秋田地方気象台と国土交通省秋田河川国道事務所は10月21日午後7時45分、秋田県由利本荘市を流れる子吉川に「レベル5氾濫特別警報」を発表した。避難情報の警戒レベル5に当たる、河川の情報で最も重い区分である。30分後の午後8時15分には、由利本荘市森子地先の左岸で越水による氾濫が起きた。特別警報は22日午前2時20分、レベル2氾濫注意報に切り替わった。消防庁は11月2日午後5時、被害と対応状況の第6報を公表し、同時に庁内の災害対策本部を廃止した。由利本荘市では死者1人が出ており、災害との関連を調べている。
11地点で10月の日降水量の記録を更新
秋田地方気象台が10月28日にまとめた災害時気象資料によると、20日夜に日本海の前線上で発生した低気圧が急速に発達しながら21日夜にかけてオホーツク海へ進み、低気圧から延びる前線が東北地方を通過した。低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定になった。秋田県では20日夜から21日夜にかけて断続的に雨が降った。
21日の日降水量は、由利本荘市矢島で136.5ミリ、同市笹子で129.5ミリ、仙北市桧木内で119.5ミリ、同市田沢湖で119.0ミリに達した。県内11地点で、10月の日降水量としてこれまでの1位を上回った。矢島はそれまでの10月の最多が2013年10月16日の85.0ミリで、今回はこれを51.5ミリ上回った。24時間降水量でも矢島は137.0ミリとなり、2019年10月13日の115.0ミリを超えた。
10月21日の日降水量とそれまでの10月の最多(ミリ)
10月21日それまでの10月の最多
数値で見る(単位: ミリ)
| 項目 | 10月21日 | それまでの10月の最多 |
|---|---|---|
| 矢島 | 136.5 | 85.0 |
| 笹子 | 129.5 | 84.0 |
| 田沢湖 | 119.0 | 94.5 |
| 東由利 | 110.5 | 79.5 |
| 角館 | 99.0 | 94.0 |
| 横手 | 96.0 | 80.0 |
雨の強さそのものは、1時間の最大が桧木内の23.0ミリ、矢島の19.0ミリだった。記録を更新したのは3時間、12時間、24時間の降水量と日降水量で、1時間降水量の記録更新は資料に無い。矢島の6時間降水量は午後6時50分までに67.5ミリ、12時間降水量は午後10時40分までに91.5ミリだった。由利本荘市では矢島、笹子、東由利の3地点で日降水量が110ミリを超えた。
注意報から特別警報まで8時間、県は同時刻に災害対策部
子吉川の指定河川洪水予報は、秋田地方気象台と秋田河川国道事務所が共同で発表する。21日の経過は次の通りだった。
| 発表日時 | 号 | 標題 |
|---|---|---|
| 21日11時45分 | 第1号 | 子吉川レベル2氾濫注意報 |
| 21日15時55分 | 第2号 | 子吉川レベル3氾濫警報 |
| 21日18時15分 | 第3号 | 子吉川レベル4氾濫危険警報 |
| 21日19時45分 | 第4号 | 子吉川レベル5氾濫特別警報/氾濫発生情報 |
| 21日20時15分 | 第5号 | 子吉川レベル5氾濫特別警報/氾濫発生情報 |
| 21日21時15分 | 第6号 | 子吉川レベル5氾濫特別警報/氾濫発生情報 |
| 22日02時20分 | 第7号 | 子吉川レベル2氾濫注意報(警報解除) |
| 22日04時45分 | 第8号 | 子吉川レベル2氾濫注意報 |
| 22日06時20分 | 第9号 | 子吉川レベル2氾濫注意報解除 |
出典: 秋田地方気象台「秋田県災害時気象資料 令和8年10月21日の秋田県の大雨」
最初の注意報から特別警報までは8時間、レベル4の危険警報から特別警報までは1時間30分だった。特別警報は約6時間35分続いた。気象台が特別警報の発表時に出した資料では、関係する市町村は由利本荘市だけである。同じ資料によると、越水による氾濫は午後8時15分、森子地先の左岸で起きた。
気象台はこの間、県全体を対象にした「秋田県気象解説情報」を19日午後4時25分の第1号から22日午前4時1分の第10号まで出した。21日午後4時44分の第5号から標題に「氾濫」が加わり、21日午後9時7分の第8号以降は氾濫だけを扱った。
消防庁の第6報によると、都道府県からの人的・住家被害の報告は無い。消防機関などの情報として、由利本荘市で死者1人が出ており、災害との関連を調べている。気象台の資料は、秋田県のまとめ(22日午後3時時点)として、由利本荘市の人的被害1人(災害との関連は不明)のほか、子吉川の越水、アンダーパスや国道、農地の冠水を挙げている。
秋田県は21日午後7時45分、特別警報の発表と同じ時刻に災害対策部を設け、22日午後5時に廃止した。市町村が出した避難指示などは第6報の時点ですべて解除されている。第6報には、発令された避難指示の数や対象の世帯数は載っていない。
消防庁も21日午後7時45分、国民保護・防災部長を長とする災害対策本部を第2次応急体制で設けた。1分後の午後7時46分には、特別警報が出た秋田県に適切な対応と被害の報告を求めた。本部は11月2日午後5時の第6報の公表と同時に廃止した。
5月に始まった新しい防災気象情報
「レベル5氾濫特別警報」は、気象庁が5月29日に運用を始めた新しい防災気象情報の名称である。気象庁は4月14日の発表で、情報の名称に警戒レベルの数字を付け、市町村の避難情報や住民がとるべき行動との対応を分かりやすくすると説明した。
河川の氾濫について、従来は警戒レベル5相当が「氾濫発生情報」、レベル4相当が「氾濫危険情報」だった。新しい体系では、レベル5が「氾濫特別警報」、4が「氾濫危険警報」、3が「氾濫警報」、2が「氾濫注意報」となった。レベル4に「危険警報」を新たに設け、警報と特別警報の違いを示した。大雨、土砂災害、高潮も同じ形にそろえた。子吉川の第4〜6号の標題は「レベル5氾濫特別警報/氾濫発生情報」と、新旧の名称を並べている。
気象庁のFAQによると、法令上は「洪水の特別警報」だが、住民へのアンケートで河川があふれる現象を表すには「氾濫」が良いという結果が出たため、発表する名称を「氾濫特別警報」とした。河川ごとに出すこの情報は、1級河川などの大きな河川に限られる。新しい体系の下では、9月8日の大雨で愛知県と岐阜県を流れる庄内川にも8日午後6時20分から9日午前0時40分まで出ており、その経過と被災者への支援は名古屋市に被災者生活再建支援法を適用 9月8日の大雨、半壊230世帯以上 最大300万円で伝えた。
レベル4までに危険な場所から離れる
気象庁のFAQは、レベル5氾濫特別警報を「対象とする河川で氾濫が発生または切迫している状況」で出す情報と位置づける。発表されたときには、すでに氾濫が起きて浸水被害が広がっていてもおかしくないため、「この情報がでる前のレベル4までの段階で避難行動をとるように」と求めている。子吉川では、特別警報の発表から30分後に越水による氾濫が起きた。
気象台が21日夜に出した資料も、指定された避難場所へ向かうのがかえって危険な場合は、少しでも浸水しにくい高い場所へ移るよう呼びかけた。気象庁の特設ページは、避難指示が出ていなくても、レベル4やレベル3に相当する情報が出たら、危険度を色で示す「キキクル」や河川の水位情報を見て自ら避難を判断するよう求めている。
子吉川では、レベル4の危険警報が出た午後6時15分から越水が起きた午後8時15分までが2時間だった。新しい名称は、どの段階で動くかを情報の名前から読み取れるようにするのが狙いである。秋田県内の11地点で10月の記録を塗り替えたこの雨は、その段階を数字で伝える情報が実際の夜間の増水で使われた例になった。
