内閣府経済社会総合研究所は9月30日、2026年4〜6月期の固定資本ストック速報を公表した。国内にある住宅や建物、機械などの固定資産の実質残高は、一国合計で2077.9兆円となった。前年同期比0.3%の増加で、51期連続のプラスとなる。ただし内訳は一様ではない。民間企業設備と公的固定資産が増え続けているのに対し、民間住宅だけは48期、12年にわたって前年割れが続いている。
「固定資本ストック」とは何を数えたものか
固定資本ストックは、国内に積み上がっている固定資産の残高である。毎年いくら投資したかを見る設備投資統計が「フロー(流れ)」なら、こちらは積み上がった「ストック(残高)」にあたる。
数える対象は、国民経済計算の資産分類にある「住宅」「その他の建物・構築物」「機械・設備」「防衛装備品」「育成生物資源」「知的財産生産物」の6種類すべてで、これを合計したものが「一国合計」となる。投資の主体別には「民間企業設備」「民間住宅」「公的固定資産」の3系列に分けて推計する。
読むうえで欠かせないのが、この数字が「純概念」だという点だ。推計の概要によれば、計数は固定資本減耗、つまり設備や建物が使われて古くなる分を差し引いた後の残高として評価されている。買った分を足していくだけの「粗」の数字ではない。したがって残高が減るということは、新しい投資が、既存の資産が目減りする分に追いついていないことを意味する。価格は2020年の暦年末を参照年として連鎖統合した実質値で表す。
民間住宅だけが12年間減り続けている
内訳を見ると、民間企業設備は852.2兆円で前年同期比0.6%増、50期連続のプラスだった。公的固定資産は793.1兆円で同0.3%増、5期連続のプラスとなっている。
これに対し民間住宅は431.0兆円で、前年同期比0.4%減。48期連続のマイナスである。計数表をさかのぼると、前年割れが始まったのは2014年7〜9月期だ。消費税率が5%から8%に上がった2014年4月の直後にあたる時期から、一度もプラスに転じないまま12年が過ぎたことになる。
残高のピークは2007年7〜9月期の468.8兆円だった。そこから足元の431.0兆円まで37.8兆円、率にして8.1%減っている。比較のために統計をさかのぼれる1994年1〜3月期を見ると、当時の民間住宅は387.7兆円で、一国合計は1630.1兆円だった。この32年余りで一国合計が447.8兆円積み増されたのに対し、民間住宅はピークを打って下り坂に入っている。
新築は5か月続けて増えているが、減る分を埋めきれない
住宅の残高が減り続けているのは、新しい家が建っていないからではない。国土交通省が同じ9月30日に公表した建築着工統計調査報告(令和8年8月分)によれば、8月の新設住宅着工戸数は6万3974戸で、前年同月比6.1%の増加。5か月連続で増えている。着工床面積も485万8000平方メートルで同5.6%増と、やはり5か月続けての増加だった。
利用関係別でも、持家が1万7713戸(同1.0%増)、貸家が2万8309戸(同6.5%増)、分譲住宅が1万6838戸(同6.4%増)と、3区分そろって5か月連続のプラスである。分譲のうちマンションは6475戸(同5.3%増)、一戸建住宅は1万182戸(同7.5%増)だった。
それでも住宅ストックが減るのは、年間の水準そのものが低いためだ。8月の季節調整済年率換算値は75万3000戸で、前月比では2.7%の減少、2か月続けて減っている。新しく建つ分が、既存の住宅が古くなって失う価値を下回っている状態が続いている。
企業設備は伸びているが「古さ」の問題は残る
一方の民間企業設備は、前期の853.7兆円からは1.5兆円減ったものの、前年同期比では0.6%増を保ち、50期連続のプラスを続けている。1994年1〜3月期の677.1兆円からは175.1兆円積み上がった計算になる。
ただし残高が増えることと、設備が新しいこととは別の話だ。内閣府は令和8年度年次経済財政報告で、設備が導入されてから平均で何年たっているかを試算し、日本の生産設備、主要7か国で最も「古い」水準になったと分析している。純概念のストックが積み上がっていても、その中身が更新されているとは限らない。
先行きを占う指標も強くはない。設備投資の先行指標とされる機械受注は、7月の機械受注、設備投資の先行指標は3.7%減と前月の増加から反落している。
なお今回の一国合計2077.9兆円は、前期(2026年1〜3月期)の2080.3兆円からは2.4兆円減っている。前年同期と比べれば0.3%の増加だが、四半期どうしを直接つないで見るときには、この振れも合わせて読む必要がある。
次回の固定資本ストック速報の公表時期は、内閣府の国民経済計算の公表予定で示される。
