井林辰憲国土交通相は10月9日の閣議後記者会見で、簗和生農林水産相が議員時代に栃木県那須烏山市と那珂川町の道路予算について国交省へ問い合わせていた件を問われ、「問い合わせについてはあったということですが、その問い合せについては事業担当部局に伝わっていなかったということが明確になっている」と述べ、「配分作業への影響は一切ない」と報告を受けていると説明した。問い合わせへの対応を記録に残していなかった点については、「作成を要しない場合にあたると判断されたため、記録は作成されていなかった」と答えた。
9日の会見で問われた「発言の後退」と記録の有無
井林氏は10月2日の会見で、報道されている簗氏の発言のような形で「道路予算が削減された事実はないと報告を受けています」と述べていた。9日の会見で記者は、その後に国交省が示した調査結果では面談記録も無く、働きかけについては「なかったと思う」という説明にとどまり、大臣の説明から後退したのではないかと質問した。簗氏が発言を撤回し、国交省への働きかけを否定した経緯は立憲、簗農水相の辞任要求へ 斎藤国対委員長「公的な予算の私物化」「有権者や地方自治体へのハラスメント」 簗氏は発言を撤回し国交省への働きかけは否定で伝えている。
これに対し井林氏は、2月中旬ごろの簗議員から国会担当などへの問い合わせが事業担当部局に伝わっていなかったことは、10月2日の時点ですでに明確になっていたため、配分作業への影響が一切なかったと報告を受け、その日の会見でそう述べたと説明した。さらに、10月7日には佐々木前副大臣も、簗議員から問い合わせがあった際に令和8年度の配分額を事業部局に照会しておらず、簗議員の名前も出していないと説明していると付け加えた。
記録については、さまざまな議員からの問い合わせは内閣府の「行政文書の管理に関するガイドライン」を踏まえて記録の要否を判断し、必要に応じて作成していると述べた。今回は記録を作る必要がない場合にあたると判断されたとし、今後も「関係法令に則って、適切に記録の作成等の判断を行ってまいります」と述べるにとどめ、議員関係の記録を残す運用に改めるかどうかには直接答えなかった。
記者からは、那須烏山市の川俣純子市長が国交省の説明の後に「疑惑はむしろ深まった」とのコメントを出し、国交省に説明責任を求めているとして、2市町に追加の説明をするかも問われた。井林氏は、自治体から相談や照会があれば個別に状況を聞いて対応しており、2市町を含めて「必要なコミュニケーションに努めてまいります」と答えた。
国交省の精査結果 2市町の事業は減、県事業を含めると増
国交省は10月6日、「道路予算に係る週刊誌報道を受けた精査結果について」を公表した。それによると、2市町の区域内で行われる市町の事業と県の事業を合わせた「想定国費」は、令和8年度当初で那須烏山市が3億9200万円(前年度比20.5%増)、那珂川町が3億1900万円(同22.0%増)だった。
一方、市町が自ら行う事業に限ると、那須烏山市は1億4200万円から1億500万円へ26.2%減り、那珂川町は4900万円から2300万円へ54.1%減った。同じ区域内の県の事業は、那須烏山市分が1億8300万円から2億8700万円へ56.6%増、那珂川町分が2億1300万円から2億9700万円へ39.6%増えている。
経緯について精査結果は、令和8年2月中旬ごろ、簗議員から国交省の国会担当などに2市町の令和8年度の配分額について問い合わせがあり、その場では「わからない」などと答えたと記す。予算成立前だったため、令和6・7年度の配分実績を整理した。4月7日の予算成立と内定通知の後、正確な日時は不明としながら、整理した事業の令和8年度配分額を簗議員に説明した。このとき示した那須烏山市分は令和8年度に新しく加わった3事業を含まない数字で、64%減になっていた。新規3事業を含めると26.2%減になるという。
交付金は「計画」単位で配分 要望の満額は全国でも約半分
国交省は同じ9日、「社会資本整備総合交付金(仕組み・配分の考え方)について」と題する資料を公表した。井林氏は会見で「交付金制度全体について御理解いただけてないような質問があるのではないか」と述べ、事務方に解説の場を設けるよう指示したと明らかにしていた。
資料によると、社会資本整備総合交付金は国交省所管の自治体向け補助金を原則一つにまとめ、平成22年度に創設された。国は自治体が作る「整備計画」の単位で国費を配分し、計画の中のどの事業にどれだけ使うかは自治体が判断できる。国は都道府県に主な事業ごとの参考値として「想定国費」を示し、都道府県がそれを参考に市町村への配分を決める。精査結果の数字は、この想定国費を国交省の公表する箇所表から集計したものだ。令和8年度の交付金予算は4597億円で、令和4年度の5817億円から毎年減っている。
資料は、令和8年度は全国で要望額に対する措置率が51%にとどまり、要望のあった都道府県・市町村の約1割で前年度比50%未満の配分になったとも記している。那須烏山市域の事業は17件(県9件・市8件)、那珂川町域は12件(県10件・町2件)で、那珂川町の町事業2件はいずれも国の重点配分の対象ではなかった。
那須烏山市は6日、「全国の皆様への市長からのお願い」を市のサイトに掲載した。簗氏の予算カット発言が全国に知られたことで、励ましや苦情、質問の電話が殺到して日常業務に支障が出ているとし、市職員が市民サービスを滞りなく提供できるよう「静かに見守っていただけたら有難い」と呼びかけた。
