厚生労働省は11月2日、11月30日の「年金の日」と、日本年金機構が11月に展開する「ねんきん月間」の取り組みを公表した。金融機関や生命保険会社などの賛同団体と協働し、インターネットの「ねんきんネット」で自分の年金記録や将来の年金見込額を確かめるよう呼びかける。あわせて、持ち主が分からなくなっている年金記録を検索する機能の周知にも力を入れる。基礎年金番号に統合されていない記録は、2026年3月時点でなお1652万件残っている。

金融機関・社労士会などがポスターで周知

厚労省は毎年11月30日を「いい(11)みらい(30)」の語呂合わせで「年金の日」としている。厚労省のページによると、2014年度(平成26年度)から始めた。狙いは、国民一人ひとりが「ねんきんネット」などで年金記録や受給見込額を確認し、「高齢期に備え、その生活設計に思いを巡らしていただくこと」にあるという。賛同団体は「21団体等」と記されている。年金を中心とする高齢世帯の家計の実情は老後の生活費、高齢夫婦は月26万3979円 年金中心の手取りでは毎月4万2434円の赤字 2025年家計調査で伝えている。

今回公表した別紙「令和8年度『年金の日』の取組について」によると、全国社会保険労務士会連合会は都道府県の社会保険労務士会でポスターを掲示し、企業年金連合会は会員の企業年金にポスターを配るほか、月刊誌「企業年金」で取り上げる。国民年金基金連合会も全国の国民年金基金で周知する。

金融機関では、全国銀行協会・全国地方銀行協会・信託協会・第二地方銀行協会の会員のうち全国10銀行がポスターを掲げる。全国信用金庫協会の会員では北海道の北星信用金庫から沖縄のコザ信用金庫まで各地の信用金庫が、全国信用組合中央協会の会員でも各地の信用組合が加わる。全国労働金庫協会は全国の労働金庫の店舗で、JAバンク・JFマリンバンクも全国の店舗で周知する。生命保険協会の会員では太陽生命、第一生命、かんぽ生命など5社が名を連ねた。JA全中、JA共済、日本損害保険協会、日本FP協会も参加する。

各団体が周知する中身はそろっている。「年金の日」そのものと、ねんきんネットの「持ち主不明記録検索」の2つだ。厚労省のお知らせでは、市区町村も「ねんきん月間」を周知するとしている。

出張相談やSNSの発信、TVerにも広告

厚労省は自らのホームページとX、Facebook、LINEで、ねんきんネットの利用を呼びかける。動画配信サービス「TVer」には11月中旬から12月中旬ごろまで広告を出す予定だ。

日本年金機構は11月の「ねんきん月間」に、年金事務所の職員らによる出張年金相談や年金セミナーを全国で開く。会場は市区役所や町村役場、大学、商業施設などで、地域ブロック別の一覧を機構のホームページに載せている。機構の公式XとFacebookでは「知っておきたい年金のはなし」と題し、制度や手続きの案内を11月の毎営業日に投稿する。ホームページでは毎週年金クイズを出題しており、次回の更新は11月9日の予定だ。

機構は例年、自分と公的年金との関わりをつづる「わたしと年金」エッセイを募集している。過去の受賞作品は10分程度のアニメーション動画にしてYouTubeで公開している。今年の応募作品からは、優秀な作品に厚生労働大臣賞と日本年金機構理事長賞を贈る。詳細は別途知らせるとしている。

ねんきんネットでできること

ねんきんネットは、日本年金機構が運営するオンラインサービスで、年金記録の確認、年金見込額の試算、通知書の閲覧などができる。機構は「24時間いつでもどこでも、スマートフォンやパソコンから利用可能」と説明する。使い始めるには機構のユーザIDを取得するか、マイナンバーカードを持つ人はマイナポータルと連携させる。

見込額の試算には2通りある。「かんたん試算」は、いまの加入条件が60歳まで続くと仮定し、画面のクリックだけで老齢年金の見込額を出す。「詳細な条件で試算」では、今後の働き方や年金を受け取り始める年齢、未納分をこれから納めた場合などを自分で設定できる。共済組合に加入していた期間は、試算に制約がある。

これとは別に、厚労省は2022年4月から「公的年金シミュレーター」を運用している。利用登録やID・パスワードの設定が要らず、手軽に将来の年金額を試算できる。ただし簡易的な試算にとどまるため、機構は個人の記録に基づく詳しい試算を望む人にはねんきんネットを勧めている。

ねんきんネットのユーザー数(各年度末)(万人)

ユーザー数うちマイナポータル連携

05001,0001,5002,0007707021年度90821622年度1,09846123年度1,35676724年度1,5991,06325年度
2025年度末は1599万人で、3分の2がマイナポータル経由出典: 日本年金機構「令和7年度業務実績報告書」
数値で見る(単位: 万人)
項目ユーザー数うちマイナポータル連携
21年度77070
22年度908216
23年度1,098461
24年度1,356767
25年度1,5991,063

機構の「令和7年度業務実績報告書」によると、ねんきんネットのユーザー数は2025年度末(2026年3月末)に1599万人となった。1年前から243万人増え、2021年度末の770万人の2倍を超えた。伸びの中心はマイナポータルとの連携で、連携者は1年で296万人増えて1063万人となり、ユーザーの約66.5%を占める。

持ち主不明の記録、なお1652万件

周知の柱に据えた「持ち主不明記録検索」は、氏名、生年月日、性別を入力すると、その条件に一致する持ち主不明の記録があるかをオンラインで確認できる機能だ。2013年1月に始まり、2024年6月にはスマートフォン向けの画面ができた。対象は、1996年12月以前に年金制度に加入していた人の記録のうち、基礎年金番号に統合されていないものだ。条件に一致する記録が見つかれば、本人の記録かどうかを年金事務所や街角の年金相談センターで調べる。

背景には、いわゆる「年金記録問題」がある。基礎年金番号に統合されていなかった記録は5095万件あった。機構の資料「未統合記録(5,095万件)の解明状況」によると、2026年3月時点で解明された記録は3443万件。このうち2132万件は基礎年金番号に統合され、人数にすると1636万人分(受給者1207万人、被保険者等429万人)にあたる。残る1311万件は、死亡者に関連する記録(788万件)と年金受給に結び付かない記録(523万件)だった。

区分 件数
解明作業中またはなお解明を要する記録 1652万件
うち名寄せ特別便等の対象となったが、未回答等のため持ち主が判明していない記録 604万件
うち持ち主の手がかりがいまだ得られていない記録 787万件
うち上記の記録と同一人と思われる記録 261万件
うち現在調査中の記録 0.4万件
未統合記録のうち、なお解明を要する記録の内訳(2026年3月時点)出典: 日本年金機構「未統合記録(5,095万件)の解明状況」

なお解明を要する記録は1652万件ある。最も多いのは、持ち主の手がかりがまだ得られていない787万件だ。機構は、死亡したと考えられる人や国外に転居したと考えられる人の記録、誤った氏名や生年月日で届け出られた記録などを想定例に挙げる。次いで、名寄せ特別便などを送ったものの未回答などで持ち主が分からない記録が604万件ある。その内訳は、本人から回答が無いものが176万件、「自分のものではない」と回答があったものが156万件、お知らせ便が届かなかったものが36万件、その他が236万件だった。

解明は少しずつ進んでいる。業務実績報告書によると、未解明の記録は2022年3月の約1773万件から、2023年3月に約1736万件、2024年3月に約1713万件、2025年3月に約1676万件と減り、2026年3月に約1652万件となった。2025年度の1年で約24万件の解明が進んだことになる。基礎年金番号に統合済みの記録は、2026年8月末時点で2139万件となり、直近1か月では1万件の記録が回復した。

持ち主不明記録の検索は、氏名・生年月日・性別という限られた情報で引ける。「死亡していると考えられる」「届出誤り」といった想定例が示すとおり、残る記録の多くは本人がすでにいないか、届け出の時点で情報が食い違っている。ただし、機構が「名寄せ特別便」などを送りながら未回答などで判明していない記録も604万件残っており、本人や家族が自ら調べれば見つかる余地はある。

検索で一致する記録が見つかった場合でも、その場で記録が回復するわけではない。機構は、検索結果を登録したうえで年金事務所や街角の年金相談センターに相談するよう案内している。相談の際は、検索を行った人の基礎年金番号も必要になる。

過去に登録した検索結果は一覧で確かめたり印刷したりできる。11月の「ねんきん月間」の間は、全国の出張年金相談の会場でも年金事務所の職員に相談できる。