環境省は10月26日、CO2の排出削減に最も大きな効果を持つ設備・機器を整理した「環境省LD-Tech(エルディーテック)」の2026年度版について、リストの案と水準表の案を公表し、意見の募集を始めた。期間は11月20日(金)午後5時まで。リストには換気設備や水素を燃やす温水機など4件を加え、性能の最高値を示す水準表では41の区分で数値を更新した。一方、水準表に載る1,016区分のうち261区分は最高値がまだ決まっておらず、環境省は今回、特にこの空欄を埋める性能データの提供を求めている。

「最高性能」を国が一覧で示す制度

LD-Techは「Leading Decarbonization Technology(先導的な脱炭素技術)」の略。環境省の説明では、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出の実質ゼロ)に向け、エネルギー起源のCO2排出を減らすうえで「最大の効果をもたらす」技術と、それを使った設備・機器を指す。

制度は3つの資料で成り立つ。1つ目の「リスト」は、環境省が脱炭素に重要と考える設備・機器の種類を並べたもの。2つ目の「水準表」は、リストに載った設備のうち商用化されているものを、能力や条件ごとの「クラス」(区分)に分け、区分ごとに市場で実現している最高の性能値を「LD-Tech水準」として示す。3つ目の「認証製品一覧」は、その水準を満たすとして環境省が認証した製品の型番を載せる。対象は産業・業務(業種共通)、産業(業種固有の製造設備など)、運輸、家庭、エネルギー転換、廃棄物処理・リサイクルの6部門にわたる。

環境省の概要資料は制度の狙いとして、脱炭素の面で最高性能の製品を示して設備を入れる側が選びやすくすること、メーカーに一段の高性能化を促すこと、埋もれた技術を掘り起こすことを挙げる。認証製品を自治体や金融機関の支援策と結び付けることも想定しており、制度紹介の頁は技術数を262、認証製品数を1,413と示している。

認証には、リストへの掲載、水準表での認証ルールの策定、年度ごとの認証製品募集への申請の3段階が要る。3つの資料は毎年度更新され、制度のページには2021年度版以降のリスト・水準表・認証製品一覧が掲載されている。なお、省エネ法の「トップランナー制度」の対象機器として指定される製品は、同じ製品を重ねて認証しないため対象外としている。

リストに換気設備や水素温水機など4件

2026年度のリスト案で新たに加わるのは次の4件。うち3件はメーカーからの提案を踏まえたもので、「温水機(水素・都市ガス混焼)」はリストの見直しに伴って加えた。

番号 設備・機器 分類
L-000265 ヒートポンプ式熱回収換気 産業・業務/空調・換気設備
L-000266 有機物磁気熱分解装置 廃棄物・リサイクル/中間処理
L-000267 温水機(水素・都市ガス混焼) 産業・業務/給湯・ボイラ
L-000268 BEMS(制御サービス・空調・熱源・個別方式・中央方式併用) 産業・業務/エネルギーマネジメント
2026年度環境省LD-Techリスト(案)で追加される設備・機器

出典: 環境省「環境省LD-Tech制度の概要及び前年度からの変更点」

ヒートポンプ式熱回収換気は、室内の空気を外へ出すときにその熱を冷媒で回収し、取り入れる外気の加熱や冷却に使う仕組み。冬は排気の熱で外気を温め、夏は外気の熱を排気側へ移すことで、換気に伴う冷暖房の負荷を減らす。水素・都市ガス混焼の温水機は、通常の温水機と違い水素用の低NOx(窒素酸化物)バーナーや安全装置を備える。BEMSはビルのエネルギー管理システムで、今回はビル用マルチエアコンのような個別空調と、中央の熱源で冷温水をつくる方式を併用する建物向けの制御サービスが対象になる。

水準表でも区分を9つ増やした。ヒートポンプ式熱回収換気で1区分、水素だけを燃やす「温水機(水素焚き)」と水素・都市ガス混焼の温水機で出力別に3区分ずつ、BEMSで2区分。BEMSの2区分は数値ではなく機能で判定し、熱負荷や外気の温湿度などを1分以内の細かさで計測し、熱源機や空調機の消費電力の合計が最も小さくなるよう運転を自動で計算・制御できること、導入できる施設が限られないことなどを条件にした。

41区分で最高性能値を更新

性能の最高値であるLD-Tech水準は、前年度の認証製品の性能や事務局の調査をもとに、41区分で更新などがあった。案では変更箇所を青字で示している。

更新された区分には、業務用の空調や冷凍機、窓やドアが並ぶ。概要資料によると、ガスヒートポンプ空調機(10馬力超16馬力以下)は期間成績係数2.20、フロン類などを冷媒に使うターボ冷凍機は冷房能力に応じて期間成績係数9.40〜10.10となった。成績係数は、使ったエネルギーに対してどれだけの冷暖房の能力を出せるかを示す値で、大きいほど効率が良い。

窓では、三層のLow-E複層ガラスと樹脂サッシを組み合わせた引き違い窓の熱貫流率が1平方メートル・1度あたり0.96ワット、金属製の玄関ドアが0.78ワットとなった。熱貫流率は熱の通しやすさを示し、小さいほど断熱性が高い。水素・都市ガス混焼の温水機(潜熱回収型、出力2000キロワット未満の2区分)はボイラ効率105%を水準に置いた。

意見を求める範囲と出し方

今回の募集は、リスト案と水準表案の記載が正しいかどうか、さらに更新すべき情報がないかの確認が主な目的。設備・機器の新規追加や水準表の区分の拡充は、7月21日から9月8日まで行った「個社提案募集」で受け付けており、今回は対象外としている。

意見は、環境省の報道発表ページに掲載された5種類のExcel形式の提出フォームから内容に合うものを選んで記入し、電子メールで運営事務局(合同会社デロイトトーマツ)に送る。設備の分類や原理の記載はフォームL、測定単位や試験条件はS1、区分の分け方はS2、LD-Tech水準の値はS3、トップランナー制度との関係はS4を使う。根拠資料は必要に応じて添えるが、水準の値を提案する場合はカタログや性能試験の結果など根拠資料の添付が必須となる。

寄せられた意見は、利用実態と合っているか、科学的に説明できるか、性能値が公表された情報か、試験条件や計算方法の公平性が保たれているかといった項目で評価し、必要ならヒアリングを行ったうえで確定版に反映する。期間外の提出や、一度出した内容の変更は原則として受け付けない。

空欄の261区分をどう埋めるか

水準表案に載る1,016区分のうち、2026年10月時点で261区分はLD-Tech水準が設定されていない。最高性能の値が無いと、その区分では「水準を満たす製品」を判定できない。環境省は認証製品を増やすため、未設定の区分について水準を決めるのに必要な情報を集め、認証に向けた取り組みを強めるとしている。未設定の区分の一覧は概要資料の25〜55頁に載っている。

今回の意見募集で採用された数値は水準表に載り、12月中旬から2027年1月下旬に行う認証製品募集で、その水準を満たす製品を募る(通常申請)。意見が無かったり採用されなかったりした区分は、水準を設けないまま製品を募り、性能値の根拠資料を出して応募した製品のうち、条件に合い区分内で最高性能のものを認証する(特別申請)。年度内に水準が決まらなかった区分は、2027年度も区分の分け方が妥当かどうかの点検を続ける。

LD-Techと同じく環境省が脱炭素の新技術の普及を進める事業としては、ペロブスカイト太陽電池の導入補助、二次公募を開始 締切は10月30日と11月20日 環境省がある。

今後の日程として、環境省は12月中旬に認証製品の公募についての説明会を開き、2026年度の認証製品を2027年3月下旬に公表する予定だ。担当は地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室。