厚生労働省は9月25日、人材派遣会社2社の労働者派遣事業の許可を取り消したと発表した。1社は、外国人に不法就労をさせた罪で罰金刑が確定し、法律の定める欠格事由に当たったためで、有料の職業紹介事業の許可も同時に取り消された。もう1社は、グループ内の会社への派遣に関する報告書を出さず、指導と指示にも従わなかったことによる処分だ。
不法就労助長の罰金刑が確定し、派遣と職業紹介の両方を失う
1社は愛知県一宮市の株式会社ファブレスである。厚労省の発表によると、同社は出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2第1項第1号の罪を犯したことにより罰金刑に処せられ、令和8年1月7日に刑が確定した。この条文が罰するのは「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」で、法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と定められ、その両方を科すこともできる。
罰金刑の確定により、同社は労働者派遣法第6条第1号と職業安定法第32条第1号が定める欠格事由に該当した。この欠格事由は、入管法第73条の2第1項の罪で罰金刑に処せられた者について、その執行を終えた日などから5年を経過するまでは許可を受けられないとしている。厚労省はこれを受け、労働者派遣法第14条第1項第1号と職業安定法第32条の9第1項第1号に基づき、9月25日付で二つの許可を取り消した。
同社が受けていた許可は、労働者派遣事業が平成28年11月1日(許可番号 派23-301699)、有料の職業紹介事業が令和2年1月1日(同 23-ユ-302084)に出されたものだった。人を集めて送り出す側の事業者が、外国人の就労をめぐる刑事罰によって、派遣と職業紹介の看板を一度に失ったことになる。外国人の受け入れ現場をめぐる労働行政の動きは、技能実習生を使う職場、73.2%で労働法令違反 特定技能は76.5% 建設業は8割超 厚労省が2025年の監督結果 でも取り上げた。
もう1社は「グループ企業への8割規制」の報告書を出さず
もう1社は東京都港区の株式会社DAYDREAMで、許可年月日は令和元年11月1日(許可番号 派13-314397)。根拠となったのは労働者派遣法第14条第1項第4号で、こちらは刑事罰ではなく、報告書の不提出が積み重なった末の取消しだ。
厚労省の発表によると、同社は労働者派遣法第23条第3項が義務づける「関係派遣先派遣割合報告書」を、施行規則第17条の2の期限、すなわち毎事業年度が経過した後3か月が経過する日までに提出しなかった。その後、第48条第1項に基づく指導に従わず、同条第3項に基づく指示を受けてもなお提出しなかったため、厚労省は取消しが相当だと判断している。
この報告書は、派遣会社が身内のグループ会社へ派遣を集中させていないかを行政が確かめるためのものだ。労働者派遣法第23条の2は、派遣元の経営を実質的に支配できる関係にある会社などを「関係派遣先」と呼び、そこへの派遣割合を80%以下に収めなければならないと定めている。割合の計算は、その事業年度に派遣労働者が関係派遣先で働いた総労働時間を、すべての派遣就業の総労働時間で割って求める。例えば派遣労働者の総労働時間が年10万時間なら、グループ会社での就業は8万時間までだ。報告書が出てこなければ、この線を守れているかどうかを行政は確認できない。
派遣会社への行政処分には、浜松の派遣会社に改善命令、静岡労働局 禁止された「労働者供給」を手助け 派遣法違反8項目で延べ1803人日 のように改善命令で済む段階もあり、許可の取消しはその中で最も重い。
4万を超える事業所のうち、5年で16社
厚労省が公表している「労働者派遣事業に係る行政処分」(令和8年9月8日現在)には、許可を取り消された事業者が16社載っている。この一覧は取消し日から5年以内のものだけを掲げ、関係派遣先派遣割合報告の未提出による処分は除く扱いで、今回のDAYDREAMは載らない。9月8日時点で最も新しかったのは、令和8年5月29日付で大阪労働局が扱った株式会社MLF groupだ。改善命令と事業停止命令の欄は、現在実施中のものが無く、いずれも記載がない。
母数は大きい。厚労省が令和8年3月31日に公表した令和6年度の労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によると、報告書を提出した事業所は43,812所で、そのうち実際に労働者派遣の実績があったのは33,207所、全体の75.8%だった。派遣労働者数は約220万人、年間の売上高は9兆9,005億円に上っている。8時間に換算した派遣料金は平均26,257円、派遣労働者の賃金は平均16,735円となっている。4万を超える事業所を抱える産業で、5年をさかのぼっても許可の取消しは16社しかない。
取り消された2社は、9月25日以降、労働者派遣事業を行えない。ファブレスについては、罰金刑の執行を終えた日などから5年を経過するまで、労働者派遣事業と有料の職業紹介事業のどちらの許可も受けられない。
