デジタル庁は10月1日、マイナンバーカードを医療費助成の受給者証として使えるようにする情報連携システム「PMH(Public Medical Hub)」について、先行実施している自治体の一覧を更新した。システムの整備を終えた自治体は2026年10月1日時点で611。2024年度末の183から1年半で3.3倍になった。厚生労働省の資料では、参加・参加予定の自治体は令和8年度の1次申請までに1,037まで増える見込みで、参加率は58.0%にあたる。

紙の受給者証を窓口で出さなくてよくなる

医療費助成は、こどもの医療費や障害者の医療費、ひとり親家庭の医療費などを自治体が負担する仕組みで、対象者には紙の受給者証が交付される。医療機関の窓口では健康保険証とこの受給者証の両方を出す必要があり、有効期間が切れるたびに差し替えが生じる。自治体の側も、助成の対象かどうかを紙でやり取りしている。

PMHは、この情報を自治体と医療機関・薬局の間で安全にやり取りするための仕組みで、デジタル庁が令和5年度(2023年度)に開発した。導入した自治体では、受診の際にマイナンバーカード(マイナ保険証)を医療費助成の受給者証や診察券として使えるようになる。予防接種・母子保健の分野では、予診票や問診票をスマートフォンで事前に入力し、カードを接種券・受診券として使う形を想定している。デジタル庁は、マイナポータルから接種や健診の勧奨を行って接種忘れ・健診忘れを防ぎ、接種履歴や健診結果をマイナポータルで確認できるようにすることも利点に挙げている。

対象になる制度は幅広い。国の公費負担医療では難病、小児慢性特定疾病、自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療)、未熟児の養育医療、結核、肝炎などが並ぶ。自治体が独自に設けた地方単独の助成では、こども、障がい者、ひとり親家庭の医療費助成が対象である。

611自治体の内訳 北海道が64で最多

デジタル庁が更新した一覧(2026年9月25日時点)に載る611自治体を、記載された自治体コードで都道府県別に数えると、北海道が64で最も多い。次いで千葉41、茨城40、埼玉38、鹿児島32、東京29の順になる。都道府県そのものが受給者証を出す制度もあるため、一覧には市区町村だけでなく都道府県も団体として載っている。

ただしデジタル庁は、都道府県が一覧に載っていても当該都道府県の全域で対象になるわけではないと注記しており、実際の運用状況は各自治体に問い合わせるよう求めている。制度ごとに対応の有無が分かれるため、同じ市でも使える助成と使えない助成がある。

都道府県は46で97.9%、市区町村は991で56.9%

厚労省が公表した「医療費助成のオンライン資格確認の状況」(令和8年7月時点)によると、参加・参加予定の自治体は累計で令和5年度が5、令和6年度が183、令和7年度が622、令和8年度の1次申請までが1,037と増えてきた。参加率は58.0%である。

内訳を見ると、都道府県は0、22、41、46と増えて97.9%に達した。一方の市区町村は5、161、581、991で、56.9%にとどまる。都道府県はほぼ出そろい、残るのは市区町村という段階である。厚労省は、令和8年2月に実施した意向等調査をもとに、令和8年度中に47都道府県がすべて参加する予定だとしている。

デジタル庁が「全自治体数である622自治体への到達が見込まれる」と記している622は、この令和7年度までの参加・参加予定の累計と一致する数字である。整備済みの611はその一歩手前にあたる。

使える医療機関・薬局は約2.5万から約6.9万施設へ

受け入れ側も増えている。PMHを利用できる医療機関・薬局は、2025年4月の約2.5万施設から2026年3月に約6.9万施設になった。厚労省は令和8年度の自治体システム改修等補助金の交付要綱と実施要綱を公表しており、自治体側の改修費用を国が支えている。

もっとも、医療機関のデジタル化は分野ごとに進み方が違う。電子カルテの導入状況、デジタル庁と厚労省が都道府県別に公開 2026年6月の病院は鳥取県91.2%・福島県64.9% 診療所は沖縄県82.5%から徳島県54.3%まででは、同じ電子カルテでも都道府県の間で3割前後の開きがあった。医療費助成のオンライン資格確認も、自治体と医療機関の双方がそろって初めて窓口で使えるようになる。

厚労省は、令和9年4月の「PMH医療費助成の移管」に関する情報も載せ、移管後を前提とした特定個人情報保護評価(PIA、プライバシー影響評価)のひな形を公開した。すでに評価を済ませた制度については、令和8年度中にこのひな形で評価書を修正するよう求めている。進み具合はデジタル庁が分野別に公開しており、デジタル庁、医療DXの進み具合を「見える化」 マイナ保険証や電子処方箋など5分野を公開でも外から確認できる状態になっている。

根拠となっているのは、2023年6月2日に決定された「医療DXの推進に関する工程表」である。工程表は、関係機関や行政機関の間で必要な情報を安全に交換できる仕組みを整え、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成に関する情報を共有していくと定めた。公費負担医療と地方単独医療費助成へのオンライン資格確認等システムの対応拡大については、2023年度中に調査研究と希望する自治体での事業を始め、システムの改善と自治体システムの標準化の状況を踏まえながら、順次参加する自治体や医療機関を広げて全国展開していくとしている。