こども家庭庁がまとめた「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」によると、2026年4月1日時点の全国の待機児童は2435人で、前年の2254人から181人増えた。前年を上回るのは2017年以来9年ぶり。待機児童のいる市区町村は前年の211から189に減ったが、東京都の世田谷区や足立区、北区などで大きく増え、待機児童が100人以上の自治体は1から3に増えた。待機児童の96.0%は0〜2歳児だった。一方、全国の保育所等の定員に対する利用児童の割合(定員充足率)は87.7%と前年の88.4%から下がり、空きが広がる地域も増えている。

減少続きから一転、増加に

待機児童は、保育所などへの入所を申し込んだのに入れていない子どものうち、一定の条件に当てはまる人を除いた数を指す。こども家庭庁が毎年4月1日時点で全国の市区町村から集めている。

集計によると、待機児童は2017年の2万6081人が最も多かった。その後は保育所の整備が進み、2018年は1万9895人、2020年は1万2439人、2021年は5634人と大きく減った。2022年以降は2944人、2680人、2567人、2254人と、減り方が緩やかになりながらも8年続けて減っていた。2026年はこれが2435人に増えた。それでも最も多かった2017年の10分の1以下にとどまっている。

全国の待機児童数(2021年以降・各年4月1日)(人)

02,0004,0006,0005,63420212,94420222,68020232,56720242,25420252,4352026
出典: こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」
数値で見る(単位: 人)
項目人
20215,634
20222,944
20232,680
20242,567
20252,254
20262,435

全国1741市区町村のうち、89.1%にあたる1552市区町村は待機児童がいなかった。待機児童のいる189市区町村の内訳は、1〜49人が181(前年は206)、50〜99人が5(同4)、100人以上が3(同1)。いる自治体の数は減ったものの、多くの待機児童を抱える自治体が増えた形だ。189市区町村のうち98は前年より待機児童が増え、そのうち43は前年に待機児童がいなかった。こども家庭庁は、待機児童をいったん解消した後も保育ニーズの動きに注意が必要だとしている。

なお、熊本県内の自治体のデータは令和8年熊本地震の影響で確定していないため、今回の数値はすべて暫定値で、今後修正される場合がある。

都内で大きく増える 世田谷区は47人から166人に

待機児童が最も多かったのは東京都世田谷区の166人で、前年の47人から119人増えた。次いで足立区106人(前年7人)、北区103人(同18人)、町田市90人(同40人)、江戸川区75人(同0人)、兵庫県西宮市75人(同76人)の順だった。上位10自治体のうち7つが東京都内で、大田区(48人、前年0人)と立川市(45人、同8人)も入った。前年から増えた人数の上位10自治体を見ても、宮城県富谷市(0人から26人)を除く9つが都内の自治体だった。

順位 自治体 2026年4月 2025年4月
1 東京都世田谷区 166人 47人
2 東京都足立区 106人 7人
3 東京都北区 103人 18人
4 東京都町田市 90人 40人
5 東京都江戸川区 75人 0人
5 兵庫県西宮市 75人 76人
7 奈良県橿原市 56人 68人
8 兵庫県明石市 54人 56人
9 東京都大田区 48人 0人
10 東京都立川市 45人 8人

表: 待機児童数の多い上位10自治体

出典: こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)(全体版)」

地域別に見ると、首都圏・近畿圏の7都府県と、そのほかの指定都市・中核市を合わせた「都市部」の待機児童は1838人で、全体の75.5%を占めた。申込者に占める待機児童の割合(待機児童率)は都市部が0.10%、それ以外の道県が0.06%で、全国では0.09%だった。

年齢別では、0〜2歳児が2337人で全体の96.0%を占め、とくに1・2歳児が2117人と86.9%にのぼった。0歳児は220人、3歳以上児は98人だった。保育の申込者数は、1歳・2歳・3歳以上がいずれも前年から減ったが、0歳児だけは14万1980人から14万5164人に増えた。

自治体が挙げた要因は「申込者の想定外の増加」と保育士不足

こども家庭庁が待機児童のいる189自治体に、解消できなかった要因を尋ねたところ、「申込者数の想定以上の増加、または計画していた利用定員数の不足」「保育人材の確保が困難」「保育需要の地域偏在」が上位だった。待機児童が多い自治体と増加が大きい自治体への聞き取りでは、次のような事情が挙がった。

  • 共働き世帯や共働きを希望する世帯など、保育を必要とする人が増えた
  • 育児休業を早めに切り上げたり、就労を目指して求職活動をしたりする人が増えた
  • 子育て支援を充実させた結果、子育て世帯の転入が増えた
  • 保育士が足りず、定員どおりに受け入れられない施設が出た
  • 保育士の離職や短時間勤務の希望が増え、保育体制を確保できなかった
  • マンションや宅地の開発で子育て世帯が特定の地域に集まった

上位の自治体では、申込者の増加が定員の増加を上回った例が目立つ。世田谷区は利用定員を27人増やしたのに対し申込者が447人増え、足立区は定員が25人減る一方で申込者が587人増えた。江戸川区は定員を590人増やしたが、申込者が789人増え、待機児童が0人から75人になった。

背景として、同庁は女性の就業率と共働き世帯の割合の上昇を挙げる。総務省の労働力調査によると、25〜44歳の女性の就業率は2024年の81.9%から2025年は83.6%に、共働き世帯の割合は77.3%から79.7%に上がった。保育所等を利用する子どもは、2025年4月時点で就学前の子どもの55.7%と半数を超えている。

「待機児童」に数えない人は6万人

待機児童の数え方には決まりがある。申込者から、実際に保育所等を利用している人と、国が定める「除外4類型」に当たる人を除いた数が待機児童になる。除外されるのは、▽特定の保育所だけを希望している人▽育児休業中で復職の意思が確認できない人▽自治体独自の保育施策を利用している人▽求職活動を休止している人――の4つ。この基準は2017年3月、自治体ごとの運用のばらつきをなくすために見直され、待機児童に数える範囲が広がった。

2026年4月の除外4類型は合わせて6万1448人で、待機児童の約25倍にあたる。内訳は、特定の保育所等のみを希望している人が3万7672人、育児休業中の人が1万4664人、地方単独事業を利用している人が4841人、求職活動を休止している人が4271人だった。このほか、企業主導型保育などの「特例保育等」を利用している人が1万9042人いる。除外4類型の合計は前年の6万4489人から減った。

希望する保育所に入れずに育休を延ばしたり、遠い保育所を断ったりした家庭は、待機児童の数には表れない。待機児童数だけでは、保育所を探す家庭の実感を十分に捉えきれない面がある。

男性の育休取得の状況については「男性の育休取得率は40.5% 取らなかった理由の最多は「会社に制度がなかったから」29.1% 法律は申し出れば取得できると定め、会社は拒めない」で詳しく伝えている。

全国では定員の空きが拡大 再編も課題に

都市部の一部で待機児童が増える一方、全国では保育の利用自体が減っている。2026年4月1日時点の保育所等の利用定員は301万6417人で前年から1万2865人減り、利用する子どもは264万6756人で3万1661人減った。保育所等の数は4万46か所で、71か所増えた。申込者は272万9681人で、前年の276万5235人から減った。

定員に対する利用児童の割合を示す定員充足率は、2022年4月の89.7%から89.1%、88.8%、88.4%と下がり続け、2026年4月は87.7%だった。都道府県別では、秋田県が79.4%、鳥取県が77.3%と8割を下回った一方、大阪府は94.9%、兵庫県は93.8%と高く、地域による差が大きい。ただし同庁は、年度の途中で入所する子どものために4月時点では空きを設けている保育所もあり、数値だけでは各保育所の状況を判断できないと注意を促している。

こども家庭庁は今後の方針として、「保育政策の新たな方向性」に基づき、地域の課題に合わせて待機児童が出ない体制を確保するとしている。待機児童が多い自治体には聞き取りを重ね、それぞれの事情に合わせて解消に取り組む。あわせて、保育士の業務負担を軽くし、人材確保を進める。過疎地域など待機児童が少ない地域では定員充足率の低下が課題になっているとして、保育所の統廃合や規模の縮小、多機能化といった計画的な取り組みを促し、人口が減る地域でも保育の機能を保てるようにする考えだ。