赤澤経済産業相は10月16日の閣議後記者会見で、冬場を前に値上がりしている灯油について、価格と供給の対策を強化すると表明した。石油元売事業者や輸入商社、卸売事業者に前年同月と同じ量の販売・注文を求めるほか、流通が滞った場合に元売が直接販売する「灯油直販スキーム」を新設し、輸入灯油の価格と国内の卸売価格の差額を「輸入灯油調整単価」として補助する制度を導入する。

赤澤氏は「灯油を含む石油製品は日本全体として必要となる量を確保できている」と述べ、「決して供給不足に陥る状況にはない」と繰り返した。一方で、国際的な精製能力の低下により輸入灯油の価格は原油に比べて高止まりしており、国内価格もその影響を大きく受ける可能性があるとして、手を打つ必要があると説明した。

3本の対策の中身

会見で示された対策は3点ある。

1点目は、石油元売事業者、輸入商社、卸売事業者などに対し、前年同月比で同じ量の販売と注文をするよう要請することだ。赤澤氏によると、一部の卸売事業者などが例年の需要を大幅に上回る注文を出す動きがあり、これを受けて一部の元売が、取引先に想定需要に沿った注文をするよう求める動きも出ている。こうした動きが、冬の灯油が手に入らなくなるのではないかという不安を一部の国民の間に広げているという。前年並みの量で売り買いするよう求めることで、買いだめと出し渋りの双方を抑える狙いがある。

2点目は「灯油直販スキーム」の新設だ。供給に偏りが出たり、流通の途中で目詰まりが起きたりした場合に、石油元売事業者から直接販売する仕組みとした。

3点目が「輸入灯油調整単価」による補助である。輸入した灯油の価格と国内の卸売価格の差額を補助する。輸入品の割高分を国が埋め、国内の小売価格に跳ね返りにくくする仕組みとなる。

会見では、補助の金額や対象となる期間、制度が始まる日付は示されなかった。17日夕の時点で、経済産業省の報道発表の一覧に、この制度の詳細を示す資料は見当たらない。

赤澤氏は、寄せられた個別の相談や要請を「一件一件着実に解消」していくとも述べた。また、2月28日に中東情勢が緊迫化して以降、試行錯誤で実施してきた政策と「基本的には同じ相手」だとして、これまでの対応が機能するとの見方を示した。

北海道は全国平均を13円余り上回る

会見では記者が、北海道の灯油価格が全国平均より10円以上高い水準にあると指摘し、この水準を適切と考えるかどうかを尋ねた。赤澤氏は、北海道は他の都府県に比べて灯油の小売価格が高く、上昇傾向にあることを承知しているとしたうえで、記者が触れた北海道生活協同組合連合会の件を含め、供給の偏りや目詰まりを解消していくと答えた。

資源エネルギー庁が10月15日に公表した石油製品価格調査で、店頭で売られる灯油の1リットル当たりの価格(消費税込み)を見ると、10月13日時点で北海道は155.5円、全国平均は142.4円だった。差は13.1円で、記者の指摘した「10円以上」に当たる。

地域 店頭価格(円)
沖縄 163.2
北海道 155.5
九州 143.1
中国 143.0
全国平均 142.4
関東 141.7
近畿 141.7
東北 141.0
四国 140.9
中部 140.1
灯油の店頭価格(10月13日、1リットル当たり)出典: 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(10月15日公表、経済産業局別)

地域別で最も高いのは沖縄の163.2円だが、北海道は直近で値上がりが目立つ。8月31日から9月28日までは1リットル145円台で横ばいだったが、10月5日に152.5円、13日に155.5円と2週続けて上がった。全国平均は同じ期間に140.8円から142.4円への上昇にとどまる。

調査日 北海道(18リットル) 北海道(1リットル) 全国(1リットル)
8月31日 2,622円 145.7円 140.8円
9月14日 2,622円 145.7円 140.8円
9月28日 2,620円 145.6円 141.0円
10月5日 2,745円 152.5円 141.8円
10月13日 2,799円 155.5円 142.4円
灯油の店頭価格の推移(現金、消費税込み)出典: 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(10月15日公表)

家庭に届けてもらう配達価格でも、北海道は10月13日に18リットル2,847円(1リットル158.2円)と、全国平均の2,749円(同152.7円)を上回った。価格調査は灯油を18リットル単位でも集計しており、北海道の店頭価格は8月末から10月13日までに1缶当たり177円上がった。

赤澤氏は、価格は地域の事情で他の都府県より高くなることは起こり得るとしつつ、直販スキームなどで「しっかり玉が出てくる」ことが周知されれば、北海道の灯油価格が「徐々に落ち着いていくことを期待している」と述べた。

3月から続く燃料油の補助との関係

灯油はすでに、国の燃料油の補助の対象になっている。資源エネルギー庁によると、政府は中東情勢を受けた「緊急的激変緩和措置」として、3月19日からガソリン、軽油、重油、灯油、航空機燃料への支援を始めた。燃料油の元売に価格引き下げの原資として補助金を出し、店頭価格を抑える仕組みだ。補助の単価は週ごとに改定される(これまでの単価の推移は「ガソリン補助、7月9日以降は1リットル2.8円 燃料油の価格抑制策 暫定税率の結論まで継続」)。

10月15日以降の支給単価は、ガソリン、軽油、灯油・重油がいずれも1リットル43.0円、航空機燃料が34.4円となっている。

この補助には、すでに「調整単価」という仕組みが組み込まれている。資源エネルギー庁の資料によると、中東情勢の変化以降、元売や輸入事業者は中東以外から原油などを調達する「代替調達」を広げており、その際に国際市場価格を上回る金額を支払っている(調達先の多角化をめぐる政府の動きは「原油調達多角化など資源3法案を閣議決定 ホルムズ迂回に交付金、再保険停止は政府が肩代わり」)。この上乗せ分を、調達の実態に応じて月ごとに算定し、翌月の支給単価に反映させるのが調整単価だ。ガソリンの全国平均小売価格を170円程度に抑える観点から7月に導入され、10月分は1リットル3.7円とされている。

今回打ち出された「輸入灯油調整単価」は、名前は似ているが、輸入灯油の価格と国内卸価格の差額を対象とする点で、原油の調達費用を対象とする既存の調整単価とは狙いが異なる。既存の補助にどう上乗せされるのか、補助の水準はどうなるのかは、制度の詳細が公表されるのを待つ必要がある。

「量はある」のに不安が広がる構図

今回の対策の背景には、「全体の量は足りている」という政府の説明と、店頭や流通の現場で起きている動きとのずれがある。

赤澤氏は会見で、灯油を含む石油製品は日本全体で必要な量を確保できており、今後も確保できる見通しだと説明した。そのうえで、一部の卸売事業者などが例年を大きく上回る注文を出し、元売側が注文を想定需要に沿わせるよう求めるといった動きが、消費者の不安につながっていると認めた。不安が先行して注文が膨らめば、特定の地域や販売店で品薄が起き、それが価格を押し上げる要因になる。前年並みの販売・注文の要請と直販スキームは、こうした流通の偏りに直接手を入れる策と位置づけられる。

一方、輸入灯油の割高さは、国際的な精製能力の低下という国外の要因に根ざしている。赤澤氏は同じ会見で、国際エネルギー機関(IEA)の石油市場レポートについて問われ、世界的な軽油市場の逼迫が2027年にも続く見通しが示されたと承知していると答えた。冬の需要期を前に、輸入価格の動向が国内の灯油価格を左右する構図が続く。

赤澤氏は、灯油が冬の暖房に欠かせない燃料であり、寒冷地では「まさに命に関わる問題」との認識を示した。今後は、輸入灯油調整単価の金額や開始時期、直販スキームを使える条件などの詳細が、冬の本格的な需要期に間に合う形で示されるかが焦点となる。