農林水産省は16日、令和8年産米(新米)の9月の相対取引価格・数量を公表した。産地の集荷業者と卸売業者などの間で決まった取引価格の全銘柄平均は、玄米60キロあたり2万1293円。前年同月の3万6895円より1万5602円(42%)安く、2年前の同月の2万2700円も1407円(6%)下回った。米価が高騰した令和7年産から一転し、新米の卸値は大きく下がって始まった。

新米の卸値は2年前も下回る

相対取引価格は、JA全農や道県の経済連、大手の集荷業者などが、卸売業者などと数量と価格を決めて結んだ主食用米の契約価格を、産地の銘柄ごとに加重平均したものだ。運賃や包装代、消費税を含む1等米の価格で、大口割引などを適用した後の値になっている。全銘柄平均は、銘柄ごとの価格を前年産の検査数量で重み付けして算出する。スーパーで消費者が払う値段ではなく、いわば産地から卸への「卸値」にあたる。

9月の取引数量は全銘柄で5.4万トン(5万3814トン)にとどまり、前年同月の16万287トンより66%少なかった。農水省は、令和7年産米の取引が続いていることなどから、新米の取引数量が例年に比べて少ないと説明している。出回りからの累計の契約数量も5.8万トンで、前年同期より12.2万トン少ない。

出回りから9月までを通した令和8年産の年産平均価格は2万1287円で、令和7年産(速報値)の3万5174円より1万3887円(39%)安い。令和6年産の2万5179円と比べても3892円(15%)低い。ただ、令和5年産の1万5315円、令和4年産の1万3844円と比べると、なお6000円以上高い水準にある。

相対取引価格の年産平均(玄米60キロあたり)(円)

010,00020,00030,00040,00013,844令和415,315令和525,179令和635,174令和721,287令和8
令和7年産と令和8年産は速報値。令和8年産は出回りから令和8年9月まで出典: 農林水産省「相対取引価格の推移(令和4年産~令和8年産)」
数値で見る(単位: 円)
項目円
令和413,844
令和515,315
令和625,179
令和735,174
令和821,287

5年分を並べると、令和6年産から7年産にかけての高騰と、8年産での急な下落が分かる。令和6年産は9月の2万2700円から月を追って値を上げた。令和7年産は9月の3万6895円が出発点で、翌年8月には3万1556円まで下がっていた(スーパーの米、5kg平均3,160円 1年前より604円安く 卸値はなお前年比16%高)。

銘柄ごとの下げ幅には大きな差

産地の銘柄別にみると、下げ幅には大きなばらつきがある。取引数量が最も多かった北海道産ななつぼしは1万8702円で、前年同月の3万6540円の51%の水準だった。青森産まっしぐらは1万1854円で、前年同月の3万6825円の32%にまで下がった。栃木産とちぎの星も1万2975円と、1万3000円を割り込んでいる。

一方、ブランド米や高価格帯の銘柄は下げ幅が比較的小さい。山形産つや姫は2万6922円で、前年同月の68%。新潟産コシヒカリ(魚沼)は2万5218円で、前年同月の4万2257円の60%だった。富山産の富富富も2万6509円で、9月に価格が公表された銘柄の中で高い部類に入る。

産地・銘柄 令和8年9月 令和7年9月 前年比
北海道 ななつぼし 18,702円 36,540円 51%
北海道 ゆめぴりか 21,196円 37,701円 56%
青森 まっしぐら 11,854円 36,825円 32%
秋田 あきたこまち 23,309円 38,631円 60%
山形 つや姫 26,922円 39,754円 68%
新潟 コシヒカリ(一般) 22,261円 38,613円 58%
新潟 コシヒカリ(魚沼) 25,218円 42,257円 60%
全銘柄平均 21,293円 36,895円 58%

表: 主な産地銘柄の相対取引価格(玄米60キロあたり・税込み)

出典: 農林水産省「令和8年産米の相対取引価格・数量(令和8年9月)(速報)」

取引の量にも偏りがある。北海道産ななつぼしは6486トン、ゆめぴりかは5081トンが契約され、ゆめぴりかは前年同月の126%と前年を上回った。これに対し、新潟産コシヒカリ(一般)は3485トンで、前年同月の1万9438トンの18%にとどまった。九州や中国・四国の多くの銘柄は、9月は取引がないか100トン未満で、価格が公表されていない。

民間在庫は最高水準、店頭は5キロ2952円

在庫は大きく積み上がっている。同じ16日に農水省が公表した「米に関するマンスリーレポート(令和8年10月号)」によると、8月末の出荷・販売段階の民間在庫(うるち米)は150万玄米トンで、前年同月より66万玄米トン多かった。比較が可能な平成20年以降で最大の増加量で、在庫の水準としても最も高い。

段階別では、JAなど出荷段階が108万玄米トン(前年同月比57万トン増)、卸売業者など販売段階が42万玄米トン(同9万トン増)。農水省は、販売段階の在庫が例年の同じ時期の20万〜30万トン程度と比べて高い水準で推移しているとしている。

新米の供給量そのものは前年産をやや下回る見込みだ。農水省が13日に公表した令和8年産の主食用米の予想収穫量は710万5000トンで、前年産より7万6000トン少ない(今年の主食用米、予想収穫量710万トン 前年より7万6000トン減 東北・西日本で長雨や日照不足)。収穫量は前年産を下回る見込みだが、8月末の在庫は前年より66万トン多い状態で新米の時期を迎えた。

卸値の下落は店頭価格にも表れている。マンスリーレポートに収録された全国約1000店のスーパーや生協のレジ情報(POSデータ)によると、9月の精米の平均価格は5キロ換算で2952円。8月の3160円より208円(6.6%)安く、前年同月の4189円より1237円(29.5%)下がった。

POSの平均価格は、実際に売れたすべての精米を5キロ袋に換算して加重平均したもので、銘柄米より安いブレンド米や特売品も含む。10月5〜11日の週の販売数量は前年同期を22.8%上回り、販売数量に占めるブレンド米などの比率は21%だった。農水省は、新米の出回りなどを背景に販売数量が堅調に推移しているとしている。

備蓄米の買戻しと今後の焦点

政府備蓄米をめぐっては、令和8年産備蓄米の政府買入入札を4月から6月にかけて4回実施し、買入予定の20万7521トンが全量落札された。マンスリーレポートによると、政府は放出した備蓄米(全体で59万玄米トン)について、供給不足を避けながら適正水準に向けて計画的に回復させる方針だ。令和7年産米21万玄米トン(昨年度に買入れを中止した数量に相当)の買戻しを進め、9月2日に公示、18日に見積合せを実施した。備蓄期間を過ぎた備蓄米は、飼料用など主食以外の用途に順次販売するという。

相対取引価格の調査は、かつて自主流通米の指標価格をつくっていた全国米穀取引・価格形成センターの入札取引が低調になり、平成21年産で取引が中止されたことなどを受けて続けられてきた。農水省は平成26年3月から、需給や価格、在庫などの情報を毎月提供している。

9月は令和7年産の取引が続く中での新米の出だしで、取引量は前年同月の34%にとどまる。主要産地の新米が本格的に出回る10月以降、取引の量が増えるなかで価格がどう動くかが、店頭価格の先行きを左右する。