デジタル庁は10月27日、市区町村などへの手続をマイナポータルからオンラインで申請する新しいサービス「マイナポータル自治体手続申請サービス」(略称・マイナ自治体申請)の本格運用を、全国の自治体等を対象に始めた。2025年4月から一部の自治体で先行実証を続けてきた。これまで「ぴったりサービス」が担ってきた自治体手続のオンライン申請機能の移行先となるもので、ぴったりサービスの手続は同日から順次、新サービスへ移す。
すべての手続でカードによる本人確認
デジタル庁の「行政手続のオンライン化」のページによると、新サービスでは、すべての手続でマイナポータルへのログイン、つまりマイナンバーカードによる本人確認が必要になる。デジタル庁は、申請者本人であることを確実に確かめ、なりすましや不正な申請を防ぐためと説明している。
住民の側の主な変更点として、デジタル庁は4つを挙げた。1つ目が、このカードによる本人確認だ。2つ目は画面で、「デジタル庁デザインシステム」を取り入れ、アクセシビリティ(誰でも使えること)の向上に取り組んでいるとする。3つ目は入力の手間で、マイナンバーカードに記録された情報や、利用者が「申請用プロフィール」に登録した情報が申請フォームに自動で入る。4つ目は申請後の確認で、「審査中」「修正依頼」「完了」といった申請の状況や、自治体が発行した文書ファイルを、通知やマイナポータルの「やること」の欄から確かめられる。
自治体の側には2つの機能が加わる。申請内容に不備があった場合に、直す必要のある箇所を指定してオンラインで修正を依頼できる機能と、審査が終わった後に通知書などの文書ファイルをオンラインで発行し、住民に届ける機能だ。実証の段階から、デジタル庁は補正の連絡や通知書の送付もオンラインにして、手続をオンラインで完結させることを目標に掲げていた。
ぴったりサービスからの移行は順次
ぴったりサービスは、マイナポータルのサービスの一つで、住民がインターネットで行政手続を検索し、電子申請できる仕組みだ。デジタル庁の自治体向けの手引は、住民ができることとして「制度・手続を簡単に検索できる」「申請書をオンラインで入力」「手続をオンラインで申請できる」を挙げ、行政の側は申請の受理や利用者への通知をオンラインで行えると説明している。自治体は、子育てや介護の手続に加え、粗大ごみ収集の申込やイベントの申込といった独自の手続も、ぴったりサービスに登録して受け付けてきた。
デジタル庁は、ぴったりサービスで提供している手続について、10月27日から順次、新サービスへの移行を進めているとした。移行していない手続は引き続きぴったりサービスで受け付ける。住民にとっては、同じ自治体の中でも、手続によって新サービスの画面とぴったりサービスの画面が併存する期間が続くことになる。どの手続から移すのか、移行をいつまでに終えるのかは、デジタル庁のページには示されていない。
マイナンバーカードの普及を土台にした自治体の手続のデジタル化は、医療費助成の受給者証をカードで代わりに使える仕組みの広がりなど、ほかの分野でも進んでいる(医療費助成の受給者証、マイナンバーカードで使える自治体が611に 1年半前の183から3.3倍 令和8年度は1,037自治体まで広がる見込み)。デジタル庁は、国民の約8割(2025年12月末時点)が持つマイナンバーカードのメリットを広げることを目指すとしている。
6市町で1年半の先行実証
新サービスは、2025年4月から「次期オンライン申請サービス」の名で実証が進められてきた。デジタル庁が当時掲げた狙いは3つある。住所や氏名、家族の情報を一度登録すれば申請のたびに入力しなくて済むようにすること、自治体等が持つ情報を申請フォームに転記して住民の入力と職員の審査の負担を減らすこと、補正の連絡や通知書をオンラインで送り、手続をオンラインで完結させることだ。
デジタル庁のページに2026年9月まで載っていた一覧(7月31日時点)では、先行実証に参加したのは6市町だった。
| 自治体 | 先行実証の対象手続 |
|---|---|
| 神奈川県横須賀市 | 出生連絡票、乳幼児医療費(子ども医療費)の助成、児童手当の認定請求 |
| 静岡県裾野市 | 児童手当の認定請求、出生届 |
| 熊本市 | 上下水道の使用開始の届出、出産育児一時金申請、出生届 |
| 熊本県菊池市 | 重度心身障がい者医療費受給資格認定申請、児童手当の認定請求 |
| 大分県日出町 | 出生連絡票、出産育児一時金申請、重度心身障がい者医療費受給資格認定申請 |
| 宮崎県都城市 | 出生連絡票、上下水道の使用開始の届出、出産育児一時金申請、重度心身障がい者医療費受給資格認定申請、児童手当の認定請求、乳幼児医療費(子ども医療費)の助成、国民健康保険の加入届・脱退届 |
出典: デジタル庁「行政手続のオンライン化」(2026年9月27日時点の保存版)
対象は出生や子育て、医療費の助成、水道の開始など、生活の節目に集中する手続だった。表の手続を名称で数えると9種類になる。当時のページは本格運用の開始を「2026年9月以降」と予定しており、実際の開始は10月27日となった。
重点計画は「2026年度内」の全国運用を掲げていた
政府は新サービスを、2025年6月13日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中に位置づけている。重点計画の施策「フロントサービスAPI基盤の構築」は、国や自治体、民間事業者のオンライン申請サービスに共通して必要な機能を提供するAPI基盤(システム同士をつなぐ共通の仕組み)を整える取り組みだ。
重点計画は、申請者が入力する情報を最小限にするため、行政機関の間で情報をやり取りする「公共サービスメッシュ」などと連携し、自治体等が持つ情報を申請書に転記する機能や、利用者が登録した連絡先などを転記する機能を整備するとしている。実証で寄せられた利用者の意見を踏まえて機能を改善したうえで、「2026年度内に全国の自治体を対象にフロントサービスAPI基盤を活用したオンライン申請サービスの運用開始を目指す」と書いた。具体的な目標には「申請書に転記する機能を活用したオンライン申請の対象手続件数:2025年度までに10手続」を掲げている。
今回の本格運用は、重点計画が掲げた「2026年度内」の運用開始に当たる。一方、10月27日に公表された新サービスの説明で自動入力の元として挙がっているのは、マイナンバーカード内の情報と利用者の申請用プロフィールの2つで、自治体等が持つ情報の転記には触れていない。
児童手当や要介護認定は8割超、生活再建支援金は71団体
新サービスの受け皿になる自治体のオンライン申請は、手続によって広がり方に大きな差がある。重点計画は、処理件数が多い手続や、子育て・介護・被災者支援・引っ越しといった生活の節目の手続など56手続を「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」に挙げている。デジタル庁が2026年2月に更新した一覧(2024年度末時点)で、全国1741の市区町村のうちオンラインで手続ができる団体を数えると次のとおりだった。
オンラインで申請できる市区町村の数(2024年度末、全1741団体)(団体)
数値で見る(単位: 団体)
| 項目 | 団体 |
|---|---|
| 転出届 | 1,741 |
| 児童手当 | 1,593 |
| 要介護認定 | 1,473 |
| 罹災証明 | 1,132 |
| 粗大ごみ | 298 |
| 再建支援金 | 71 |
転出届は全1741団体でオンラインで出せる。児童手当の認定請求は1593団体、妊娠の届出は1481団体、保育施設等の利用申込は1476団体、要介護・要支援認定の申請は1473団体で、いずれも8割を超える。一方、被災者支援では罹災証明書の発行申請が1132団体に上るのに対し、被災者生活再建支援金の支給申請は71団体、応急仮設住宅の入居申請は66団体にとどまる。粗大ごみ収集の申込は298団体、建築確認は38団体だった。
一覧には、56手続以外にオンライン申請に対応している手続の数も載っている。この欄が0の団体は892で、全体の半数を超えた。新サービスへの移行は、すでにオンライン化した手続を新しい仕組みに載せ替える作業であり、まだオンラインになっていない手続をどれだけ増やすかは、引き続き各自治体の対応に委ねられる。
