金融庁から業務停止命令を受けたジブラルタ生命保険(東京都千代田区)は、停止期間中の契約者への対応を公表した。2026年10月13日から2027年1月31日まで、「ライフプラン・コンサルタント」と呼ぶ営業社員による新規の保険募集と契約の締結を止め、その間は営業社員が契約者を訪問したり、電話や電子メールで連絡したりすることもできないとした。加入中の契約の手続きや保険金・給付金の支払いに影響はなく、問い合わせは会社のホームページの窓口で受け付ける。代理店を通じた販売は続ける。

営業社員は訪問も電話・メールもできない

同社が10月15日に更新した「弊社営業社員を通じた営業活動等の一時停止について」によると、停止期間は10月13日(火)から2027年1月31日(日)までの111日間だ。金融庁の命令は「保険募集及び保険契約の締結」の停止で、同社はこれに基づき、営業社員による新規の募集と締結を止める。

そのうえで、停止期間中は営業社員が「お客さま訪問や電話・電子メール等によるご連絡を行うことができません」と明記した。新しい保険の勧誘をしないだけでなく、担当の営業社員が契約者のもとを訪ねることや、電話・メールで連絡を取ることも止まる。これまで担当者を通じて契約の相談や手続きをしてきた契約者にとっては、窓口が変わることになる。

ジブラルタ生命は、2001年(平成13年)に営業を始めた生命保険会社で、プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン(持株会社)の傘下にある。金融庁によると、営業を始めた当時はプルデンシャル生命の出身者が経営陣の中心を占め、同社と似た採用・育成・販売の仕組みを取り入れてきた。金融庁が10月9日に出した処分の全体像は、ジブラルタ生命・プルデンシャル生命の業務停止はいつまで 2027年1月31日まで新規販売停止、既存契約は継続で詳しく伝えている。

同社は文書の中で、処分により契約者や関係者に「多大なるご迷惑とご心配をおかけして」いるとして謝罪し、停止期間中の不便についても重ねて謝った。

加入中の契約の手続きは問い合わせ窓口へ

契約者にとって最も大きいのは、すでに入っている保険がどうなるかだ。同社は、停止期間中も加入中の契約に関する各種の手続きや、保険金・給付金の支払いに「影響はございません」としている。保障が止まるわけではない。

手続きの受け付け先は変わる。保障の内容や保険金・給付金の支払いについての問い合わせ、契約内容の変更、解約、その他の「保全手続き」(契約を維持・管理するための手続き)は、同社ホームページの問い合わせ窓口で受け付ける。保険金・給付金の支払いなどを除き、営業社員を通じた手続きはできないとしている。

項目 停止期間中の扱い
営業社員による新規の募集・契約締結 停止
営業社員による訪問・電話・電子メールでの連絡 できない
加入中の契約の保障 影響なし
保険金・給付金の支払い 影響なし
契約内容の変更・解約などの保全手続き ホームページの問い合わせ窓口で受け付け
代理店を通じた新規販売 継続(命令の対象外)
ジブラルタ生命の業務停止期間中(2026年10月13日〜2027年1月31日)の主な扱い

出典: ジブラルタ生命保険「弊社営業社員を通じた営業活動等の一時停止について」(10月15日更新)、3社連名「金融庁による行政処分について」(10月9日)

持株会社と両社が処分当日の10月9日に連名で出した発表でも、加入中の契約の保障、保険金・給付金の支払い、契約内容の変更、解約などの保全手続き、問い合わせ、被害の申し出には「適切に対応」するとしていた。今回の文書は、その窓口が営業社員ではなく会社の問い合わせ窓口になることを具体的に示した形だ。

代理店を通じた販売は続く

金融庁の命令は、営業社員による新規販売が対象だ。金融庁は処分の理由の中で、ジブラルタ生命は営業社員による販売のほか、一般の代理店による販売も行っていると説明している。10月9日の3社の発表は、ジブラルタ生命の代理店チャネルによる新規販売は「本命令の対象外」とした。同社の今回の文書も「弊社委託代理店を通じた業務は継続いたします」と記している。

つまり停止期間中も、ジブラルタ生命の保険に代理店を通じて新しく加入することはできる。一方、同じグループのプルデンシャル生命は営業社員だけを販売の窓口としてきた。同社は2026年2月から新規契約の販売活動を自粛しており、命令を受けて営業社員の活動停止は2027年1月31日まで続く。停止期間が終わった後の活動については、顧客への補償の状況や問題事案の調査・処分、再発防止態勢を確かめたうえで「慎重に判断」するとしている。

業務停止の対象からは、金融庁が「契約者保護の観点から必要とされる業務」として個別に認めたものも除かれる。どの業務が個別に認められたのかは、今回の文書では明らかにされていない。

補償を担う執行役員を新設 ジブラルタ生命分の審査確定は123人

ジブラルタ生命は10月16日、役員人事を発表した。10月15日付で、田中秀尚氏が執行役員「Chief Remediation Officer」に、木内幸一氏が執行役員(大塚執行役員常務付 特命担当)に就いた。英語の「remediation」は是正や救済を意味する言葉だが、同社は発表の中でこの役職の具体的な職務を説明していない。

被害を受けた顧客への補償は、グループから独立した第三者でつくる「お客さま補償委員会」が審査している。10月8日に公表された9月16日時点の進捗によると、1月16日に公表したプルデンシャル生命の事案を除く両社の顧客からの申し出のうち、審査結果が確定したのは848人で、ジブラルタ生命分はこのうち123人だった。ジブラルタ生命分で補償の対象となったのは57人(4.1億円)、認められなかったのは66人だった。会社別の内訳は、申し出時の内容に基づいて数えている。

補償の対象となった事案の主な行為は、金銭の貸し借りや投資の勧誘・あっせんだった。補償を受けられなかった例として、不適切な投資先の紹介はあったが金銭のやり取りや投資は行われていなかった場合や、元社員などからすでに全額が返されていた場合が挙げられている。

被害の申し出は、持株会社が1月26日に開設したグループ共通の「プルデンシャルグループ特設問い合わせ窓口」(0120-473-160、平日9時〜18時、土曜9時〜17時)で受け付けている。プルデンシャル・グループに在籍していた営業社員による金銭不祥事が対象で、受け付けた内容は委員会に伝えられ、委員会が補償の要否を判断する。

金融庁が指摘した「密室化された関係」

金融庁は処分の理由で、ジブラルタ生命の営業社員と顧客の関係に踏み込んだ。同社は即戦力の採用を重視し、短期間で成績を上げることを求めたため、営業社員が個人的な人脈を最大限使って営業することが一定程度あった。金融庁は、これが本部や営業管理職の把握できないところで営業社員が顧客と接触する「密室化された関係」を容認することにつながったと指摘した。

そのうえで、営業社員(退職者を含む)による保険業務に関連した金銭の不適切な取り扱いに加え、保険と関係のない投資商品の勧誘や個人的な金銭の貸し借り、不明瞭な金銭のやり取りが「継続的に多数発生している」と認定した。営業管理職の報酬や評価が営業社員の採用実績や成績に大きく左右されるため、「営業推進の妨げとならないように」と営業社員への忖度が働き、管理が実質的に行われていなかったとも述べている。

顧客情報の扱いも問題視した。担当する顧客は「会社の顧客」ではなく「自分の顧客」だという意識が営業社員の間に広がっており、退職した営業社員が顧客の連絡先などを持ち出す事案が起きた。金融庁は、同社の類似案件の調査は範囲や実効性が不十分で、表に出た事案以外にも持ち出しやその疑いがある事案が多く潜んでいる可能性があるとした。

11月30日までに改善計画

金融庁はジブラルタ生命に対し、過去の取締役を含む経営責任の明確化、金銭不祥事の徹底した調査と被害回復、不祥事を起こした社員の処分、報酬制度の見直しを含む営業推進・管理態勢の確立、コンプライアンスと顧客保護を重んじる組織風土づくり、ガバナンス態勢の抜本的な強化を求めた。改善計画は保険業やコーポレートガバナンスに詳しい外部の専門家のレビューを受けて策定し、11月30日までに提出する。その後は3か月ごとに進捗を翌月15日までに報告し、初回の報告基準日は2027年2月末とした。

同社は10月9日の発表で、長期的な顧客との関係を重視した営業社員の報酬制度への見直しや、顧客との継続的な接点を組織として支える体制の構築を進めているとした。3社は改善計画を提出する際に改めて公表するとしている。