書は、加藤勝信財務相(当時)が2025年6月13日の記者会見で述べた「物価高に最も切実に苦しんでいる低所得者支援という意味では効率性が乏しい」との発言を引いて、消費税減税と現金給付の比較に関する政府の考えを示している。
公明党の平木大作参院幹事長も19日の参院予算委員会で、この答弁書を取り上げた。公明新聞(20日付)によると、平木氏は「物価高対策として効率的ではないと言ってきたことと、今回の(消費減税の)施策が整合的に受け止められない」と述べ、過去の政府答弁との整合性をただした。
首相に委員会での説明求める 地方公聴会も
国会審議の進め方について、西田氏は「政府案は曖昧で不透明な点が多い」と述べ、首相に国会の委員会で国民に説明してほしいと求めた。消費減税は地方の財政にも大きな影響を与えるとして、参考人質疑に加えて地方公聴会も開き、不透明な点を徹底して明らかにする必要があるとした。
法案の概要を見ると、地方への影響は二つの面にわたる。一つは税収で、飲食料品の税率引き下げで減る地方消費税の分は、国の地方特例交付金で埋めるとしている。もう一つは支援金の費用で、3分の2以上を国が負担し、残りを都道府県と市区町村が半分ずつ負担する仕組みだ。普通交付税を受けない見込みの市区町村には当分の間、特別交付金を出し、2027・28年度は全ての市区町村に交付する。公金受取口座を登録した人には、市区町村長の職権で支給を認定できるようにする。
財源については「特例公債に頼ることなく、歳出・歳入全般の見直しにより確保する」とし、地方財政に支障が生じないよう措置すると記している。内閣府には支援金を担う「租税・社会保険料負担に関する総合調整本部」を置く。
法案の正式名称は「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」。衆議院の審議経過情報によると、内閣が提出し、10月9日に衆院で受理された。20日の閲覧時点で、付託する委員会はまだ記載されていない。
西田氏が求めた首相の委員会出席や地方公聴会が実現するかどうかは、今後の与野党の協議で決まる。支援金の対象や額が審議の中でどこまで示されるかが、法案の行方を左右する。
衆院定数「比例だけ45削減は説得力なし」
番組では衆院議員の定数削減も議題になった。西田氏は「最大の問題は、なぜ比例代表のみ45削減するのかだ。説得力が全くない」と述べた。小選挙区と比例代表の割合を3対2で保ってきたことを踏まえ、45人を減らすなら小選挙区27、比例18に割り振るべきだとの考えを示した。人口減少を理由にするなら、衆院だけでなく参院も減らさなければならないとも語った。
第221回国会に提出された「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」の要綱は、各会派でつくる協議会で定数削減を含む選挙制度改革を検討し、施行から1年以内に法制上の措置を講じるとしている。期限までに措置が講じられない場合は、比例代表の定数を176人から45人減らして131人とし、衆院の定数を420人にすると定める。選挙制度をめぐる各党の協議の経過は、衆院選挙制度の9党協議、与党が比例45減を再主張 公明「3対2の割合を前提に」で伝えた。
西田氏はまた、定数削減の議論はそもそも政治とカネの問題による政治不信から出てきたものだと指摘した。いわゆる自民党の裏金問題は全容が解明されていないとして、公明党が提出している政治資金の規制強化や、政治資金をチェックする第三者機関の設置に関する法案をまず議論することが、政治不信の回復につながると述べた。
