内閣府政策統括官(防災担当)、消防庁、気象庁は10月29日、11月5日(木)午前10時ごろに実施する緊急地震速報の全国的な訓練について、参加する機関を取りまとめて公表した。11月5日は法律で定める「津波防災の日」で、国連総会が定めた「世界津波の日」でもあり、訓練はその取り組みの一環として行う。全都道府県(47団体)と1740市区町村の計1787団体が参加し、国の機関は中央省庁24府省庁と地方支分部局等556組織、民間企業・各種団体等は738か所に上る。

当日は気象庁が午前10時ごろに訓練用の緊急地震速報(訓練報)を配信し、受け取った自治体や学校、企業が防災行政無線や館内放送で知らせる。参加者はそれを合図に、安全な場所へ移るなど身を守る行動をとる。訓練報はテレビ・ラジオの放送や、携帯電話の緊急速報メール(エリアメール)では流れない。

午前10時に気象庁が訓練報を配信

気象庁の訓練特設ページによると、訓練報の配信時刻は11月5日午前10時00分ごろ。配信先は、国の機関、全国瞬時警報システム(Jアラート)を通じた地方公共団体、民間の緊急地震速報を提供する配信事業者のうち、訓練への参加を計画している機関や団体だ。訓練報を配信する事業者は14事業者で、前年(2025年)の訓練と同じ数になる。

訓練を実施する機関は、訓練報を受けて防災行政無線、建物などの館内放送、専用受信端末などで知らせる。参加者はその報知にあわせ、安全な場所への移動など身を守る行動訓練を行う。気象・地震活動の状況によっては配信を急きょ中止する場合があり、中止を決めたときは気象庁ホームページなどで知らせるとしている。

気象庁の訓練報を使わない機関では、午前10時ごろ以外の時間に訓練を行う場合がある。報道資料は訓練の方法として、訓練報のほかに専用受信端末の訓練用機能、気象庁が提供する訓練動画、スマートフォンの機能を使う方法も挙げている。訓練の後に適切な行動がとれたかを確かめる「緊急地震速報訓練行動チェックシート」も添えた。

報道資料には、11月2日以降の国の機関向けの問い合わせ先として、同日発足する防災庁の統括官(災害事態対処担当)付参事官(訓練・人材育成担当)付が記されている。訓練の担当はそれまでの内閣府政策統括官(防災担当)付から移る。

自治体1787団体、住民参加型は152団体

自治体の参加は、全都道府県と市区町村を合わせた1787団体。すべての団体が、Jアラートで配信される訓練報の受信確認を行う。このうち受信確認だけを行うのは893団体で、残る894団体が受信にあわせて行動訓練や情報伝達訓練も実施する。

894団体の内訳(重複あり)は、防災行政無線などで住民に緊急地震速報を伝える団体が779団体、職員を対象とした庁内放送や職員参集訓練などを行う団体が579団体。住民参加型の訓練を行うのは152団体で、うち140団体が住民参加による緊急地震速報対応訓練を、42団体が住民参加による避難訓練を行う。緊急地震速報対応訓練とは、速報を受けて地震の揺れから身を守る訓練で、シェイクアウト訓練が代表例だ。津波も想定するのは、対応訓練で16団体、避難訓練で17団体だった。

住民参加の避難訓練を行う42団体には、那覇市、宜野湾市、名護市、宮古島市、竹富町など沖縄県内の自治体が多く含まれ、滋賀県彦根市や長野県安曇野市も加わる。住民参加の対応訓練を行う140団体には、青森県、茨城県、愛知県、高知県、鹿児島県などの県のほか、鹿児島市、神戸市、和歌山市などの市が含まれる。報道資料は、災害対応などに伴い各団体が訓練内容を変える場合があるとしている。

前年の訓練と比べると、参加の規模はやや小さい。2025年11月5日の訓練では、市区町村の参加が1741団体(今年は1740団体)、行動訓練や情報伝達訓練を行う団体が911団体、住民参加型が161団体だった。国の機関は、中央省庁が19府省庁から24府省庁に増え、地方支分部局等は608組織から556組織に減った。民間企業・各種団体等は784か所から738か所になった。

区分 2025年 2026年
地方公共団体 1788団体 1787団体
うち行動・情報伝達訓練を実施 911団体 894団体
うち住民参加型の訓練を実施 161団体 152団体
中央省庁 19府省庁 24府省庁
地方支分部局等 608組織 556組織
訓練報を配信する事業者 14事業者 14事業者
民間企業・各種団体等 784か所 738か所
11月5日の緊急地震速報訓練の参加機関(前年との比較)

出典: 内閣府・消防庁・気象庁の報道資料(2025年10月29日、2026年10月29日)

テレビや携帯には流れない

訓練報が届く経路は限られる。気象庁は、テレビやラジオ(一部のコミュニティFMなどを除く)の放送と、携帯電話・スマートフォンの緊急速報メールでは訓練報は流れないと説明している。一方、報道資料によると、一部の市区町村ではケーブルテレビやコミュニティFMで訓練報を放送したり、緊急速報メールで訓練用の避難指示などを配信したりする場合がある。登録した自治体や使っているアプリによっては、訓練であることを明記した緊急地震速報が届くこともある。内容は各市区町村に確認するよう求めている。

家庭でテレビをつけていても、スマートフォンを持っていても、午前10時に速報が鳴るとは限らない。訓練報を確実に受けるのは、職場の館内放送や地域の防災行政無線、専用受信端末を通じた場合になる。

本物の緊急地震速報の伝わり方をめぐっては、10月にも問題が続いた。気象庁は10月16日にカムチャツカ半島付近の地震で過大な予測の警報を出し、原因を公表している(緊急地震速報の過大予測、2020年の再発防止機能が働かず 気象庁が謝罪)。同じ地震の速報はNTTドコモの端末に配信されず、総務相が会見で同社の報告を明らかにした(ドコモ端末に緊急地震速報が届かず 総務相「他社にも必要な対応を促す」)。

訓練報の中身は「四国沖でマグニチュード1.0」

気象庁は、当日配信する訓練報の内容を訓練管理者や配信事業者向けに公表している。Jアラート向けは午前10時00分00秒ごろに配信し、全地域を「予想震度5弱・予想長周期地震動階級3・猶予時間30秒」とする。想定する震源は四国沖の深さ10キロで、マグニチュードは1.0。資料は、訓練報を誤って使うことを防ぐため、地震の規模を小さく設定したと説明している。

国などの参加機関向けには、午前10時00分00秒ごろから7つの訓練報を1秒おきに配信する。想定震源は十勝沖(マグニチュード8.4)、宮城県沖、長野県中部、和歌山県南方沖、日向灘、沖縄本島近海、石垣島近海(いずれもマグニチュード8.0)で、深さはすべて10キロとした。気象庁は、全国で受信端末を起動させる必要があるため、震源の異なる複数の訓練報を10数秒程度のうちに続けて配信すると説明している。

緊急地震速報には「警報」と「予報」がある。一般に伝えられる警報は、2か所以上の地震観測点で地震波を観測し、最大震度5弱以上、または最大長周期地震動階級3以上が予想されたときに出る。気象庁は2007年(平成19年)10月1日に警報の発表を始め、長周期地震動階級の条件は2023年(令和5年)2月1日に加えた。震度5弱以上を基準にしたのは、その揺れで目立った被害が出始め、事前に身構える必要があるためだという。

警報で伝えるのは、地震の発生時刻、震源の推定値と震央地名、強い揺れが予想される地域と震度4が予想される地域の名前だ。予想震度は1程度の誤差を伴うため具体的な値は出さず、「強い揺れ」と表現する。強い揺れまでの猶予時間も地域内で大きく異なるとして発表しない。報道資料に添えたチェックシートは、速報が出てから強く揺れるまでの時間は「わずかな時間(数秒~数十秒)」しかないと説明している。

11月5日が「津波防災の日」である理由

11月5日の訓練日は法律に根拠がある。2011年(平成23年)に制定された津波対策の推進に関する法律は、第15条で「国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるようにするため」津波防災の日を設け、その日を11月5日と定めている。

同条は、2015年12月22日の国連総会で11月5日を「世界津波の日」とする決議が採択されたことも踏まえ、国と地方公共団体が津波防災の日にふさわしい行事を行うよう努めると定める。2025年の緊急地震速報の訓練も、同じ11月5日に行われた。

今回の訓練では、住民参加型の訓練を行う152団体のうち、津波も想定するのは対応訓練の16団体と避難訓練の17団体(重複あり)にとどまる。報道資料は参加者向けのチェックシートで、訓練の前に、屋内と屋外それぞれの安全な場所や、速報を受け取る手段を確かめるよう求めている。自宅や職場でどの経路から速報が届くかを知っておくことが、5日の訓練で確かめられる点になる。