静岡県の駿豆線と神奈川県の大雄山線を走らせる伊豆箱根鉄道(本社・静岡県三島市)は10月15日、運賃の上限を引き上げる認可を国土交通省中部運輸局に申請した。普通運賃の初乗り(3キロまで)は160円から180円に、通勤定期(大人1か月)は同じ区間で5090円から6200円になる。通学定期は家計への負担を考えて据え置く。実施は駿豆線が2027年春、大雄山線が2028年春の予定。中部運輸局は16日から30日まで、この申請への意見を募っている。

普通運賃は全区間で20〜100円上がる

申請の対象は、普通運賃(定期外)と通勤定期だ。会社が示した新旧の比較表によると、普通運賃は営業キロに応じて20円から100円上がる。3キロまでの160円が180円、5キロの190円が220円、10キロの310円が370円、20キロの550円が650円となる。

普通運賃(大人)の現行と申請上限(円)

現行申請上限

02004006008001601803キロ1902205キロ31037010キロ55065020キロ
出典: 伊豆箱根鉄道「鉄道事業の旅客運賃の改定申請について」
数値で見る(単位: 円)
項目現行申請上限
3キロ160180
5キロ190220
10キロ310370
20キロ550650

路線の長さに当てはめると、営業キロ19.8キロの駿豆線(三島〜修善寺)を端から端まで乗る場合は18.1〜20.0キロの区分に入り、550円が650円になる。9.6キロの大雄山線(小田原〜大雄山)は8.1〜10.0キロの区分で、310円が370円になる。

通勤定期は、1か月で1110円から4700円の値上げとなる。最も遠い区分の通勤定期は2万2400円から2万7100円に上がる。一方、通学定期は大人1か月で3キロまで2980円、20キロで1万3030円の現行額のまま据え置く。会社は据え置きの理由を「家計への負担を配慮」したためとしている。

営業キロ 普通運賃(現行→申請上限) 通勤定期1か月(現行→申請上限) 通学定期1か月(据え置き)
3キロ 160円→180円 5,090円→6,200円 2,980円
5キロ 190円→220円 7,520円→9,100円 4,400円
10キロ 310円→370円 12,490円→15,110円 7,230円
15キロ 440円→530円 18,050円→21,840円 10,520円
20キロ 550円→650円 22,400円→27,100円 13,030円

表: 伊豆箱根鉄道の大人運賃(申請上限との比較・抜粋)

出典: 伊豆箱根鉄道「鉄道事業の旅客運賃の改定申請について」(2026年10月15日)

会社が示した改定率(2027年4月1日に改定したと仮定した3年間の合計)は、定期外が17.8%、通勤定期が21.2%、通学定期が0.0%で、定期全体では15.9%、全体では17.0%となる。

2路線で実施時期が1年ずれる

申請は駿豆線と大雄山線の両方について同じ日付で出したが、実際に値上げする時期は駿豆線が2027年春、大雄山線が2028年春と1年ずらす。会社は、前回の改定のやり方を踏襲し、過去の年度の路線ごとの収支の違いなどを考えたと説明している。具体的な実施日は決まっていない。

前回の改定も同じ形だった。会社によると、駿豆線は2023年4月、大雄山線は2024年3月に運賃を改定した。消費税率の変更に伴う改定を除けば、1995年10月以来の改定だったという。今回の申請が認められれば、両線ともおよそ4年でふたたび値上げすることになる。

駿豆線は三島市と伊豆市を結び、修善寺温泉などの観光地へ向かう路線だ。2024年12月18日からは、クレジットカードなどのタッチ決済で乗れるサービスを始めている。大雄山線は小田原市と南足柄市を結ぶ。

赤字は値上げ後も残る見通し

会社は申請の理由として、沿線人口の減少で通学・通勤の人が減り、輸送人員が1990年代前半をピークに減り続けていることを挙げた。新型コロナウイルスで乗客が激減したあと、前回の改定時に見込んだ水準までは戻らず「頭打ち」になっているという。加えて、設備の更新や維持の費用、物価の上昇による部材の高騰、人材を確保するための処遇改善が重なり、必要な資金をまかなう収益を上げ続けるのが難しくなったとしている。

申請資料によると、鉄道部門の2025年度の実績は、収入が約26億9700万円、支出が約30億2000万円で、約3億2300万円の赤字だった。支出に対する収入の割合(収支率)は89.3%。今の運賃のまま2027〜2029年度の3年間を過ごした場合、赤字は合計で約25億900万円、収支率は76.1%に落ちると見込む。申請どおりに値上げしても赤字は合計約12億900万円残り、収支率は88.5%にとどまる。

乗客数の見通しも厳しい。2025年度の輸送人員は1551万3000人(定期外635万9000人、定期915万4000人)で、2029年度には1539万7000人まで減ると推定している。定期で乗る人が定期外を上回っており、通学定期を据え置いても、通勤定期の値上げが運賃収入に大きく効く構造だ。

設備投資は、2025年度の実績が4億4500万円で、2026年度は7億8500万円を見込む。2027年度以降は毎年4億円余りを計画し、三島駅や小田原駅などのホームの改修、列車の運行に欠かせない設備の改修、点字タイルの更新を挙げている。経営の合理化では、駿豆線のワンマン化や、駅係員を時間帯によって配置する見直しを進めてきたとしている。

小児は全区間50円均一に

値上げに合わせて、子どもの運賃は大きく下げる。会社は同じ15日、小児の普通運賃を全区間で1乗車50円の均一に、小児の通学定期を全区間で1か月500円の一律にすると発表した。3か月定期は1350円、6か月定期は2550円となる。会社は「東海地方初」(同社調べ)としている。

駿豆線では磁気乗車券、大雄山線では磁気乗車券とICカードの両方が対象になる。1日乗り放題の「旅助け」(駿豆線)と「金太郎きっぷ」(大雄山線)の小児運賃は100円になる。小児の通勤定期は、これまでどおり大人運賃の半額(端数切り上げ)とする。実施は運賃改定と同時で、上限の認可を受けたあとに届け出る予定という。会社は、親会社の西武グループが2010年から続ける「こども応援プロジェクト」の一環と位置づけている。

認可は中部運輸局長が審査、意見は30日まで

鉄道の運賃は、鉄道事業法第16条第1項に基づき、事業者が上限を定めて国土交通大臣の認可を受ける仕組みになっている。認可にあたっては、「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」を超えていないかが審査される。今回の申請の認可は中部運輸局長に委ねられている。申請しているのは「上限」の運賃で、実際の運賃はこの範囲内で決まる。

中部運輸局は、利用者の意見を審査の参考にするため、10月16日から30日までパブリックコメントを実施している。意見は、e-Govの意見提出フォームか、名古屋市中区の中部運輸局鉄道部監理課あての郵送(期間内必着)で出せる。氏名、住所、連絡先を書く必要があり、電話では受け付けない。寄せられた意見はe-Govで回答が公表されるが、個別の回答はしないとしている。