内閣府政府広報室は9月25日、「生物多様性に関する世論調査」(令和8年7月調査)の速報を公表した。「生物多様性」という言葉の意味を知っていたと答えた人は38.3%で、前回にあたる令和4年7月調査の29.4%から増えた。半面、保全に貢献する行動については「取り組みたい行動はあるが、行動に移せてはいない」が42.7%と、前回の33.7%から増えている。言葉としての広がりが、実際の行動には結びついていない。
調査は全国の18歳以上の日本国籍を持つ3000人が対象で、方法は郵送法。期間は7月30日から9月6日までで、今回公表された速報は8月28日までに到着した調査票1503人分(回収率50.1%)を集計したものだ。年齢や地域などの属性別の結果とクロス集計は確報の段階で公表され、回収数や回収率を含む速報の数値も確報で修正される可能性がある。内閣府の世論調査は分野ごとに同じ郵送法で行われており、高速道路の維持費「通行料金でまかなうべき」が66.4% 5年前の62.9%から増加 内閣府の道路世論調査も今月公表されたばかりだ。
言葉の認知は4年で広がった
「生物多様性」の言葉の意味を知っていたと答えた38.3%に対し、「意味は知らないが、言葉は聞いたことがあった」は35.4%(前回43.2%)、「聞いたこともなかった」は25.9%(前回26.5%)だった。聞いたことすらない層はほぼ横ばいで、「言葉は知っていた」層の一部が「意味も知っている」層へ移った形になる。
自然そのものへの関心は高い水準が続いている。「非常に関心がある」16.2%と「ある程度関心がある」60.7%を合わせた「関心がある」は76.9%で、前回の75.3%と大きくは変わらない。私たちの生活にとって重要な自然の働きとしては、「CO2や大気汚染物質の吸収などの大気や気候を調整する働き」が76.6%で最も多く、「水資源の供給・水質浄化の働き」75.4%、「動物・植物など生物の生息・生育地としての働き」56.6%と続いた。
行動に移せない人が増えた
すでに取り組んでいる行動(複数回答)で最も多かったのは「生物や自然環境に負荷の少ない商品を選んで買うなど、消費活動において生物多様性に配慮する」の24.0%。「野外活動への参加や、動物園や植物園に行くことを通じて、自然や生物について学ぶ」が19.9%、「自然の素晴らしさや季節の移ろいに対する感動を、写真や絵などで発信する」が13.1%で続いた。生息地の管理や外来生物の駆除といった保全活動そのものへの参加は5.4%、環境保全団体への寄付は2.4%にとどまる。
この設問は選択肢の文言が前回から改められているため、行動ごとの増減を単純には比べられない。前回と同じ文言で聞いた2つの選択肢を見ると、「取り組みたい行動はあるが、行動に移せてはいない」は33.7%から42.7%に、「取り組みたいとは思わない」は8.7%から12.0%に、いずれも増えた。買い物の場面でも「生物多様性への影響を意識していない」が46.8%を占めている。
求める対策は外来種の駆除が最多
生物多様性の危機を招く要因への対策として必要だと思うもの(複数回答)は、「侵略的な外来種の駆除や侵入・拡散防止」が67.6%で最も多かった。次いで「シカやイノシシなどの鳥獣の適切な管理」59.1%、「希少な野生動植物の保護」49.0%、「国立公園などの保護地域の保全」48.4%、「生物多様性の現状や変化を把握するための情報整備」39.1%の順となっている。自分の行動を求められる項目より、駆除や管理といった公的な対策への期待が上回った。
外来種への対応は、生態系に被害を及ぼす外来種リスト、11年ぶり改訂 429種類から596種類へ キンギョやヒメダカも新たに掲載でも扱った論点である。
「陸と海の30%」目標、貢献は買い物から
調査では、2022年12月に採択された世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に盛り込まれた、2030年までに世界の陸と海の30%を保全・保護する目標(30by30)も取り上げた。どのような取組で貢献したいかを複数回答で聞いたところ、「保全・保護活動を実施しているエリアで収穫された農作物などを購入したい」が45.1%、「保全・保護活動に熱心な企業の製品やサービスを積極的に購入・利用したい」が39.5%、「ふるさと納税で貢献したい」が22.7%だった。「特に貢献したいと思わない」は19.3%。前回はこの設問の前置きが主要7か国首脳会議での約束という説明になっており、単純な比較はできない。
日本でこの目標を担う仕組みの一つが、民間の取組で生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する「自然共生サイト」である。環境省が6月30日に公表した地域生物多様性増進法に基づく令和8年度第1回の認定では56か所が加わり、累計610か所となった。今回の調査で浮かんだ「関心はあるが動けない」層をどう動かすかが、目標達成の実務的な課題になる。
生物多様性についての確報をいつ公表するかは、今回の速報の資料には示されていない。
