会計検査院は10月22日、東日本大震災の復興交付金で造成した基金を取り崩して実施する事業(復興交付金基金事業)に関し、地方自治体に交付された震災復興特別交付税の精算が適切に行われていなかったと公表した。岩手県と15市町村に計17億9261万円が過大に交付されていた。事業費の実績額が確定した後も、交付税の算定に使う地方負担額を見込額のままにしていたことなどが原因で、検査院の指摘を受けた総務省は、9月までに8億4403万円余りの減額調整を行った。残る9億4858万円余りは、4市町村との間で令和8年度以降に減額することを確認した。総務省はあわせて全国の道府県と市町村に通知を出し、精算の点検とその実施状況の定期報告を求めた。結果は「令和7年度決算検査報告」に「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として載る。

復興事業の地元負担を算定に入れる交付税

震災復興特別交付税は、総務省が平成23年度から道府県と市町村に交付している特別交付税である。東日本大震災に係る災害復旧事業、復興事業などの実施に特別の財政需要があることを考慮して配る。根拠は地方交付税法と、震災直後の平成23年に制定された「東日本大震災に対処する等のための平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律」である。総務省は毎年度、算定の対象とする事項を省令(以下「復興特交省令」)で定めており、その一つに、国の補助金を受けて実施する事業の経費のうち自治体が負担する額(地方負担額)がある。

その補助金の一つが東日本大震災復興交付金である。被災地の復興に必要な事業を記した「復興交付金事業計画」に基づく事業に充てるため国が交付するもので、事業は平成23年度から令和4年度まで実施された。被災した漁業集落で地盤を嵩上げし、生活基盤や防災安全施設を整える漁業集落防災機能強化事業など40分類の基幹事業で構成される。市町村は単年度事業か、交付金で基金を造成して複数年度にわたり取り崩す基金事業かを選ぶが、ほとんどが基金事業として実施された。

平成23年度から令和6年度までに震災復興特別交付税の算定の基礎となった基金事業の地方負担額は計7458億9516万円余りで、このうち復興交付金基金事業の分が計6654億6345万円余りと大半を占める。復興交付金基金事業は令和4年度までに終了しており、検査院は、これに係る交付税の精算は完了している状況にあると考えられたことから、実際に精算されているかを調べた。

見込額で受け取り、実績額に直していなかった

交付税の額は毎年9月と3月に決める(平成23年度は24年3月)。自治体は事業の進み具合に合わせ、経費の実績額か見込額を算定資料に書き、市町村の分は都道府県の審査を経て総務省に届く。見込額を使った場合は、実績額が確定した後の算定時期に実績額へ修正して精算する決まりで、交付税が多すぎたと分かれば、総務大臣が後の交付額から差し引く(減額調整)。

検査院は、平成23年度から令和6年度までに岩手、福島、茨城、千葉の4県と4県内の43市町村に交付された復興交付金基金事業に係る震災復興特別交付税計2646億9492万円余りを対象に、完了実績報告書や算定資料を確かめた。

その結果、岩手県と13市町村は、この間に算定額計697億2295万円余りを報告して同額の交付を受けていたが、事業の完了などで地方負担額の実績額が確定した後も、算定資料の地方負担額を見込額のままにするか、誤った額に修正していた。過大に交付されていたのは計17億5538万円余りに上る。

最も多かったのは福島県新地町である。町は復興交付金基金事業を平成23年度から令和3年度まで実施し、令和6年度までに算定額計66億4372万円余りの交付を受けていた。令和5年2月までに事業費が確定して地方負担額の実績額も決まっていたのに、その後の算定資料で見込額のままにするなどしていたため、5億5279万円余りが過大に交付されていた。町は検査院に、長期間続く事業の算定事務で精算への影響についての理解が不足し、金額の根拠を整理していなかったと説明した。

県 県・市町村 過大交付額(千円)
岩手県 岩手県 179,811
岩手県 大船渡市 9,118
岩手県 田野畑村 331,518
岩手県 野田村 7,938
福島県 白河市 1,981
福島県 相馬市 14,796
福島県 南相馬市 142,642
福島県 矢吹町 3,307
福島県 矢祭町 1,490
福島県 広野町 631
福島県 富岡町 300,155
福島県 新地町 552,799
茨城県 潮来市 208,316
千葉県 山武市 886
計 14団体 1,755,388
見込額のまま精算されず過大に交付されていた震災復興特別交付税出典: 会計検査院「復興交付金基金事業に係る震災復興特別交付税の精算について」(令和8年10月22日)

算定の単位が多すぎて根拠を追えず

なぜ精算できなかったのか。検査院によると、14団体の算定資料では、基幹事業を地区ごとに細かく分けた個別事業ごとに算定の単位が設けられ、さらに長く続く事業では年度ごとの事業計画に応じた単位が加わっていた。このため算定の単位の数は、交付税の算定が行われた基幹事業の数に比べて多数に上った。

単位が多いと、確定した実績額をどの単位に反映させればよいかの対応が分かりにくくなる。事業計画が途中で変わることもある。検査院は、精算を正しく行うには単位ごとに地方負担額の算出根拠を整理し、交付税の担当部局で確実に引き継ぐ必要があったとした。しかし14団体では根拠が整理されておらず、実績額をどの単位に当てればよいか判断できないまま見込額で据え置くなどしていた。総務省も、根拠の整理を自治体に促す取り組みをしていなかった。

もう一つの漏れは、事業で取得した土地の売却収入である。漁業集落防災機能強化事業などは、事業で取得した土地などを完了後に売却などで処分することが想定されている。処分収入が入れば地方負担額は減り、交付税の算定額も過大になる。検査院が4県43市町村の処分状況を調べたところ、岩手県釜石市(3602万円余り)、福島県いわき市(93万円余り)、新地町(27万円余り)の3市町が処分制限のかかる財産を有償で譲渡して収入を得ていたのに精算しておらず、計3722万円余りが過大に交付されていた。3市町は、処分収入が出たときに精算が要ることを認識しておらず、事業の担当部局との間で情報が共有されていなかったと説明した。総務省も、このような場合に精算が必要だと明確に示していなかった。

検査院は、自治体の理解不足や総務省の確認、4県の審査が十分でなかったことに加え、総務省が根拠の整理を促す必要性を認識していなかったこと、処分収入が出た場合の精算の必要性を明示していなかったことを原因に挙げた。

総務省、全国に点検と報告を求める

検査院の指摘を受け、総務省は三つの処置をとった。

一つ目は過大分の回収である。令和8年9月の算定時期までに、岩手県と15市町村(見込額の事態の13市町村と、処分収入の事態の3市町から重複する新地町を除いた数)に精算させ、8億4403万円余りの減額調整を行った。自治体の算定額が過大算定額を下回ると一度に全額を差し引けず、残りは次の算定時期に回される。今回も減額しきれなかった9億4858万円余りがあり、総務省は4市町村との間で、令和8年度以降に復興特交省令などに基づいて減額することを確認した。二つの額を合わせると17億9261万円余りになる。

二つ目は周知である。9月に都道府県などへ通知を出し、算定の単位ごとに地方負担額の算出根拠を整理したうえで実績額に修正する必要があることを知らせた。事業完了後に処分収入が出た場合は精算すること、交付税の担当部局と事業の担当部局が財産の処分状況を共有することも明確にした。

三つ目は点検の仕組みである。同じ通知で全国の道府県と市町村に、復興交付金基金事業に係る交付税が正しく精算されているかを点検するよう求めた。算定資料の確認表に新たな項目を設けて点検の予定時期を書かせ、実施状況を定期的に報告させる。予定時期が来ても点検していない単位があれば、都道府県が市町村に状況を確かめるよう助言した。

検査院は10月6日にも、国の補助金の使われ方について橋・トンネル修繕の補助金149億円分、制度の目的に沿わず 会計検査院が15府県88事業主体を指摘とする検査結果を公表している。

検査を受けていない自治体の点検結果を示すべきだ

震災復興特別交付税は、被災自治体の負担を国が税財源で埋める仕組みであり、その原資は国民全体の負担である。多く払ったものを取り戻すのは当然で、総務省が減額調整に着手したことは評価できる。

ただ、今回の検査で調べたのは4県と43市町村に限られる。復興交付金基金事業が終わってなお、検査を受けた4県43市町村の計47団体のうち、16団体で精算漏れが見つかった。原因も、算定単位の多さや担当者の引き継ぎといった、特定の自治体に限らない事務の仕組みにある。検査の対象外となった被災自治体でも同じことが起きていないとは言えない。

総務省は全国に点検と定期報告を求めた。その仕組みを整えた以上、点検でどれだけの精算漏れが見つかり、いくら減額したのかを集計して公表すべきだ。震災から15年を経て、復興財源の締めくくりを確かめられるのはこの点検の結果である。減額が未完了の9億円余りについても、いつまでに差し引き終えるのかを示す必要がある。