映画大手の東宝は10月15日、2027年2月期の中間決算(2026年3〜8月、日本基準)を発表した。営業収入は1,851億6,200万円で前年同期の1,916億7,700万円から3.4%減り、本業のもうけを示す営業利益は309億3,800万円(前年同期比24.8%減)、経常利益は331億2,700万円(同21.5%減)だった。映画館への国内配給収入が前年同期を3割余り下回った。通期の営業利益予想は据え置いた一方、第3四半期に投資有価証券の一部を売却するとして、純利益の予想を410億円から480億円に引き上げた。

減収減益、純利益は4割減

決算短信によると、親会社株主に帰属する中間純利益は200億1,900万円で、前年同期の334億5,000万円から40.2%減った。前年同期は投資有価証券の売却益89億1,300万円を特別利益に計上していたが、今期の中間期は特別利益がなかった。1株当たり中間純利益は24円00銭(前年同期は39円45銭)。同社は2026年3月1日付で1株を5株に分割しており、前年同期の数字も分割後の株数に置き直している。

中間連結損益計算書をみると、売上総利益は830億8,300万円と前年同期(846億7,200万円)並みだったが、販売費及び一般管理費が435億2,500万円から521億4,400万円に増えた。人件費が138億7,600万円から158億5,700万円に、広告宣伝費が45億4,500万円から54億500万円に増え、「その他」の費用も173億5,400万円から230億1,500万円に膨らんだ。経常段階では、受取配当金が12億2,900万円から27億400万円に増えたことが減益幅をやや縮めた。

項目 前年中間期 当中間期 前年同期比
営業収入 1,916億7,700万円 1,851億6,200万円 3.4%減
営業利益 411億4,600万円 309億3,800万円 24.8%減
経常利益 421億9,200万円 331億2,700万円 21.5%減
中間純利益 334億5,000万円 200億1,900万円 40.2%減

東宝の事業は、映画の製作・配給と映画館運営を担う「映画」、アニメなどの作品の権利(IP)を国内外で使わせて稼ぐ「IP・アニメ」、ミュージカルなどの「演劇」、ビルの賃貸や道路の維持管理を手がける「不動産」の4部門で構成する。4部門すべてで営業利益が前年同期を下回った。

部門別の中間期営業利益(億円)

前年中間期当中間期

映画231.9194.0IP・アニメ107.059.7演劇10.08.5不動産104.699.0
セグメント利益。全社費用などの調整前出典: 東宝「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信」
数値で見る(単位: 億円)
項目前年中間期当中間期
映画231.9194.0
IP・アニメ107.059.7
演劇10.08.5
不動産104.699.0

映画は配給が3割減、映画館は入場者4.2%減

映画事業全体の営業収入は911億7,700万円(同12.1%減)、営業利益は194億円(同16.4%減)だった。

作品を映画館に配給する映画営業事業の営業収入は286億3,400万円(同26.2%減)、営業利益は84億9,900万円(同25.0%減)。このうち映画館への国内配給は230億1,500万円で、前年同期から32.1%減った。短信は「劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』」と「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」を大ヒット、「キングダム 魂の決戦」「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」「SAKAMOTO DAYS」などをヒットと記している。(「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」7月24日公開 シリーズ初の劇場版、IMAX同時上映も決定)。一方で、作品を配信などに使わせる映像の利用・許諾の収入は52億4,900万円と28.7%増えた。Netflixと初めて共同で開発した「ガス人間」に関する事業収入が業績に貢献したという。

映画館を運営する映画興行事業は、営業収入が551億5,500万円(同2.4%増)、営業利益は103億4,500万円(同3.5%減)。TOHOシネマズなどの入場者数は2,623万4,000人で、前年同期から4.2%減った。「トイ・ストーリー5」「Michael/マイケル」(「Michael」2週連続首位、黒沢清「黒牢城」初登場2位 週末映画ランキング)などを上映した。短信は、劇場運営を取り巻くコスト環境の変化を受け、7月1日からTOHOシネマズの映画鑑賞料金の一部を改定したことにも触れている。

劇場は3月に「TOHOシネマズ 大井町」(東京都品川区、8スクリーン)、6月に「TOHOシネマズ 名古屋栄」(名古屋市中区、10スクリーン)を開業し、8月に「TOHOシネマズ 与次郎」(鹿児島市、10スクリーン)を閉館した。グループが運営するスクリーン数は8増の725(共同経営の56を含む)となった。舞台美術の製作などの映像関連事業は、前年同期に計上した大型案件の反動で、営業収入が73億8,700万円(同33.3%減)、営業利益が5億5,500万円(同51.3%減)に落ち込んだ。

IP・アニメは増収減益

IP・アニメ事業の営業収入は431億3,200万円(同15.6%増)と伸びたが、営業利益は59億7,000万円で前年同期から44.2%減った。

収入の内訳は、配信などの映像の利用・許諾が192億700万円(同22.7%増)、キャラクター商品をつくる権利を貸す商品化権等の利用・許諾が63億3,200万円(同21.8%減)、パンフレットやグッズなど商品の販売が129億900万円(同33.8%増)だった。短信は、製作に出資したアニメ「呪術廻戦」「僕のヒーローアカデミア」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」の国内外での配信や配分金、「ゴジラ」などの商品化権収入が業績に寄与したとしている。グッズでは「映画ちいかわ」「名探偵コナン」の映画関連商品や「ゴジラ」商品の販売が好調だったという。

同社は2026年3月1日付で、東宝が権利を持つ映像作品やコンテンツを海外市場向けにライセンスする事業を子会社のTOHO Globalに移す会社分割を行った。中間期には、Anime Limitedを新たに連結の範囲に加えた。短信は、IP・アニメ事業が増収のなかで減益となった理由を個別には説明していない。

演劇・不動産も減益、空室率は0.3%

演劇事業は、シアタークリエで「ブラッド・ブラザーズ」「レベッカ」などを上演し、外部の劇場でも「メリー・ポピンズ」「チャーリーとチョコレート工場」などを公演した。営業収入は95億8,900万円(同10.4%減)、営業利益は8億4,500万円(同15.2%減)だった。

不動産事業全体では、営業収入が400億800万円(同1.8%増)、営業利益は98億9,500万円(同5.4%減)。ビル賃貸は賃貸用不動産の空室率が中間期末で0.3%と高い稼働を保ち、営業収入187億5,900万円(同0.7%減)、営業利益67億3,700万円(同3.0%減)だった。道路の維持管理・清掃を担う道路事業は、営業収入が151億6,300万円(同3.5%増)と伸びたが、建設技能者の不足や労務費・資機材価格の上昇に加え、前年同期に計上した価格スライド分がなくなり、営業利益は24億5,900万円(同11.5%減)だった。ビルの保守・管理事業も資材価格や労務費の上昇で増収減益となった。

中間期末の総資産は7,166億4,100万円、自己資本比率は73.1%だった。

通期予想は据え置き、純利益は売却益で上方修正

通期(2026年3月〜2027年2月)の業績予想は、営業収入3,450億円(前期比4.3%減)、営業利益620億円(同8.7%減)、経常利益670億円(同4.5%減)を4月14日公表の数値のまま維持した。中間期の営業利益は通期予想の約5割にあたる。前期の実績は営業収入3,606億6,300万円、営業利益678億8,900万円だった。

親会社株主に帰属する当期純利益の予想は、410億円から480億円へ70億円(17.1%)引き上げた。業績予想の修正に関するお知らせによると、第3四半期(2026年9〜11月)に投資有価証券の一部を売却することに伴うもので、1株当たり当期純利益の予想は48円85銭から57円62銭になる。上方修正後も、前期の純利益517億6,800万円は7.3%下回る見通しだ。

配当は、中間配当を1株11円とし、期末も11円、年間22円とする予想を維持した。株式分割前の前期の年間配当110円は、分割後の株数に換算すると22円にあたる。同社の株主還元方針は「年間17円の配当を下限に配当性向35%以上」で、純利益予想を引き上げたことを受けた期末配当の扱いについては、この方針に基づいて「引き続き検討」するとしている。