文部科学省が7月に公表した令和8年版科学技術・イノベーション白書は、他の論文に多く引用される「Top10%補正論文数」で日本が世界13位まで順位を落としたとして、政府が2035年までに世界3位を目指す方針を掲げたと説明した。同じ指標の最新値は、文科省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が8月7日に公表した「科学技術指標2026」にあり、2022〜2024年の年平均で3163本、世界シェア1.5%の13位だった。首位の中国は8万4392本で、日本の26倍を超える。

かつて世界4位 本数そのものが3割減った

Top10%補正論文数は、被引用数が各年・各分野で上位10%に入る論文を数え、実数が論文数の10分の1になるように補正した指標だ。国際共著論文は参加国で分け合って数える「分数カウント法」を使う。研究の量ではなく、どれだけ他の研究者に読まれ、引用されたかという注目度を測る物差しになる。

白書が載せた推移表によると、日本は2001〜2003年の年平均で4529本、世界シェア5.9%の4位だった。2011〜2013年は4410本・3.5%で7位、2021〜2023年は3447本・1.7%で13位と下がり続けている。白書の表にある2001〜2003年の4529本と、最新の科学技術指標2026の3163本を比べると、20年あまりで本数そのものがおよそ3割減った計算になる。

論文の総数で見れば、日本は2022〜2024年平均で6万6214本の世界5位につけている。総数では上位なのに注目度の高い論文に絞ると13位まで落ちる。この差が、白書や基本計画が「研究力の相対的・長期的な低下」と書く根拠になっている。同じ調査からは、科学技術指標2026 自動車・機械などの貿易収支比で中国が初めて日本を上回る 2024年は中国2.60・日本2.45のように、産業面での地位の入れ替わりも明らかになっている。

3位に届くには2.4倍 目標年は2035年

政府は今年3月27日、第7期科学技術・イノベーション基本計画を閣議決定した。計画は冒頭で「我が国は10年以内にTop10%補正論文数において世界第3位になることを目指す」と明記している。巻末の指標一覧では、この指標の目標を「英独と比肩する地位へ(世界第3位)」、達成時期を2035年とし、現状を「世界第13位(2021-2023年平均)」と記した。

最新の科学技術指標2026で3位は英国の7696本である。日本の3163本はその半分に満たず、追いつくには2.4倍に増やす必要がある。2位は米国の2万9911本、1位は中国の8万4392本で、上位2か国だけで世界シェアの55.0%を占めている。

投資60兆円と、減り続ける研究時間

計画は投資額の目標も置いた。2026〜2030年度の5年間で、政府の研究開発投資を合計60兆円、官民を合わせた研究開発投資を180兆円とする。直前の5年間にあたる2021〜2025年度の政府分は43.6兆円、官民分は2021〜2024年度で86.3兆円だった。研究費の拡充は、「統合イノベーション戦略2026」案まとまる 高市首相「研究費の実質倍増を目指す」 科研費・運営費交付金を拡充へでも2027年度概算要求の柱に据えられている。

金額と並んで計画が問題にしたのが、研究者が研究に使える時間である。大学等の教員が職務に占める研究時間の割合は2017年度の32.9%から2022年度は32.2%へ下がり、代わりに学内事務等の割合が18%から19.7%に増えた。博士人材の層も薄い。人口100万人当たりの博士号取得者数は2018年度の120人から2022年度で123人とほぼ横ばいで、産業界による理工系博士号取得者の採用者数は2020年度の1176人から2022年度は1363人に増えたものの、第6期基本計画が2025年度の目標に掲げた2150人には達しない見込みだと計画は記している。

第7期基本計画の期間は2026年度から2030年度までの5年間で、取り組みは今年4月に始まった。計画は指標一覧に添えて、「目標値の達成が自己目的化し、本来目指すべきものが見失われることのないように留意が必要である」とも書いている。