環境省は10月27日、群馬県中之条町で株式会社上里建設が計画する「美野原カントリークラブ特別高圧太陽光発電所」について、環境影響評価法に基づく計画段階環境配慮書への環境大臣意見を経済産業相に提出したと発表した。現在ゴルフ場として使われている約105ヘクタールに最大出力約9万4000キロワットの太陽光発電設備を置く計画で、意見は住居などへの反射光と、使い終えた太陽光パネルの処理への対策を求めた。影響を避けるか十分に減らせない場合は、パネルの削減を含めて事業計画を見直すよう求めている。群馬県知事も16日に意見を出し、豪雨や土砂災害への備え、病院や遺跡への配慮を求めた。
ゴルフ場約105ヘクタールにパネル 交流で最大9万4000キロワット
環境省の発表によると、事業者は上里建設で、発電所の出力は交流で最大9万4000キロワット程度、直流で最大15万1775キロワット程度。事業を実施する想定区域の面積は約105ヘクタールで、群馬県の公表資料では中之条町五反田と岩本の一部にあたる。環境大臣意見は、想定区域が「現在ゴルフ場として利用されている土地」で、周辺に複数の住居などがあると記している。
環境影響評価法は、規模が大きく環境への影響が著しくなるおそれのある事業を「第一種事業」とし、環境アセスメント(環境影響評価)の手続きを必ず行うよう定めている。太陽電池発電所の場合、環境影響評価法施行令は出力4万キロワット以上の発電所の設置を第一種事業とし、3万キロワット以上4万キロワット未満を、手続きが要るかどうかを個別に判定する「第二種事業」としている。今回の計画は交流の出力で第一種事業の基準の2倍を超える。
手続きは、まず事業者が経済産業相に配慮書を送り、経産相が環境相に意見を求める形で進んだ。群馬県によると、県は8月17日に配慮書を受理し、8月18日から9月17日まで県吾妻環境森林事務所、中之条町役場、事業者のホームページで公表・縦覧した。意見のある人は、9月17日までに事業者へ意見書を出すことができた。経産相から環境相への照会は9月14日で、環境相の意見提出はその43日後にあたる。施行令は、環境相が配慮書に意見を述べる期間を45日と定めている。
環境大臣意見 影響を避けられなければ「パネルの削減」も
環境大臣意見は、前段で再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、景観や生物多様性を含む環境への影響について「地域の懸念が顕在化している」と指摘した。2024年5月に閣議決定した第六次環境基本計画、2025年12月23日に関係閣僚会議が決めた「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」の「環境影響評価に関する審査の厳格化や指導の徹底等、実効性の強化を図る」との方針、太陽光発電事業などの環境影響評価に関する検討会が2026年6月にまとめた報告書を挙げ、こうした背景を踏まえて意見を述べるとしている。
総論では5項目を求めた。評価の項目を選ぶ際に、各論で示したもの以外にも自然環境、土地の安定性、景観などへの影響を含めて客観的・科学的に検討すること。現地調査を含めて情報を集め、事業区域や設備の配置に反映させること。環境保全措置は影響の回避と低減を優先し、別の場所で代わりの環境を整える「代償措置」を優先しないこと。各論の影響を回避または十分に低減できない場合は、設備の配置の再検討、事業区域の見直し、太陽光パネルの削減を含む事業計画の見直しを行うこと。関係機関と十分に調整し、地域住民に丁寧かつ十分に説明することである。
各論は2項目。一つは反射光で、周辺の住居や道路など住民の生活の場への影響を調査・予測・評価し、必要に応じて設備の周りに樹木を残すことや、反射を抑える防眩(ぼうげん)仕様のパネルを採用することで影響を回避または極力低減するよう求めた。もう一つは廃棄物で、2027年末までに施行予定の太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律(2026年法律第33号)や廃棄物処理法を守り、環境省のガイドラインを踏まえて、パネルの廃棄の抑制や使用済みパネルの再資源化に取り組む計画とするよう求めた。
群馬県知事は豪雨・地すべり・遺跡を指摘
群馬県では、県環境影響評価技術審査会が8月17日に諮問を受け、9月15日の会合で事業者から説明を聞いたうえで、10月7日に答申した。知事意見はこれを受けて10月16日に出された。国の意見が反射光と廃棄物の2点に絞ったのに対し、県の意見は地元の地形や施設に即した指摘が多い。
水については、1時間100ミリの集中豪雨に耐える施設とするよう求めた。配慮書が水環境を「必要な配慮を行えば影響の低減が可能」として配慮事項から外したことに対し、その見積もりの根拠を示すよう求めた。知事意見は、現状でもゴルフ場からの雨水の排水によって伊参(いさま)スタジオ付近で山林の崩落が起き、白久保地内の水田に影響が出ていると記し、パネルの設置で雨水が一か所に集まるなら、どれほどの調整池が要り、実際に置けるのかを事前に確かめるよう求めた。
地盤では、計画地が土砂災害警戒区域(地すべり)に重なっているとして、区域をなるべく避けるなど計画の見直しを検討するよう求めた。送電のために事業者が自ら引く電線(自営線)のルートについても、幅の狭い道路や周辺の地すべり地を挙げて妥当性の再検討を求め、地中に埋める方式に限らず架空線も比べるよう求めた。
このほか、計画区域から1000メートル以内に病院や福祉施設があるとして、工事車両、騒音・振動、反射光への配慮と災害時の避難への備えを求め、変電設備は低周波音を考えて病院からなるべく離すよう求めた。事業地の一部が周知の埋蔵文化財包蔵地「白久保遺跡」にあり、町史跡「嵩山(たけやま)城址」が隣接しているとして遺跡を壊さないよう求めたほか、「日本で最も美しい村」に加盟する伊参地区の景観への配慮、ゴルフ場の受電設備などにある変圧器のPCB(ポリ塩化ビフェニル)含有の分析と適正な処分も挙げた。
| 論点 | 環境大臣意見(10月27日) | 群馬県知事意見(10月16日) |
|---|---|---|
| 反射光 | 住居・道路への影響を評価し、樹木の残置や防眩パネルで回避・低減 | 周辺や伊香保温泉などの眺望に配慮し、回避・低減の方法を検討 |
| 廃棄物 | 太陽電池廃棄物再資源化法などを守り、パネルの廃棄抑制・再資源化 | 建設時と事業終了時の産業廃棄物、変圧器などのPCB処分 |
| 水・地盤 | 土地の安定性などを評価項目の選定で検討 | 時間100ミリの豪雨に耐える設計、地すべり区域の回避を検討 |
| 計画の見直し | 影響を避けられなければパネル削減を含めて見直し | 自営線ルートの再検討、警戒区域を避ける見直しの検討 |
| 地域への説明 | 地域住民へ丁寧かつ十分に説明 | 初期段階から住民の意見を聞き、説明会を様々な方法で広報 |
配慮書は「最初の書類」 次は経産相の意見と方法書
計画段階環境配慮書は、事業の位置や規模を検討する早い段階で、環境に配慮すべき事項を検討してまとめる書類で、環境アセスメントの最初の手続きにあたる。環境影響評価法は、事業者が配慮書を主務大臣に送って公表し、主務大臣が環境相に意見を求めると定める。発電所の主務大臣は経済産業相である。
今後は、経産相が環境大臣意見を勘案して上里建設に意見を述べる。施行令が定める期間は90日。事業者はその意見の内容を検討して事業計画を決め、どの項目をどのような方法で調査・予測・評価するかを記した方法書を作る。法律は方法書に、配慮書の内容と経産相の意見を踏まえることを求めている。その後、調査結果をまとめた準備書、最終的な評価書へと手続きが進む。環境大臣意見も、意見を受けた検討の経緯と内容を方法書以降の図書に記載するよう求めた。
発電所の環境アセスメントをめぐっては、既存の発電所の建て替えで配慮書の一部の調査を省ける新制度を定める政令が10月に閣議決定されている(発電所の建て替え、環境アセス配慮書の周辺調査を不要に 政令を閣議決定、27年4月施行)。メガソーラーの立地については自治体が独自に規制を強める動きもあり、千葉県は出力1000キロワット以上を知事の許可制とする条例案をまとめている(千葉県、メガソーラーを知事の許可制に 条例案の意見募集は24日締め切り 出力1000キロワット以上が対象、2027年10月施行へ)。
中之条町の計画は、国と県の意見がそろって方法書の段階へ移る。国はパネルの削減を含む見直しの可能性に触れ、県は地すべり区域や排水の具体的な検証を求めた。事業者が方法書でどの指摘をどこまで計画に反映させるかが、次の焦点になる。
