厚生労働省は9月25日、有料老人ホームの届出や指導の状況を調べた「令和7年度 指導状況等のフォローアップ調査(第17回)」の結果を公表した。2025年6月30日時点で、入居時にまとまった前払金を受け取っているのに、法律で義務付けられた保全措置を取っていない施設が25か所あった。前年度の23か所から2か所増えた。都道府県などはこのうち13か所に指導を行ったが、調査時点で改善した施設は1か所もなかった。

前払金の保全措置とは何か

有料老人ホームでは、入居時に数百万円から数千万円の前払金(一時金)を一括で払い、その後の家賃に充てていく契約が広く使われている。老人福祉法第29条第9項は、こうした前払金を受け取る事業者に対し、算定の根拠を書面で示したうえで、返還する義務が生じた場合に備えて保全措置を講じるよう義務付けている。同法施行規則は、その中身を「銀行の債務の保証その他の厚生労働大臣が定める措置」と定めている。

保全措置は、事業者が経営に行き詰まって前払金を返せなくなったときに、第三者が代わりに支払う仕組みだ。これがないまま倒産されると、入居者が先に払った金は戻らず、住まいも同時に失うことになる。

前払金を受け取っている施設は全国で2384か所あり、このうち2359か所は何らかの保全措置を取っていた。内訳は銀行などによる連帯保証委託契約が898か所、信託会社などによる信託契約が773か所、全国有料老人ホーム協会の入居者生活保証制度が492か所、保険会社の保証保険契約が76か所、その他が120か所だった。措置を取っていない25か所の割合は1.0%で、前年度と同じ水準にとどまった。

未届は568か所、大阪49に対し東京は10

届け出のある有料老人ホームは1万7883か所で、前年度の1万7246か所から637か所増えた。一方、老人福祉法第29条第1項が義務付けている届出をしていない「未届」の施設は568か所で、前年度の584か所から16か所減った。全体に占める未届の割合は3.3%から3.1%に下がり、統計のある2009年以降で最も低くなった。

前年度に未届とされた584か所のうち、40か所は2025年6月30日までに届け出を済ませた。67か所は実態を調べた結果、事業をやめていたり食事などのサービスを提供していなかったりして、有料老人ホームに当たらないことが分かった。残る477か所は未届のままだった。この1年に新たに把握した未届の施設は121か所で、うち16か所は届け出を済ませ、14か所は該当しないと確認され、91か所が未届のまま残った。477か所と91か所を合わせた568か所が、今回の未届の数にあたる。

自治体別では北海道が89か所と最も多く、うち67か所は札幌市が所管する施設だった。愛知県80か所、兵庫県63か所、大阪府49か所、神奈川県47か所と続く。施設数そのものは大阪府が1578か所、東京都が1177か所と全国有数だが、東京都の未届は10か所にとどまり、地域によって差が大きい。

厚労省が通知、2026年には登録制も

厚労省は調査結果を受け、9月25日付で都道府県や政令市、中核市に通知を出した。未届の施設は速やかに実態を把握して届出を指導すること、関係部局や市区町村と連携して届出制度を周知すること、保全措置を取っていない事業者には重点的に指導・監督を行い、検査の拒否や改善命令違反があれば罰則の適用も視野に入れることを求めている。

有料老人ホームをめぐっては、2026年6月25日に公布された社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)により、老人福祉法が改正され、中重度の要介護者など特に保護の必要性が高い人を受け入れる施設に登録制が導入される。厚労省は9月18日に有識者検討会へ登録基準の案を示しており(有料老人ホームに登録制、厚労省が基準案 系列の介護事業所の利用を入居条件にするのは禁止 居室は原則個室で1人13平方メートル以上)、施行に向けた準備を進めている。届出制のもとで続いてきた今回の調査についても、2026年6月30日時点の状況を引き続き調べる予定だという。

高齢者の住まいは、老老介護、75歳以上同士が37.1%で2001年以降で最高 2025年国民生活基礎調査 終日介護する人の64.6%は配偶者が示すように、家族だけで支えるのが難しくなっている。入居を検討する際は、契約書で前払金の算定根拠と保全措置の有無を確かめ、届出済みの施設かどうかを都道府県などの公表資料で確認しておきたい。