環境大臣は11月2日、石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿健康被害救済法)に基づき、独立行政法人環境再生保全機構(機構)から申し出のあった216件について医学的判定を行い、結果を機構に通知した。療養中の人が出した医療費等の申請159件と、亡くなった人の遺族が出した特別遺族弔慰金等の請求57件で、計105件を「石綿を吸入することにより指定疾病にかかった」と判定し、38件はそうではないと判定した。残る73件は判定できず、機構が申請者や医療機関に資料を求めて改めて判定する。環境省が同日発表した。

療養中の人の申請159件、86件を石綿起因と判定

救済法は、石綿(アスベスト)を吸い込んだことで病気になった人とその遺族に、医療費や弔慰金などを給付する制度で、2006年3月27日に施行された。対象の病気(指定疾病)は、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の4つ。申請を受けた機構が、病気が石綿によるものかどうかの医学的な判断を環境大臣に申し出て、大臣が判定する仕組みになっている。

環境省によると、今回の判定に関わる審議は、石綿健康被害判定小委員会が9月1日から10月13日までに書面で5回行い、10月22日に第264回の会合を開いた。

今回、療養中の人の申請159件の内訳は、中皮腫91件、肺がん58件、石綿肺3件、びまん性胸膜肥厚7件だった。このうち石綿の吸入でかかったと判定したのは86件で、中皮腫66件、肺がん17件、びまん性胸膜肥厚3件。石綿肺は0件だった。かかったのではないと判定したのは24件(中皮腫3件、肺がん14件、石綿肺3件、びまん性胸膜肥厚4件)、判定できずに保留としたのは49件(中皮腫22件、肺がん27件)だった。

病名 判定件数 石綿起因と判定 石綿起因ではない 保留
中皮腫 91 66 3 22
肺がん 58 17 14 27
石綿肺 3 0 3 0
びまん性胸膜肥厚 7 3 4 0
計 159 86 24 49
療養中の人の医療費等の申請に係る医学的判定(11月2日分、件)

出典: 環境省「石綿健康被害救済法に基づく医学的判定の状況」

病名で見ると差が大きい。中皮腫は91件のうち66件が石綿起因と判定されたのに対し、肺がんは58件のうち17件にとどまり、27件が保留、14件が石綿起因ではないと判定された。

なお、判定件数には、これまで判定できないとされ、資料を追加で受けて改めて判定したものが含まれる。今回は医療費等で42件、特別遺族弔慰金等で17件の計59件がそれにあたる。

遺族の請求57件、未申請のまま亡くなった人が56件

特別遺族弔慰金等は、救済の申請をしないまま指定疾病で亡くなった人の遺族に支給する給付だ。今回の57件のうち56件は、法の施行以降に申請しないまま亡くなった人に係るもので、1件は施行前に亡くなった人に係るものだった。

施行後に亡くなった人の56件の内訳は、中皮腫20件、肺がん32件、石綿肺2件、びまん性胸膜肥厚2件。石綿の吸入でかかったと判定したのは19件(中皮腫10件、肺がん8件、びまん性胸膜肥厚1件)、かかったのではないと判定したのは13件、保留は24件(中皮腫9件、肺がん15件)だった。施行前に亡くなった人の1件はびまん性胸膜肥厚で、石綿の吸入でかかったのではないと判定された。

遺族の請求のうち中皮腫については、死亡診断書などに死因として「中皮腫」の記載があれば、機構が大臣への医学的判定の申し出をせずに認定している。今回判定した中皮腫20件は、機構が大臣に判定を申し出たものだ。

機構の9月末の集計(暫定値)では、未申請のまま亡くなった人の遺族の請求は累計で2694件が認定され、1180件が不認定となった。環境省が判定中のものが20件、判定保留で追加資料の提出を求めているものが44件ある。取り下げは108件で、機構は主な理由として「労災保険等支給」「優先請求順位者が別に存在」「医学的資料が整わない」を挙げている。請求できるのは、亡くなった人と生計を同じくしていた遺族で、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順に優先される。

判定の累計は医療費等で1万9243件

環境省が添えた資料によると、医療費等の申請に係る医学的判定は、これまでの累計で1万9243件になった。このうち1万5501件を石綿の吸入でかかったと判定し、3290件はそうではないと判定した。病名別の累計では中皮腫が1万3767件と最も多く、肺がん4031件、びまん性胸膜肥厚852件、石綿肺593件と続く。施行後に未申請のまま亡くなった人の遺族の請求では、累計3966件を判定している。

機構が10月26日に公表した9月末時点の集計(暫定値)では、制度が始まってからの受付は2万8944件。内訳は療養中の人の申請が2万213件、未申請のまま亡くなった人の遺族の請求が4073件、施行前に亡くなった人の遺族の請求が4658件だった。認定は療養中の人が1万5452件、未申請死亡者の遺族が2694件、施行前死亡者の遺族が3692件。療養中の人の申請では、9月末の時点で環境省が判定中のものが89件、判定保留で追加資料の提出を求めているものが106件あった。

機構が9月30日に公表した2025年度の統計では、申請・請求は1287件で前年度より3.7%減り、認定は964件で18.9%減った。認定のうち療養中の人は786件だった。救済給付の支給総額は47億4736万5000円で、前年度より8.7%減った。

療養手当は月10万3870円、遺族には280万円

認定を受けた療養中の人には、医療費の自己負担分と、療養手当として月10万3870円が支給される(機構の説明、2025年4月1日現在)。療養手当は2、4、6、8、10、12月に前月と前々月の分をまとめて払う。認定を受けた人が病気で亡くなると、葬祭を行う人に葬祭料19万9000円が出る。それまでに受け取った医療費と療養手当の合計が280万円に満たなければ、差額が救済給付調整金として遺族に支給される。

申請をしないまま亡くなった人の遺族には、特別遺族弔慰金280万円と特別葬祭料19万9000円が支給される。請求の期限は、いずれも10年延長されている。施行前に中皮腫・肺がんで亡くなった人の遺族は2032年3月27日まで、施行後に未申請のまま亡くなった人の遺族は死亡の翌日から25年以内に請求できる。ただし2006年3月27日から2008年11月30日までに中皮腫か肺がんで亡くなった人の遺族は、2033年12月1日までとなる。石綿肺とびまん性胸膜肥厚は2010年7月1日に指定疾病に加わったため、それより前に亡くなった人の遺族の期限は2036年7月1日となっている。

機構は今年8月、令和8年熊本地震で被災した人について、申請・請求の期限を延ばすと発表した。延長を申し出た人について、被災の状況を考慮して2027年1月27日までの範囲で個別に期日を指定し、期限を延ばす。

機構の9月末の集計では、療養中の人の申請の取り下げが累計1219件あり、主な理由として「労災保険等支給」と「医学的資料が整わない」を挙げている。

機構はホームページで、オンライン申請と問い合わせの窓口を案内している。