東北電力は10月26日、宮城県女川町と石巻市にまたがる女川原子力発電所の2号機について、10月17日から計画的に止めていた原子炉を同日午後6時に起動したと発表した。タービン建屋にある弁から微量の水が漏れ出ていたため、分解して点検したところ、弁体と弁座の接触面の一部に浸食が見つかった。東北電力は、錆などの微細な異物が弁体と弁座の間にかみ込んだことが原因と推定している。弁は取り替え、漏れが無いことを確かめた。今後は原子炉の出力を上げ、準備が整い次第、発電を再開する。
9月1日に水漏れを確認、10月17日に原子炉を止める
漏れが見つかったのは「高圧第1給水加熱器(B)水室逃し弁」と呼ぶ弁である。東北電力が10月15日に出した発表によると、9月1日にこの弁から微量の水が排水槽に漏れ出ていると判断し、それ以降は監視を続けてきた。
漏れた水は周囲には広がらず、排水槽に回収されたうえで、発電所内の放射性物質を含む水を浄化・処理する「液体廃棄物処理系」で処理されていた。東北電力は、環境への放射能の影響は無く、原子炉への給水流量や原子炉の水位にも目立った変化は無いとしていた。ただ、漏れ出る水の量がわずかに増えていたことから、今後の安定運転を確実にするため、原子炉を計画的に止めて弁を分解点検し、部品を交換することを決めた。
10月17日の発表によれば、2号機は同日午前1時に発電を止め、午後1時57分に原子炉を冷温停止した。東北電力は停止の時点で、止めてから再起動するまでを10日間程度と見込んでいた。10月17日の停止から26日の起動までは9日で、見込みの範囲に収まった。交換部品をそろえられる時期などを踏まえて停止日を決めたと説明しており、計画停止の間には、原子炉格納容器の中の水素濃度を測る検出器の取り替えもあわせて行うとしていた。
東北電力はこの事象について、法令に基づいて国へ報告する必要がある事象には当たらないとしている。
給水を温める設備の逃し弁、錆などの異物がかみ込んだと推定
2号機は、原子炉で水を沸騰させてできた蒸気で直接タービンを回す方式の原発である。タービンを回し終えた蒸気は復水器で水に戻され、ポンプで再び原子炉へ送られる。この給水をあらかじめ温めておく設備が給水加熱器で、東北電力の説明では、タービンに送る蒸気の一部を使って原子炉への給水を加熱し、発電の効率を上げる役割を持つ。
逃し弁は、この給水加熱器の内部の圧力が上がり過ぎないようにするための弁である。普段はばねの力で押さえつけて全閉の状態を保ち、内部が過圧になったときにだけ開く。今回は、閉じているはずのこの弁から、ごく少量の水がにじみ出ていた。
弁は、可動部分の「弁体」が受け側の「弁座」に密着することで流れを止める。東北電力が10月26日に公表した点検結果の別紙では、弁体と弁座の両方に、幅4ミリ程度の浸食が写真付きで示されている。浸食は、高温・高圧の水がわずかに漏れ続けたことで生じたと推定している。
東北電力が推定した経過は2段階である。
まず、2023年に行った前回の分解点検の後、原子炉を起動する前に「給水系の浄化運転」をした際、弁にかかる圧力の変動や振動などで弁体と弁座の密着がわずかに弱まり、配管などからはがれた錆などの微細な異物が両者の間にかみ込んだ。浄化運転とは、給水の流量を変えながら配管の中を洗い流し、水質を改善する運転のことである。
次に、かみ込んだ異物のためにごく僅かな漏れが起き、その水が弁体と弁座を少しずつ削り、漏れの量が増えていった、とみている。
東北電力はこれまでも、原子炉を起動する過程で弁に生じる圧力変動や振動で異物がかみ込まないよう、「弁固定治具」を取り付けていた。今回の推定を受け、原子炉を起動する前の浄化運転の際にも治具を取り付けることにした。同じ種類のほかの弁では漏れは起きていないが、同じ対策をとる。
5月にも別の弁に金属片、定期検査以外の停止は今年2回目
1月からの定期事業者検査を除けば、2号機が設備の不具合を点検するために原子炉を止めるのは、2026年に入って2回目である。東北電力の発表によると、定期事業者検査中の5月15日、電気出力約50%で調整運転をしていた2号機のタービン建屋地下2階の復水器室で、湿分分離ドレンタンクの下流にある排水桝から、放射能を含む微量の湯気が出ているのが見つかった。弁を締め直しても止まらなかったため、翌16日に原子炉を止めた。
このときの原因も、弁座と弁体の間に挟まった異物だった。東北電力は、弁の中に薄い金属片が挟まって密閉性が落ちていたと公表し、金属片を取り除いて復旧させた。この弁は事前の試験で漏れが無いことを確かめていたが、最終的には調整運転で出力を上げ、高温・高圧になった状態で漏れを確かめる必要がある箇所だったと説明している。
今回の弁も、異物のかみ込みは原子炉を起動する前の段階で起きたと推定されている。東北電力は10月26日の発表で、起動の過程でも今回の弁の状態を監視するとしている。
東北電力は女川原発で起きた事象を、重要度に応じて区分ⅠからⅣまでの4段階に分けて公表している。10月15日の発表では、今回の計画停止は区分Ⅰのうち、法令と安全協定に基づく通報連絡の対象に当たる重要度の高い事象以外で原子炉を自動または手動で止めた場合に当たるとしていた。
2024年に13年ぶり再稼働、出力82万5000キロワット
東北電力の資料によれば、2号機は1995年7月に営業運転を始めた。定格電気出力は82万5000キロワットで、3号機と同じである。東日本大震災の後は長く止まっていたが、2024年10月29日午後7時に原子炉を起動し、同年11月15日午後6時に発電を再開した。東北電力は、震災で被災した沸騰水型軽水炉(BWR)として初めての再稼働だと説明し、社長コメントでは「13年ぶり」としていた。原子力規制委員会による使用前確認を経て、営業運転に戻ったのは2024年12月26日である。
再稼働の途中でも止まったことがある。発電再開に先立つ2024年11月3日、発電機の試験中に、原子炉内の中性子を測る検出器の校正用機器が途中で動かなくなり、原子炉を止めて点検した。
2026年に入ってからは、1月14日に発電を止めて第12回定期事業者検査に入った。検査の期間は約5カ月を予定し、燃料の取り替えや制御棒駆動機構、復水器の細管の点検などを行う計画だった。5月の湯気の確認と原子炉の停止は、この検査の調整運転の最中に起きている。最終の総合負荷性能検査を終えて営業運転に戻ったのは6月9日だった。
それから約4カ月で、今回の計画停止を迎えた。停止直前の2号機は、原子炉で生み出す熱を定格の水準でほぼ一定に保つ「定格熱出力一定運転」をしていた。東北電力の資料によると、2号機の定格熱出力は243万6000キロワットで、熱を一定に保つと海水温が低い冬には、より多くの電気を作ることができる。東北電力は今回、原子炉の出力を上げ、準備が整い次第発電を再開するとしており、10月28日時点で、東北電力のニュース一覧に発電再開の発表は出ていない。
