参議院予算委員会で10月16日、高市早苗首相と全閣僚が出席する基本的質疑が開かれた。立憲民主党の発表によると、同党からは委員会の筆頭理事を務める辻元清美氏が最初に質問に立ち、簗和生前農林水産相の辞任への対応、米国産ジャガイモの輸入検疫、陸上自衛隊の現地情報隊による個人情報の記録とされる問題、10月2日のG7首脳オンライン会議の欠席など6つの論点をただした。続いて吉川沙織、高木真理、山内佳菜子、熊谷裕人の各氏が質問した。本記事の質疑と答弁の内容は、立憲民主党が公表した要約に基づく。参議院の会議録は17日時点で公開されていない。

冒頭で首相が陳謝、辻元氏「発言の時点でけじめを」

立憲の発表によると、質疑に先立ち、委員会の冒頭で高市首相が簗前農水相の辞任に伴う任命責任について陳謝した。後任の農水相には武部新氏が就いている。辞任の経緯は農水相の後任は武部新氏 簗和生氏が在任29日で辞任、首相「任命責任を重く受け止める」に詳しい。

辻元氏は、辞任では幕引きにならないとして、簗氏が国会で説明責任を果たすよう求めた。党の発表では、辻元氏は簗氏の参考人招致を自民党が拒んだと批判し、首相に対応を求めた。首相が本人の説明を優先したと述べたのに対し、辻元氏は「やはり発言の時点でけじめをつけるべきだと今なら思わないか」と迫った。招致について引き続き協議するよう求め、任命した責任に加えて、決断が遅れて国会や行政の混乱を招いた責任があるとして、首相の危機管理能力を問題にした。

参考人招致は、委員会が議員以外の人を呼んで意見を聴く手続きを指す。簗氏はすでに閣僚ではないため、閣僚として答弁する立場にはない。立憲は、辞任した後も国会の場で説明するよう求めている。参院予算委の日程をめぐる与野党の協議は参院予算委は7時間ずつ2日間・計14時間で与野党合意で伝えた。

陸自「現地情報隊」の問題、防衛相「真正性を確認できていない」

辻元氏は、陸上自衛隊の現地情報隊が国内の有識者らに聞き取りをする際、思想信条など41項目の個人情報を記録する「個人BSD報告書」などを作成していたとされる問題も取り上げた。この「41項目」や文書の名称は、立憲の発表が問題の内容として記しているもので、防衛省が認めたものではない。

立憲の発表によると、小泉進次郎防衛相は、報道された文書の出所や真正性を確認できていないと答弁した。辻元氏は入手した文書を大臣に渡す意向を示し、自ら確認するよう求めた。過去の日報問題を踏まえ、事実が後から明らかになれば「辞任になりかねない案件」だと警告したという。

防衛省は、この問題について記者会見でも同じ立場を示している。10月6日の閣議後会見の記録によると、現地情報隊が日本人の個人情報を組織的に調査・収集して報告書にまとめていたとされる問題を記者に問われ、小泉防衛相は「報道で言及されている文書については、防衛省・自衛隊が公表したものではなく、その出所や真正性も確認できていないことから、この文書を前提とした御質問についてお答えすることは差し控えます」と述べた。国会での答弁は、会見での説明を踏襲した形になる。

米国産ジャガイモの輸入協議、農水省は病害虫21種を特定

辻元氏は、食料輸入が途絶えた場合の備えとしてジャガイモやサツマイモなどイモ類の重要性を確認した。党の発表によると、武部農水相は、国内生産だけで食料のカロリーを最大限確保する場合の例として、イモ類を中心にした作付けを想定していると説明した。辻元氏が米国産の一般流通用の生鮮ジャガイモをめぐる輸入検疫協議で病害虫の侵入を防ぐよう求めたのに対し、武部農水相は、実効あるリスク管理措置について双方が納得できる合意がない限り輸入は解禁されないと答えたという。熊谷氏も同じ協議を取り上げ、国内の種芋農家への影響をただした。

農水省の説明資料によると、米国は以前から日本に生鮮ジャガイモの輸入禁止の解除を求めてきた。2006年にはポテトチップ加工用に用途を限り、閉鎖された施設の中で処理することを条件に解禁された。2020年には米国が、一般流通用として改めて解禁を求め、協議が続いている。一般流通用は加工用と違い、栽培に使われる可能性もあるため、転用のリスクを加味した管理措置が必要だと資料は説明している。

農水省は9月18日に協議の進捗についての説明会を開いた。資料によると、米国のジャガイモに寄生しうる病害虫約300種の中から、米国では発生しているが日本では発生していない54種を「潜在的病害虫」として特定した。そのうえで、通常の目視検査では対応できず、リスク管理措置が必要となりうる病害虫を21種(案)と特定した。今後は病害虫ごとの特性に応じた措置について米国と協議する必要があるとしている。武部農水相は就任会見でもこの協議に触れていた(武部新農水相が就任会見 備蓄米21万トン買い戻し「着実に」、米は「需要に応じた生産」継続)。

G7会議の欠席、消費税減税、憲法でも論戦

辻元氏は、10月2日のG7首脳オンライン会議を首相が欠席し、外務審議官が代理出席したことも問題にした。外務省の発表によると、会議は議長国フランスの主催で同日午後9時30分から約30分間開かれ、議題は米欧などのディーゼル価格を含む世界のエネルギー情勢だった。日本からは遠藤和也外務審議官が代理出席し、首相のステートメントを代読した。

立憲の発表によると、政府側は欧米間の問題が主な議題で、開催時間の確定も遅れたなどと説明した。辻元氏は、首相官邸や公邸にオンライン会議の設備があることや他国の首脳が出席したことを挙げて対応を疑問視し、首相が同日夕に公邸で会食していたことも確認した。首相は会食と欠席の関係を否定したという。

消費税では、首相が飲食料品の税率引き下げ時に価格を据え置く店について「風評に関わる」と述べたことを取り上げ、値下げしない店への攻撃につながりかねないと指摘した。そのうえで、高所得世帯ほど減税額が大きくなることなどを挙げ、中間層・低所得層に手厚い給付の方が有効だと主張した。憲法については、緊急事態への対応は既存の法律にも規定があるとして改憲の必要性を問い直し、首相から村山談話を含む歴代内閣の立場を引き継ぐとの答弁を得たと党は伝えている。

吉川・高木・山内・熊谷の4氏も質問

辻元氏に続いた4氏の主な論点は次のとおり。

質問者 主な論点
吉川沙織氏 統計と行政文書の管理、単身世帯の増加と生活保護、サイバーセキュリティ
高木真理氏 給付付き税額控除、ガソリン補助金の出口、クールジャパン機構の累積損失、官民投資370兆円目標
山内佳菜子氏 高額療養費の自己負担上限引き上げ、介護職員の処遇改善、若者の政治参加
熊谷裕人氏 ロシアでの邦人拘束、円安と金利上昇、米国産ジャガイモの輸入協議、文科相の政治資金パーティー、給付型奨学金
10月16日の参院予算委で質問した立憲民主党議員(辻元氏以外)と主な論点

出典: 立憲民主党「【参院予算委員会】吉川、高木、山内、熊谷各議員が質問」

党の発表によると、山内氏は8月の高額療養費の自己負担上限引き上げで治療を断念する患者が出かねないと指摘し、影響の調査と公表を求めた。首相は「受診行動の変化については丁寧に検証を行っていく」と答えた。介護職員と他産業との月額8.2万円の賃金格差を示して目標額と時期をただすと、首相は「現時点で示すことは難しい」と述べたという。

熊谷氏は、関芳弘文部科学相の政治資金パーティーをめぐる不記載や議員会館の使用を追及し、関氏は「議員会館での開催は行ってはならないと深く反省し、十分注意してまいります」と陳謝したと党は伝えている。給付型奨学金について首相は「予算を拡充し、奨学金制度で苦しむ方が困らないように制度の改定を文部科学大臣に指示している」と答弁したという。

吉川氏は不正アクセスの被害件数と攻撃手法を一元的に把握し共有する仕組みを求め、党の発表では首相が政府と民間の双方で一元的な把握と分析が必要との考えに同意を示した。高木氏は2040年度までに官民で370兆円規模とする投資目標について、投資を一覧で管理し透明性を確保するよう求めた。

今回伝えられた答弁は立憲の要約によるもので、首相や閣僚の発言そのものは、参議院の会議録が公開されれば確認できる。