内閣府は10月27日、10月の月例経済報告を公表した。景気の基調判断は「景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」とし、8月と9月の判断にあった「自然災害」の文言を外した。個別項目では輸出の判断を「このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる」に改めた一方、企業の業況判断は「全体としては改善の動きがみられる」とした。国内企業物価と消費者物価の判断も書き換えた。

基調判断、3〜7月と同じ文面に

月例経済報告は、内閣府が毎月、消費・投資・生産・雇用・物価などの統計を項目ごとに点検して景気の判断をまとめ、関係閣僚会議に示す報告だ。冒頭の「基調判断」が景気全体の見方を一文で示し、その下に個人消費や輸出など項目ごとの判断が並ぶ。

10月の基調判断は、9月の「中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある」から「自然災害」を除いた。関係閣僚会議資料はこの変更を「表現変更」と記している。同資料が載せた判断の推移によると、2026年2月は「米国の通商政策の影響が残るものの、緩やかに回復している」、3〜7月は「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」、8〜9月は「中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある」だった。10月は3〜7月と同じ文面に戻った。

「自然災害」を外した背景について、閣僚会議資料は令和8年熊本地震の影響を1ページを割いて分析した。地震の直後に輸送機械産業などで一時的な稼働停止があったことから、8月の全国の鉱工業生産は「一時的に弱い動き」になったとし、被災地の工場の再開が進むにつれて9月以降は生産活動も回復する見込みだと記した。発災直後に落ち込みが大きかった外食需要も「9月以降はおおむね回復したとみられる」としている。

報告本文によると、8月の鉱工業生産指数は前月比2.4%低下した。製造工業生産予測調査では、9月は3.2%、10月は3.1%の上昇が見込まれている。

政府の政策態度の記述からは、9月にあった熊本地震の支援パッケージを「速やかに実行する」との一文と、中東情勢への当面の措置のうち「電気・都市ガス料金の負担軽減策等」の記載が外れた。10月の本文に残った当面の措置は、燃料油に対する緊急的な激変緩和措置だけとなっている。電気・ガスの記載を外した理由は報告に書かれていない。熊本地震の支援パッケージについては、閣僚会議資料が「引き続き、…着実に実行する」としている。

個別項目の判断、4項目を書き換え

項目ごとの判断のうち、10月に文言を変えたのは輸出、企業の業況判断、国内企業物価、消費者物価の4項目だった。個人消費、設備投資、生産、雇用情勢などは9月と同じ表現を保った。

項目 9月 10月
個人消費 持ち直しの動きがみられる 持ち直しの動きがみられる
設備投資 持ち直している 持ち直している
住宅建設 総じて横ばい 総じて横ばい
公共投資 底堅く推移している 底堅く推移している
輸出 持ち直しの動きがみられる このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる
生産 総じてみれば持ち直しの動きがみられる 総じてみれば持ち直しの動きがみられる
企業の業況判断 おおむね横ばい(先行きはやや慎重) 全体としては改善の動きがみられる
雇用情勢 改善の動きがみられる 改善の動きがみられる
国内企業物価 このところ上昇テンポが鈍化している このところ横ばいとなっている
消費者物価 緩やかに上昇している このところ上昇している
月例経済報告の主な個別項目の判断(9月と10月)出典: 内閣府「月例経済報告」(令和8年9月・10月)

輸出、米国・EU向けも「足踏み」

輸出の判断は、9月の「持ち直しの動きがみられる」から「このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる」に変わった。地域別の記述を9月と比べると、変化の中身が分かる。9月は「足踏み」とされたのはアジア向けだけで、米国とEU向けは「持ち直しの動きがみられる」とされていた。10月はアジア、米国、EU向けがそろって「このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる」となった。

一方、それ以外の地域向けは、9月の「中東地域向けが減少してきた中で、下げ止まりの兆しがみられる」から、10月は「持ち直している」に変わった。輸出の先行きについて、報告は「中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある」としている。

貿易・サービス収支は9月に続いて「赤字となっている」とした。ただ、中身の記述は変わった。9月の報告は7月の貿易収支について、輸出金額の増加が輸入金額の増加を上回って赤字幅が縮小したと書いていた。10月の報告は8月について、輸出金額の減少が輸入金額の減少を上回ったことから赤字幅が拡大したとし、サービス収支の赤字幅も拡大したと記した。輸入では、米国からの鉱物性燃料が「このところ」増えているとの記述が9月から続いている。

企業の業況判断は「改善の動き」、短観を反映

企業の業況判断は、9月の「おおむね横ばいとなっている。ただし、先行きについてはやや慎重な見方」から、10月は「全体としては改善の動きがみられる。ただし、中東情勢の影響を引き続き注視する必要がある」に改めた。

判断の根拠に挙げたのは、9月調査の日銀短観だ。報告によると、「最近」の業況判断DIは「全規模全産業」で前期差プラス3となり、業種別では「全規模製造業」がプラス5、「全規模非製造業」がマイナス1だった。9月の報告が引いた6月調査では、全規模全産業が前期差0、製造業がプラス2、非製造業が0だった。短観の詳しい内容は日銀9月短観、大企業製造業の業況判断はプラス24 6月調査のプラス22から上向き3か月前の予測プラス17も上回る 中小企業の借入金利「上昇」超は61から70へで伝えている。

閣僚会議資料は、企業の景況感について「世界的なAI・半導体需要の強さを背景に、製造業を中心に改善の動きが顕著」と分析した。生産機械にはこれまでの納品ペースを上回る受注が寄せられ、機械受注の手持ち月数が上昇傾向にあるとして、供給力の強化が重要だと記した。

企業収益の見通しも、短観の調査回が替わって数字が変わった。報告が引いた9月短観では、2026年度の経常利益は上期が前年比9.4%増、下期が4.8%減の見込みだった。9月の報告が引いた6月短観では、上期6.4%減、下期6.6%減の見込みだった。ただし、12月時点の業況を示す「先行き」は「最近」に比べやや慎重な見方となっており、景気ウォッチャー調査(9月)の企業動向関連DIは現状判断、先行判断ともに低下した。

消費者物価「このところ上昇」、食料品の値上がりを指摘

消費者物価の判断は「緩やかに上昇している」から「このところ上昇している」に、国内企業物価は「このところ上昇テンポが鈍化している」から「このところ横ばいとなっている」に変わった。

報告によると、物価の基調を見る「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は、9月に前月比0.5%上昇し、前年比では2.4%上昇した。9月の報告が示した8月の値は、前月比0.3%、前年比1.9%の上昇だった。「生鮮食品を除く総合」の前月比は8月の0.1%から9月は0.5%に、「総合」の前月比は8月の0.0%から9月は0.4%になった。一方、9月の国内企業物価は前月比0.3%下落した。

閣僚会議資料は、消費者物価は政策効果もあって全体として抑えられているものの、食料品価格は高い伸びが続いていると指摘した。ビッグデータの分析では9月後半から価格上昇が加速しており、「中東情勢の影響による価格転嫁が進んできたことが窺われる」とした。海外との比較では、日本はエネルギー価格の抑制策で家計が直面する物価上昇率を海外より低く抑えているとする一方、食料品価格の上昇が顕著で、非耐久財を中心に家計消費が抑えられていることを「課題」に挙げた。

家計の物価見通しでは、大幅な上昇を予想する世帯が増えた。消費動向調査(二人以上の世帯)で1年後の物価が10%以上上がると予想する世帯の割合は、9月に19.4%となり、8月の18.1%から増えた。

個人消費・雇用は据え置き、先行きは中東情勢と金融市場

個人消費は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。報告によると、4〜6月期の国内総生産(GDP)2次速報で民間最終消費支出の実質値は前期比0.0%で、8月の総消費動向指数(CTIマクロ)の実質値は前月比0.1%増、商業動態統計の小売業販売額は0.9%減だった。閣僚会議資料は、個人消費は所得の増加に支えられ持ち直しているが「その伸びは緩やか」とし、予想物価の上昇が消費者の景況感を抑えていると分析した。

雇用情勢も「改善の動きがみられる」で変わらない。8月の完全失業率は2.5%で、前月から上昇した。日銀短観の雇用人員判断DIは全産業でマイナス38と、6月調査のマイナス37から不足超幅が広がった。住宅建設は「総じて横ばい」のままで、8月の新設住宅着工戸数は年率75.3万戸だった(新設住宅着工、2026年8月は6万3974戸で5か月連続の増加 季節調整済み年率換算は75万3108戸で2か月連続の減少 年率は2025年の年間74万667戸を上回る)。

金融市場について、報告は9月30日から10月23日までの動きとして、日経平均株価が6万6700円台から7万600円台まで上昇した後、6万2600円台まで下落したと記した。円相場は1ドル=157円台から158円台まで円安方向に動いた後、156円台まで円高方向に戻り、長期金利(新発10年物国債利回り)は2.8%台から3.1%台で推移した。

先行きについて報告は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるとしたうえで、「中東情勢の影響を注視する必要がある。また、金融資本市場の変動の影響などに注意する必要がある」とした。