経済産業省は10月21日、「令和7年度電子商取引に関する市場調査」の結果を公表した。2025年の国内の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模は27.6兆円で、前年の26.1兆円から5.5%増えた。2023年の24.8兆円からの2年間では2.8兆円の拡大となる。企業間の電子商取引(BtoB-EC)は560兆870億円で前年比8.9%増、フリマアプリやネットオークションなど個人間の取引(CtoC-EC)は2兆6870億円で6.34%増と推計した。

物販・サービス・デジタルの3分野、いずれも増加

調査は1998年度から毎年行っており、今回が28回目。対象期間は2025年1月から12月までの1年間で、BtoC-ECを「物販系」「サービス系」「デジタル系」の3分野に分けて推計している。

国内の消費者向けEC市場規模(兆円)

010203024.82023年26.12024年27.62025年
出典: 経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査」
数値で見る(単位: 兆円)
項目兆円
2023年24.8
2024年26.1
2025年27.6

物販系分野は、ネットで商品を買う通信販売にあたる。市場規模は前年の15兆2194億円から6039億円増えて15兆8233億円、増加率は3.97%だった。サービス系分野は旅行や飲食店の予約、チケット購入、金融サービスなどで、8兆2256億円から8兆9362億円へ8.64%増えた。前年の伸び率9.43%よりは小さい。デジタル系分野は電子書籍や動画・音楽の配信、オンラインゲームで、2兆6776億円から2兆7985億円へ4.52%増え、前年の伸び率1.02%を上回った。

3分野の合計に占める割合は、物販系が約57%、サービス系が約32%、デジタル系が約10%となる。金額の伸びは物販系が6039億円、サービス系が7106億円で、増加額ではサービス系が物販系を上回った。

物販のEC化率は9.80%、品目で大きな差

調査が「EC化率」と呼ぶのは、すべての商取引の金額のうち電子商取引が占める割合である。BtoCでは物販系分野だけを対象に算出しており、2025年は9.80%だった。前年の9.78%からほぼ横ばいで、店頭も含めた物の買い物のうちネット経由は1割に届いていない。

品目別に見ると、差は大きい。

品目 2025年の市場規模 前年比 EC化率
食品、飲料、酒類 3兆3332億円 6.96%増 4.66%
衣類・服装雑貨等 2兆8941億円 3.43%増 24.08%
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 2兆8829億円 5.05%増 43.08%
生活雑貨、家具、インテリア 2兆6258億円 2.51%増 31.73%
書籍、映像・音楽ソフト 1兆8495億円 1.14%減 57.93%
化粧品、医薬品 1兆647億円 4.90%増 9.11%
その他 7989億円 2.47%増 2.08%
自動車、自動二輪車、パーツ等 3742億円 12.18%増 3.89%
物販系分野の合計 15兆8233億円 3.97%増 9.80%

表: 物販系分野のBtoC-EC市場規模とEC化率(2025年)

出典: 経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」

市場規模が最も大きいのは「食品、飲料、酒類」の3兆3332億円で、上位4品目がいずれも2.5兆円を超え、4品目の合計で物販系の約74%を占める。一方で食品のEC化率は4.66%にとどまり、食品の買い物の大半は今も店頭で行われている。EC化率が最も高いのは「書籍、映像・音楽ソフト」の57.93%で、前年の56.45%から上がったが、市場規模そのものは1.14%減って1兆8495億円となった。紙の本やディスクの販売全体が縮むなかで、ネットで買う割合が高まっている形だ。家電・パソコンは43.08%、生活雑貨・家具は31.73%、衣類は24.08%で、伸び率では自動車・二輪車の部品などが12.18%増と最も大きかった。

サービスは予約が伸び、旅行は2019年に届かず

サービス系分野で最も大きいのは旅行サービスの3兆7603億円で、前年比6.68%増えた。ただ、報告書は新型コロナウイルス感染症の影響が残っているとし、2019年の水準である3兆8971億円にはまだ戻っていないとした。

伸び率が大きかったのはチケット販売の15.13%増(8129億円)と飲食サービスの13.34%増(1兆984億円)。報告書はチケット販売について、ネット予約の比率が高くなったことで市場規模が伸びたと分析している。金融サービスは1兆944億円で10.66%増、理美容サービスは7995億円で9.49%増だった。理美容の伸びについては、まつげサロンなどの予約件数の増加を理由に挙げている。フードデリバリーサービスは前年に7.26%減っていたが、2025年は3.43%増の5628億円に転じた。

デジタル系分野では、オンラインゲームが1兆2759億円で全体の約半分を占める。前年は0.58%減だったが、2025年は1.65%増でほぼ横ばいの範囲にとどまった。伸びが大きかったのは有料動画配信で、4873億円から5538億円へ13.66%増えた。電子出版(電子書籍・電子雑誌)は6869億円で2.18%増、有料音楽配信は1340億円で8.65%増だった。

企業間取引は560兆円、EC化率45.9%

企業同士の電子商取引であるBtoB-ECは、2025年に560兆870億円となり、前年の514.4兆円から8.9%増えた。2023年は465.2兆円だった。EC化率は「その他」に分類される業種を除いて算出しており、前年の43.1%から45.9%へ上がった。企業間の取引の半分近くが電子商取引で行われている計算になる。

推計は、財務省の法人企業統計などから業種ごとの商取引全体の規模を出し、そこにEC化率を掛ける方法で行っている。業種別では、食品製造業のBtoB-ECが46兆3564億円で前年比11.5%増え、EC化率は86.1%に達した。報告書は、訪日客の増加を背景に外食やホテルの需要が増えたことと、原料高による販売価格の引き上げが業務用食品の市場を押し上げたとみている。繊維・日用品・化学は、業種全体の売上高が減るなかでBtoB-ECが51兆530億円と2.7%増え、EC化率は58.9%だった。

金額が最も大きいのは卸売業で、BtoB-ECは145兆742億円と12.6%増え、EC化率は43.9%だった。報告書は、受発注データの形式をそろえる電子データ交換(EDI)の標準化が卸売業で進んでいることを、EC化率が上がった要因と推察している。輸送用機械はBtoB-ECが91兆8769億円(10.3%増)でEC化率は92.6%、電気・情報関連機器は54兆4587億円(8.0%増)で78.5%と、製造業の一部では取引の大半が電子化されている。これに対し、鉄・非鉄金属は業種全体の売上高が2024年の66兆3521億円から2025年は62兆9683億円へ減り、EC化率が53.1%に上がってもBtoB-ECは33兆4164億円と0.5%減った。情報通信業のEC化率は25.3%、運輸業は26.1%で、業種による差はBtoCの品目と同じように大きい。

フリマアプリが個人間取引を押し上げ、越境ECも拡大

個人間の電子商取引(CtoC-EC)は、フリマアプリとネットオークションを対象に推計しており、2025年は前年の2兆5269億円から6.34%増えて2兆6870億円となった。報告書は、成長を主に支えているのはフリマアプリ市場の拡大だとしている。この数値には、実態として事業者間や事業者から個人への取引も一部含まれる。調査がCtoC-ECの推計を始めたのは2016年からである。

日本・米国・中国の3か国の間で、消費者が国境を越えてネットで買い物をする「越境EC」の規模も推計している。2025年はいずれの国の間でも増加した。

中国の消費者が日本の事業者から購入した額は2兆7560億円で前年比4.5%増、米国の事業者からは3兆3086億円で5.4%増だった。中国の越境ECの総額は6兆647億円になる。米国の消費者は日本の事業者から1兆6527億円、中国の事業者から1兆1690億円を購入し、総額は2兆8218億円だった。これに対し、日本の消費者が米国・中国の事業者から購入した額は合わせて4553億円(米国から4067億円、中国から486億円)にとどまる。日本の事業者が中国と米国の消費者に販売した額は合計4兆4087億円となり、日本の消費者が海外から買った額の9倍を超える。

国内のBtoC-ECは2年で2.8兆円増えたが、物販のEC化率は9.78%から9.80%とほぼ動いていない。ネットで物を買う割合は1割の手前にとどまっている。2025年の増加額は、旅行・飲食・チケットなどのサービス系の7106億円が物販系の6039億円を上回り、物販のなかではEC化率が4.66%と低い食品の2169億円が最も大きかった。