総務省は10月27日、格安SIM事業者などMVNO(仮想移動通信事業者)に電気通信事業法と電波法をどう当てはめるかを示す「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」(MVNOガイドライン)の改定案を公表し、意見募集を始めると発表した。自前の無線網を持つ携帯大手(MNO)に対して開放を促す機能の一覧に、第5世代移動通信(5G)の「SA方式」の網を格安SIM事業者が使うための「5GC連携機能」を加える。意見は10月28日から11月26日まで受け付け、結果を踏まえて速やかに改定する。

改定は、情報通信審議会が9月4日にまとめた「ネットワーク環境の変化を踏まえた接続政策等の在り方」第一次答申の指摘を受けたもの。あわせて、格安SIM事業者が大手に支払う接続料の算定方法の一部も見直す。

5G本来の方式、格安SIMは使えず

5Gの網には「NSA方式」と「SA方式」がある。指針は、データ伝送の接続料について4Gと5G(NSA方式)、5G(SA方式)の費用と需要を一体で算定するとしており、両者を区別して扱っている。第一次答申の概要は、SA方式では網を用途ごとに切り分ける「スライシング」などにより、超高速、多数接続、超低遅延といった5G(SA方式)ならではのサービスが可能になると位置付けている。SA方式の中核設備(コアネットワーク)は「5GC」と呼ばれる。

改定案は注記で、2024年9月の「接続料の算定等に関する研究会第八次報告書」を引き、MNOはすでに5G(SA方式)の提供を始めていると記した。そのうえで、少なくとも現行のMVNOサービスと同じ自由度や柔軟性を保った形で、機能の開放が可能な限り速やかに実現されることが望ましいとしている。

第一次答申の概要によると、5G(SA方式)の網の開放については、①大手が完成したサービスを卸売りする「L3接続相当(サービス卸)」②格安SIM事業者が自前の中核設備を大手の網につなぐ「L2接続相当」③網の切り分けやAPIを卸す「ライトVMNO」④無線設備を共用する「フルVMNO」の4形態で、事業者間の協議が続いている。答申は、このうちL2接続相当について、要件を満たせば速やかに、大手に開放を義務付ける「アンバンドル機能」に位置付けるのが適当とする従来の考え方を示したうえで、当面は協議を促す段階の機能として指針に書き込み、総務省が大手から協議の状況と開放の時期について四半期ごとに報告を求めるのが適当だとした。

「開放を促進すべき機能」とは

MVNOガイドラインは2002年6月に策定された。大手の網を借りる事業者の参入を促し、携帯市場の競争を通じて多様で安いサービスを利用者に届けること、電波を公平かつ能率的に使うことを目的に掲げる。

指針は、大手が開放すべき機能を2段階に分けている。上の段の「アンバンドル機能」は、①他の事業者から要望がある②技術的に可能③大手に過度な経済的負担を与えない④必要性・重要性の高いサービスに係る――の4要件をすべて満たす機能で、接続料を定めなければ接続約款の変更命令の対象になり得る。現在は音声伝送交換、データ伝送交換、ショートメッセージ伝送交換の3機能が当たる。

下の段の「開放を促進すべき機能」は、4要件のすべては満たさないものの、④を満たし、要望があり、②と③も満たす可能性がある機能だ。接続や卸による提供が望ましいとして、事業者間の協議を後押しする位置付けになる。指針は、総務省がこの2つの一覧を定期的に見直し、その際は意見公募を行うなど手続きの公正性と透明性の確保に努めると定めている。今回の意見募集はこの見直しの手続きに当たる。

改定案では、開放を促進すべき機能から「携帯電話のEメール転送機能」と「パケット着信機能」を削る。総務省の資料は、既に別の方法で実現しており、今後も格安SIM事業者からの要望が見込まれないためだと説明している。そのうえで5GC連携機能を加え、一覧は次の5機能になる。

機能 改定案での扱い
料金情報提供機能 存続
端末情報提供機能 存続
HLR/HSS連携機能 存続
リモートSIMプロビジョニング(RSP)機能 存続
5GC連携機能 新たに追加
携帯電話のEメール転送機能 削除
パケット着信機能 削除
「開放を促進すべき機能」の改定案での扱い出典: 総務省「MVNOガイドライン」改定案(別紙2)

想定は「ローミング」と「Proxy」の2方式

改定案は5GC連携機能を、格安SIM事業者と大手の5GCを5Gの標準のつなぎ口「SBI(Service Based Interface)」で連携させ、格安SIM事業者が大手の5G無線網を使ってSA方式のサービスを実現するための機能と定義した。方式は2026年10月時点で2つを想定する。これまでの事業者間協議で実現可能とされたもので、提供はこの2方式に限らないとしている。

「ローミング方式」は、国際ローミングの標準化された方式に沿って、加入者の契約情報や端末の認証情報を持つ「UDM」などの主要な機能を格安SIM事業者が自ら持つ。SIMカードや電話番号も格安SIM事業者が用意し、大手からの独立性が高い。音声通話も格安SIM事業者が自前の設備を用意する。

「Proxy方式」は、大手が持つUDMなどを格安SIM事業者が活用し、制御信号の中継装置を介して大手の網とつなぐ。SIMと電話番号は大手が提供し、音声は大手の設備を借りる(音声卸)。総務省の資料は、ローミング方式より簡易かつ低コストで導入できるとしている。いずれの方式でも、データ通信の提供と回線ごとの帯域の制御は格安SIM事業者が担う。

項目 ローミング方式 Proxy方式
SIM・電話番号 格安SIM事業者が提供 大手が提供
データ通信 格安SIM事業者が提供 格安SIM事業者が提供
回線ごとの帯域制御 格安SIM事業者 格安SIM事業者
音声通話 格安SIM事業者が設備を用意 大手の設備を利用(音声卸)
特徴 主要機能を自ら持ち独立性が高い 大手の機能を使い簡易・低コスト
5GC連携機能として想定される2方式の違い出典: 総務省「MVNOガイドライン改定案の主な内容」(別紙1)

第一次答申の概要は、ローミング方式に当たる「フルMVNO方式のL2接続相当」と、一部の事業者間で協議されている格安SIM事業者の負担が軽い別の方式の両方について、概要を示し名称を付けたうえで、まとめて開放を促進すべき機能に位置付けるよう求めていた。改定案はこの指摘に沿った形になっている。

接続料の算定、資産の割り振りをそろえる

もう一つの見直しは、格安SIM事業者が大手に支払う接続料の算定に関わる。接続料は、大手の設備の費用を音声とデータなどのサービスに割り振って算出する。その際の割り振りの基準(配賦基準)として、改定案は2点を整理した。

1点目は「ネットワーク資産額比」。機械設備、空中線設備、市内・市外線路設備、土木設備、海底線設備を「ネットワーク資産」とし、これを音声とデータに分けて加重平均した比率で、建物や電力設備などの費用を割り振る。改定案は、リースで調達したこれらの設備もネットワーク資産に含めると明記した。

2点目は「回線数比」。基地局の鉄塔や顧客・料金のシステムなどの費用の割り振りに使う。改定案は、報告規則に基づいて大手が報告する携帯電話の契約数について、算定の基礎となる事業年度の年度末と、その前の年度末の数を平均して使うと定めた。

第一次答申の概要によると、モバイル接続料の追加検証で、大手3社の間でリース資産の扱いと回線数の数え方に違いがあることが分かった。回線数については、データ通信が使えない回線を「音声専用」とするか「音声+データ」とするか、期首と期末の回線数を平均するかといった点で各社の扱いが分かれていた。答申は、リース資産をネットワーク資産額比の算出に含め、回線数は2025年度以降の接続会計から期首・期末の平均による稼働回線数で統一するのが適当としていた。

11月26日まで意見募集

意見は、電子政府の総合窓口(e-Gov)のパブリック・コメント欄にある意見提出フォームのほか、郵送でも受け付ける。締め切りは11月26日必着で、郵送は当日の消印まで有効。資料はe-Govに掲載されるほか、総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課で閲覧・配布する。

同じ第一次答申では、音声の接続料について、事業者が互いに支払わない「ビル&キープ方式」を原則とする方向も打ち出された(通話の「接続料」廃止へ 通信会社が互いに払い合う仕組み、2031年度をめどに全社一律で終了 情報通信審議会が答申)。答申は、この方式の原則化にあわせ、基地局の空中線設備の費用をトラフィックの比率で割り振る方法への見直しも含めて、引き続き検討するのが適当としている。

答申は、網の切り分けを使った超高速・多数接続・超低遅延のサービスが可能になった際のデータ接続料の在り方についても、具体化に向けて検討を続けるのが適当だとした。今回の改定案はその手前の段階として、格安SIM事業者がSA方式の網に入る入り口を指針に書き込むものになる。