金融庁は10月9日、プルデンシャル生命保険とジブラルタ生命保険に対し、保険業法132条1項に基づく業務停止命令と業務改善命令を出した。両社は10月13日から2027年1月31日までの111日間、保険募集と保険契約の締結を停止する。営業社員による金銭の不適切な取り扱いが長年続いたのに、歴代の経営陣が業績に連動した報酬制度などを見直さずに放置したと認定した。両社を傘下に持つプルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン(持株会社)にも、同法271条の29第1項に基づく業務改善命令を出した。

3社に11月30日までの改善計画を求める

金融庁が両社に命じた業務停止の対象は、保険募集と保険契約の締結だ。契約者保護の観点から必要な業務として金融庁が個別に認めたものは除く。

業務改善命令では、両社に5つの項目の実施を求めた。過去の取締役を含めた経営責任の明確化、営業職員による金銭不祥事の徹底した調査と被害回復などの顧客対応、不祥事を起こした社員の処分(営業管理職の管理責任を含む)、営業職員の報酬制度の見直しを含む営業推進・管理態勢の確立、営業優先ではなくコンプライアンスと顧客保護を重視する組織風土の醸成である。これらを定着させるための経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化も加えた。プルデンシャル生命については、報酬制度に加えて「支社運営制度」の見直しも明記した。

改善計画は、保険業やコーポレートガバナンスに詳しい外部の専門家のレビューを受けて策定・実施するよう求めた。提出期限は11月30日で、提出後はただちに実行し、3か月ごとに進捗と改善状況を翌月15日までに報告させる。初回の報告基準日は2027年2月末とした。

持株会社に対しては、経営責任の明確化に加え、子会社である2社の内部統制が十分に機能しているかを適時に把握する態勢づくりや、子会社に健全な組織風土を根付かせる態勢の構築を命じた。提出期限と報告の頻度は2社と同じだ。

プルデンシャル生命 「支社任せ」で歯止めが効かず

金融庁は処分の理由で、プルデンシャル生命の営業の仕組みそのものに踏み込んだ。同社は「ライフプランナー(LP)」と呼ぶ営業社員だけを販売の窓口とし、報酬は業績と完全に連動する「フルコミッション」で、活動時間や場所も基本的に自由とする勤務形態を他社との違いとして打ち出してきた。LPは全国の支社ごとに採用され、原則としてその支社に所属して営業する。金融庁は、この支社運営制度によって支社長を頂点とする各支社が社内で存在感と独立性を強めていったと指摘した。

近年の支社の新設やLPの増加で、金融機関の社員に求められる倫理観やコンプライアンス意識を持たず、金銭に執着の強い者が入り込み、金銭不祥事がたびたび起きた。不祥事を起こした者には、本来LPを管理・指導すべき営業管理職も多く含まれていた。

それでも歴代の経営陣は営業推進を優先してビジネスモデルの維持にこだわり、問題を長年放置した。金融庁は、この姿勢が本社・本部が営業の第一線に「物が言えない」「支社任せ」の企業風土を助長したと断じた。その結果、保険業務に関係しない投資商品の勧誘や個人的な金銭の貸し借りが続いたほか、不適切な募集による多額・多件数の契約や乗り換え契約、退職したLPによる顧客情報の不正な持ち出し、前職で得た個人情報の不正な持ち込み・使用の疑いなどが多数見つかった。

態勢面でも、不祥事を受けた営業自粛の期間中にLPの行動を実質的に把握しておらず、営業管理職の承認を得ないまま顧客と接触した事例があったことや、多額・多件数契約や乗り換え契約を検知する態勢を整えていなかったことを挙げた。LPの採用時に候補者の人脈を把握する採用ツールについても、個人情報の不正な持ち込みを防ぐ管理態勢がなく、不正な持ち込み・使用が行われた「蓋然性が高い」とした。処分理由の検証には、同社の社外特別調査委員会の報告書も踏まえたという。

ジブラルタ生命 「密室化された関係」を容認

ジブラルタ生命は「ライフプラン・コンサルタント(LC)」と呼ぶ営業社員のほか、一般の代理店を通じても保険を売っている。金融庁によると、同社が2001年に営業を始めた当時は、プルデンシャル生命の出身者が経営陣の中心を占め、設立当初から同社と似た採用・育成・販売の仕組みを取り入れてきた。

即戦力の採用を重視し、短期間で成績を上げるよう求めたため、LCが個人的な人脈を最大限使って営業することが一定程度あった。金融庁は、LCが本部や営業管理職の把握できないところで顧客と接触する、いわば「密室化された関係」を容認することにつながったと指摘した。

金銭詐取が多発し、原因が成績に傾いた報酬制度や表彰制度にあると認識しながら、経営陣はLCの退職増加や業績の低下を懸念して抜本的な見直しをしなかった。グループ会社のプルデンシャル生命で投資商品の勧誘や個人的な金銭の貸し借りが多数見つかっていたのに、自社でも同じことが起きうるとは位置づけなかった。プルデンシャル生命が2月に営業自粛を決め、4月に期間を延長した後も、同様の事案がすでに多数見つかっていたジブラルタ生命の経営陣は、営業自粛などの緊急措置の必要性を検討しなかったという。

営業管理職の報酬や評価がLCの採用実績や成績に大きく依存しており、「営業推進の妨げとならないように」とLCへの忖度が働いたことも挙げた。顧客は「会社の顧客」でなく「自分の顧客」だという意識がLCに広がっており、退職時に顧客情報を持ち出す事案も起きた。金融庁は、表に出た事案以外にも持ち出しやその疑いが多く潜んでいる可能性があるとした。

持株会社は子会社の管理が「機能不全」

持株会社は、プルデンシャル生命、ジブラルタ生命、プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険の3社を傘下に持ち、それぞれと「経営管理契約」を結んでいる。金融庁は、3社でそれぞれ重大な問題が発覚したと指摘した。プルデンシャル生命とジブラルタ生命の営業社員による金銭不祥事に加え、プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命では委託先の代理店への出向者を通じた不適切な情報の取得・持ち出しがあった。同社は今回の処分の対象には入っていない。

金融庁は、フルコミッションの報酬制度が金銭への執着の強い営業職員を呼び込み、優績者を過度に重んじる表彰制度がコンプライアンスより営業を優先する企業文化を助長したと分析した。そのうえで、歴代の経営陣は子会社のビジネスモデルのリスクを認識しながら、営業や収益への影響を懸念して見直しをさせず、子会社管理を長年怠ったと認定した。

具体的には、子会社の自主性を過度に尊重して業務の情報を適時につかんでおらず、プルデンシャル生命の営業自粛期間中にLPの管理がどう行われているかも把握していなかった。監査部門は持株会社に一元化したものの、子会社から出向した監査担当者がそれぞれ出向元の監査を担当するなど縦割りのままで、グループ共通の構造的な問題の検知が遅れた。持株会社と子会社の経営陣に内部監査の役割を否定するような言動があったことや、内部監査部門が問題の重大さに見合った報告を経営陣にしていなかったことも挙げた。

既存契約は継続、補償の審査は第三者委が

3社は処分当日の10月9日に連名で発表し、「行政処分を厳粛に受け止め」るとして謝罪した。今回の業務停止は営業社員による新規の保険販売が対象で、すでに加入している契約の保障、保険金・給付金の支払い、契約内容の変更や解約などの手続き、問い合わせや被害の申し出には対応するとしている。ジブラルタ生命の代理店を通じた新規販売は命令の対象外だという。

プルデンシャル生命は、11月5日まで新規契約の募集を自粛している最中だった。命令を受けて2027年1月31日まで営業社員の活動を止め、その後の再開は、顧客への補償や問題事案の調査・処分、再発防止態勢の状況を確認したうえで「慎重に判断」するとしている。持株会社は2026年1月以降に経営体制を刷新し、10月には独立した外部専門家でつくる「改善諮問委員会」(仮称)を置いた。

被害の補償については、3社が10月8日に9月16日時点の進捗を公表している。プルデンシャル生命が1月16日に公表した金銭に関わる不適切な行為の影響を受けた498人(30.8億円)のうち、492人の審査や補償が終わった。内訳は、補償の対象となった人が204人(9.2億円)、元社員などから返金を受けていた人が138人(7.9億円)、補償が認められなかった人が150人(13.7億円)で、6人(300万円)が審査中だ。

この事案とは別に、両社の顧客から寄せられた申し出は、グループから独立した第三者でつくる「お客さま補償委員会」が審査している。審査が確定した848人のうち、補償の対象となったのは329人(25.7億円)で、プルデンシャル生命分が272人(21.6億円)、ジブラルタ生命分が57人(4.1億円)だった。主な行為は金銭の貸し借りや投資の勧誘・あっせんで、補償が認められなかったのは519人だった。会社側は、補償の進捗を今後も四半期ごとをめどに公表するとしている。