デジタル庁は9月25日、「令和8年度 属性証明の課題整理に関する有識者会議」の第1回会合の資料を公表した。会合は9月11日に書面で開かれた。今年度は、住民票の写しなどの公的な証明書を「VC(Verifiable Credential)」と呼ばれるデジタル形式で発行し、スマートフォンの「ウォレット」に保管して相手に示せるようにするために必要な技術要件と、制度・運用面の課題を整理する。民間事業者や自治体の担当者から話を聞く「外部有識者ヒアリング」を9月末から12月末にかけて4回程度開き、2027年2月末ごろに開く本体会議で取りまとめる。
本人確認は進んだが、証明書は紙とPDFのまま
会議がいう「属性証明」とは、デジタルでの「身元、資格、属性等」の証明をまとめて指す言葉だ。前年度の報告書によると、マイナンバーカードの公的個人認証やスマートフォンへのカード搭載によって、本人であることを示す身元証明書のデジタル化は実現した。一方、行政と民間の間で申請や契約のたびにやり取りされる住民票の写しや就労証明書といった証明書は「様々な制約から依然として紙やPDFによるやり取りが残存している」という。
VCは、デジタル署名によって発行元と改ざんの有無を確かめられる、機械が読み取れるデータ形式を指す。DIW(Digital Identity Wallet)は、その証明書を利用者自身がスマートフォンなどに持ち、第三者に提示するための仕組みだ。報告書は、VCによって受け取り側の事務処理を自動化でき、DIWの「選択的開示」によって必要な項目だけを示せるため、個人情報を最小限にとどめられると整理している。デジタル庁はすでに、留学の成績証明をスマホで国境越え 日EUの実証で大学の発行・検証に成功 デジタル庁が結果公表のように教育分野で実証を重ねており、学園祭の年齢確認にマイナンバーカード デジタル庁アプリは「20歳以上か」だけを表示 12日の東京都市大など5大学ででは、生年月日を見せずに年齢の条件だけを伝える使い方を試している。
今年度は非公開のヒアリングが中心
設置要綱によると、今年度の会議は住民票の写し等の公的証明書のユースケースを念頭に、VCの発行から検証までに求められる技術要件を検討し、制度上の制約や運用面の課題と解決策を明らかにすることを目的とする。委員は板倉陽一郎弁護士、國領二郎・慶応大名誉教授、﨑村夏彦・NATコンサルティング代表社員ら11人で、事務局はデジタル庁デジタル社会共通機能グループが務める。
本体会議は書面開催1回と実開催1回の計2回で、実開催は2027年2月末ごろを予定する。前年度まで開いていた技術ワーキンググループは、今年度は開催しない。
代わりに中心となるのが、原則非公開で4回程度開く外部有識者ヒアリングだ。テーマは、第1回が検証ツールに求められる技術要件、第2回がウォレットが満たすべき技術要件の整理、第3回が公的証明書のVC発行方法に係る技術要件の整理、第4回がガバナンスと関係者が担う責任。第3回では自治体職員や自治体システムのベンダーから、条例や規約といった現行制度上の課題も聞く。デジタル庁は非公開とする理由について、対象の証明書に関する今後の政策動向など一般公開できない機微な情報を含みうることと、民間事業者を招いて具体的なユースケースに踏み込んだ議論にするためだと説明している。
前年度の報告書は「要件の明確化」を求めていた
2026年4月に公表された前年度の報告書は、次年度にデジタル庁が取り組む候補として3点を挙げていた。行政での利用にあたりVCの発行・検証やウォレットに求める要件を明確にし、行政機関や民間事業者が広く参照できるようガイドライン等へ文書化すること。証明書の制度を所管する省庁や自治体、ウォレット提供事業者を巻き込んだ実証を行うこと。そして、権限移譲や国際的な相互運用を見据えた信頼のあり方を整理することだ。
報告書は、VC・DIWを「まだ黎明期の技術」と位置づけ、技術、環境・インフラ、法令・制度・ガバナンスの3分類で解決すべき課題を並べていた。今年度の会議は、このうち要件の明確化を、実際に証明書を発行する自治体や受け取る企業の声で詰める段階にあたる。取りまとめの内容は、証明書の制度を所管する関係省庁にも共有される予定だ。
