経済産業省、情報処理推進機構(IPA)デジタル&AIシステムズ・デザインセンター(DADC)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は10月15日、電力、ガス、通信、上下水道の事業者が個別に管理している設備の図面を共通の形式に集め、一元的に扱うための「インフラ管理DXガイドライン Ver1.0(案)」を公表した。紙やPDFの図面ではなく、地図上で検索や解析ができるベクター形式のGISデータで登録することを求め、管路などの位置がどこまで正確かを示す「精度ラベル」をS・A・B・Cの4段階で付ける。IPAは11月16日まで、ウェブのフォームで意見を募っている。

4つの文書で「誰が何を取り決めるか」を整理

ガイドラインは4つの文書で構成される。全体の位置づけを説明する「概要」、データの項目や形式を定める「インフラ設備データ整備要件定義書」、データを預ける事業者・利用する企業と運営主体との契約のひな形となる「インフラ管理DXモデル規約」、運営主体が守るべき事項を定めた「データ整備機関運営規則」だ。要件定義書には、2025年度のNEDO実証で使った標準フォーマットの仕様書が附属書として付く。

中心に置かれるのが「データ整備機関」という新しい役回りだ。概要は、各公益事業者が個別に管理しているインフラ設備データを集約・連携し、共通のプラットフォーム上で一元管理する主体と定義している。事業者から図面などの「元データ」を受け取り、標準フォーマットへの変換や位置の補正をしたうえで「インフラ管理DXシステム」に登録し、照会などのアプリケーションを通じて利用者に渡す。

運営規則案は、この機関に業務の統括責任者と情報セキュリティの責任者を置くこと、データを預ける事業者へ少なくとも年1回、データの登録件数や利用状況、インシデントの発生状況などを報告することを求める。事業をやめたり他者に引き継いだりする場合は、少なくとも6か月前までに関係者へ知らせるとした。特定の第三者の利益だけを図る行為も禁じている。

データの権利の扱いも定めた。変換などの加工を経たあとのデータについても、利用条件を決める権利はデータオーナー(原則としてデータを出した事業者)にあると明記した。モデル規約案では、利用者は利用条件の範囲を超えて使えず、データを出した事業者が承諾しない限り第三者に渡してはならない。どの機関が運営主体を担うのかは、今回の文書からは確認できていない。

背景に設備の老朽化と人手不足

概要は、作成の背景として、電力、ガス、通信、上下水道の設備の老朽化と、維持管理を担う人手不足が深刻になっていることを挙げる。課題の一つが、各事業者の設備データが会社ごとに管理され、紙図面やデジタルデータなど形式もまちまちで、効率的な管理や活用が進んでいない点だという。

インフラ管理DXの目的は、設備情報のデジタル化と業界標準の形式での管理を進め、集めたデータを共通基盤で扱うことで、平時の業務の共通化・自動化と、災害時の応急復旧・早期回復を実現することにある。政府の「デジタルライフライン全国総合整備計画」の先行プロジェクトの一つで、ほかにドローン航路、自動運転サービス支援道、奥能登版デジタルライフラインが同じ枠組みで進んでいる。災害時の避難者把握をめぐる標準仕様の案は集会所のQRコードで避難者を把握 経産省・IPAが標準仕様の案 能登の実証は900か所・8450人が登録で伝えた。

これまでの歩みも概要に記されている。NEDOの2024年度事業では、さいたま市と八王子市を先行地域に、地下インフラの設備データを整備・流通させる実証をした。ところが2025年5月の「第2回インフラ管理DX普及戦略ワーキンググループ」では、データ整備の費用が高額であること、データを使う場面の需要が限られていることが課題として共有された。そこで、需要のある使い道に絞って、それに必要な分から少しずつ整備を進める方針に切り替えた。

2025年度の実証は、さいたま市、藤沢市、静岡市を対象に、民間で一定の需要が見込める「埋設物照会」と、国土交通省が効率化を検討している「道路占用物件管理」の2つに的を絞った。埋設物照会は、道路を掘る工事の前に、その下にどの事業者の管がどこに通っているかを確認する手続きだ。

管の位置・材質・設置年を共通の項目で

要件定義書案は、データを集める対象の設備を一覧にした。埋設管路では水道管、下水道管(汚水管、雨水管など)、ガス管、電力管、通信管、共同溝・洞道。電線類では地下の電力線・通信線と、地上の支線・共架電線。このほか電柱・電話柱、マンホール、ハンドホール、地下・地上の変圧器、換気塔、送電鉄塔などが並ぶ。警察や農業、鉄道の関連設備は、扱う段階で改めて検討するとした。

区分 主な対象設備 管理する主な事業者
埋設管路 水道管、下水道管、ガス管、電力管、通信管、共同溝・洞道 上下水道、ガス、電力、通信
電線類 地下の電力線・通信線、地上の支線・共架電線 電力、通信
電柱類 第1〜3種の電柱・電話柱 電力、通信
附帯施設 マンホール、ハンドホール、弁室・弁筐、変圧器、換気塔、送電鉄塔 上下水道、ガス、電力、通信
データ整備の対象とするインフラ設備(要件定義書案の表1を整理)

出典: インフラ管理DXガイドライン インフラ設備データ整備要件定義書 Ver1.0(案)

すべての設備に共通する項目は、管理する事業者名、ファイル名、データを一意に特定する「設備キー」、設置年、最終更新日時など。設置年は、老朽化の検討に支障がなければ運用開始年などで代えてもよい。埋設管路ではこれに加えて、平面上の形状を示すXY座標とその精度、高圧管・低圧管といった設備の種別、管の外径と内径、鉄管や塩ビ管などの材質を整備する。

データの形式は、紙図面を取り込んだJPGやPNG、PDFといった画像ではなく、ShapefileやCityGMLに代表されるベクター形式のGISデータとする。拡大や縮小で画質が落ちず、属性情報と結びつけて検索や解析ができるためだ。2025年度の実証ではShapefileを使った。ただし具体的な形式は、業界での利用状況や標準化の動向を見て定める必要があるとして、今回は特定していない。

不正確でも登録できるよう、精度を「ラベル」で示す

現実には、事業者が必要なデータを持っていなかったり、持っていても地震による地殻変動などで実際の位置とずれていたりする。要件定義書案は、正確な実測値で登録するのが原則としつつ、当面は、設計上の標準値、別のデータから一定のルールで読み替えた値、不正確なデータそのままの値のいずれかで登録しても効果があるとした。どれも難しければ空欄も認める。不正確なデータは、今後の掘削工事などの際に順次正しい値へ更新していく考えだ。

そのうえで、XY座標と、埋設の深さにあたる「土被り」の2項目には、登録時に精度ラベルを付ける。XY座標は、施工時の計測をもとにした「S」、工事竣工時の情報をもとに縮尺500分の1か1000分の1で管理される図面などに由来する「A」、竣工時の情報をもとに2500分の1未満の縮尺で管理される図面などに由来する「B」、位置や精度が把握できていない「C」の4段階。土被りは高・中・低の3段階とする。

活用例として挙げたのが、埋設物照会で管の敷設状況を自動で表示する際、データの精度に応じて余裕を見る範囲(マージン)を変える使い方だ。図面の新旧で精度が違うことはありうるが、作成時期から精度を判断するのは難しいため、一律に判断できる縮尺を基準にしたと説明している。

モデル規約案は、データを出す事業者も運営主体も、データの完全性や位置の正確さについて原則として保証しないと定める。誤りが見つかった場合は、協議して修正に努めるとした。

事業者に直ちに対応を求めるものではない

要件定義書案は、示した内容は望ましい要件であり、各事業者に直ちにこれに沿ったデータの提供を求めるものではないと明記した。まずは可能な範囲で整備と活用を始め、将来的に近づけてほしいという位置づけだ。

既存の業界基盤との関係にも触れている。水道には「水道情報活用システム」、下水道には「下水道共通プラットフォーム(通称:すいすいプラット)」があり、分野ごとの業界標準が整備されている。こうした基盤の仕様でデータを持つ事業者も、インフラ管理DXシステムへ提供できるよう、経産省、DADC、NEDOと関係機関が連携を進める方針だ。国交省が検討する「新たな道路占用関連システム」でのデータ活用でも、同省と連携しているとした。

意見募集の期間は10月15日から11月16日まで。IPAのページにある募集フォームから提出する。個別には回答せず、提出された意見は氏名とメールアドレスを除いて公開される可能性がある。寄せられた意見は今後の資料改訂の参考にするとしている。