東京都の「火葬場に係る検討会」(会長=大橋洋一・学習院大教授)は10月14日、第2回会合を開き、年末の中間まとめに向けた論点整理案を示した。公営火葬場を持たない自治体に対し、近隣の自治体と連携して2〜4炉程度の小規模火葬場の整備を検討するよう求め、条例で住宅等から250メートル以上離すと定めた距離規制は、現在の環境技術に照らして「合理的な根拠を欠いている」として見直しを提起した。都の試算では、都内の火葬は2035年頃に需給がひっ迫する。12月頃の第3回で中間まとめ案を示し、民間火葬場の料金設定と行政の関与もその場で議論する。

23区は火葬の8割を民間が担う

都によると、都内の火葬場は26か所(23区9、多摩9、島しょ8)ある。このうち8か所が民間事業者の運営で、7か所が23区内にある。全国に1,300か所を超える火葬場の97%は市町村や一部事務組合が運営する公営で、民間の火葬場は全国に13か所しかない。その8か所が都内に集まっている。23区の民営7か所のうち6か所は東京博善(町屋・四ツ木・落合・堀ノ内・桐ケ谷・代々幡の各斎場)が運営する。

都の実態調査では、2024年度に都内で行われた火葬は約15万件で、23区の火葬場が11万件、多摩などの市町村の火葬場が約4万件だった。23区では民間火葬場での火葬が8割を占め、市町村では逆に公営が7割を占める。論点整理案は区部の状況を「民間火葬場が実質的な基幹インフラとなっている」と記した。

都が設けたQ&Aによると、都内の死亡者数は今後数十年増え続け、2065年頃には年間約20万人と2025年の約1.4倍に達する。既存の火葬場を今と同じ程度(年約16万件)で動かすと、2035年頃に需給がひっ迫し、その後は火葬能力の不足が続く。亡くなる人が多い冬場は、全施設を最大限動かしても2040年頃にひっ迫すると見込む。2024年度の冬場は、申し込みから火葬まで平均で約8日かかった。論点整理案は、多摩地域では「既に火葬待ちが発生」していると指摘し、希望する火葬場を使えず遠方へ運ぶ例や追加の費用が生じる例があるとしている。

検討会は6月に発足し、7〜9月に3回の部会で専門家や葬祭業者、東京博善の社長らから意見を聴いた。委員には新宿・世田谷・北・江戸川の4区長と、府中・小平・多摩の3市長、日の出町長が加わっている。

2〜4炉の小規模火葬場を分散して置く

論点整理案は、需要増への対応として「公営火葬場の新設(小規模火葬場の整備含む)」と既存施設の能力向上を組み合わせるよう求めた。

小規模火葬場は、大きな用地を必要とせず、都市部でも確保できる土地に建てられる選択肢と位置付けた。利用者の移動の負担を減らせるほか、大規模災害時の予備にもなるとして、分散配置を「不可欠な施策として検討すべき」と記した。2〜4炉程度の施設は、将来需要が減ったときに縮小や廃止がしやすいとも説明する。火葬炉の耐用年数はおおむね25〜30年で、更新の時期に炉だけ入れ替えるか施設ごと廃止するかを選べるという。

用地の候補として、墓地や寺院、公有地の活用も挙げた。都立霊園では墓じまいなどで返還された区画があり、集約すれば敷地を確保できる可能性がある。ただ返還区画は園内に点在し、既に別の用途で再利用されているものもあるため、「直ちにまとまった用地として活用できるとは限らない」とした。宗教法人など公共団体以外が運営する場合は、公営並みの安い料金は「考えにくい」とも書いている。

工場で炉や設備を組み上げて現地で据え付ける「ユニット型火葬場」も紹介した。国内の施工例は4件で、うち3件が稼働中だ。茨城県古河市は斎場の建て替え中の仮設施設として使い、組み立ては約2日、設備の接続工事を含めても約1か月で使い始めた。1〜2炉の小さな施設として、大きな火葬場を補う「サテライト型」にも使えるとしている。

明治の「120間」に由来する250メートル規制

都内の区市町村は条例で、火葬場の設置場所を「住宅等からおおむね250メートル以上」離すよう定めている。論点整理案によると、この考え方は明治期にさかのぼる。1887年(明治20年)の警視庁の火葬場取締規則は、人家からおおむね120間(約218メートル)以上離すよう求めていた。野焼きの設備を建物で覆っただけの火葬場が多く、煙や臭気、衛生面への懸念が背景にあったという。

論点整理案は、2000年の「火葬場から排出されるダイオキシン類削減対策指針」以降、火葬炉の排ガス処理性能は大きく向上したと説明する。そのうえで、一律に250メートルの距離を求めることは「現在の環境技術水準に照らして合理的な根拠を欠いている」と記した。区部の市街地で小規模火葬場を検討する場合、この基準が候補地選びの大きな制約になるとも指摘している。

他の自治体では扱いが分かれる。横浜市は一律の距離基準を設けず、立地や周辺環境を個別に審査している。千葉県内には100メートル程度の距離を採る自治体がある。一方、都内の青梅市は条例で500メートル以上と定める。論点整理案は、都全域での見直しも見据え、各自治体が構造設備の基準を含めて条例改正を検討する必要があるとした。火葬炉を5基以上とする規定についても見直しを検討するよう求めている。

ただ、住民の心理的な影響や周辺環境への配慮も課題に挙げ、用地選定や環境影響評価、地域との対話を通じて理解を深める必要があるとも書いた。整備では「最大の課題は住民合意」とする一方、特定の住民の同意が無いと整備が進まない仕組みは「よくない」との意見も載せている。

既存施設の能力増強と災害時の備え

既存の公営火葬場では増強が進む。

施設 取り組み 年間最大稼働数 時期
瑞江葬儀所 友引日の休館を見直し、稼働時間を延長 7,500件→10,500件 2026年6月〜
臨海斎場 火葬炉を10炉から20炉に増設(うち予備1炉) 12,250件→19,950件 2030年度予定
23区の公営火葬場の能力増強出典: 東京都保健医療局「火葬場に係る検討会(第2回)資料2」

それでも論点整理案は「区部全体の火葬需要を賄うには足らず」とした。既存施設でも稼働日数の拡大や運営の効率化を進め、需給が逼迫する場合は地域の理解を得たうえで夜間や早朝の火葬も検討するのが望ましいとしている。都の調査では、2024年度の区部の民間火葬場は1炉あたり1日3.7回転で、稼働率は56%だった。

災害時の備えにも穴がある。都が7月に区部と多摩の53自治体を調べたところ、全自治体が災害時の火葬計画を作っていた。しかし公営火葬場を持たない30自治体は、いずれも災害時の利用について火葬場と協議しておらず、うち16自治体は使う火葬場の想定すら無かった。都は東日本大震災の際、宮城県の要請を受けて2011年4〜5月に860体を都内で火葬している。

民間火葬場の料金は第3回で議論

論点整理案は、区部では公営施設が足りず多くの都民が公営より高い料金を払って民間火葬場を使っており、公営を使える住民との間に負担の差が生じていると記した。民間側は燃料費や人件費の上昇、税負担を料金に反映せざるを得ない一方、料金設定に行政が関与する仕組みが無く、「金額の妥当性を客観的に検証できない状況」にあるという。

火葬場は墓地埋葬法で許可制とされているが、同法には料金の定めが無い。都と特別区長会は2025年11月25日、民間火葬場が料金を設定する際にあらかじめ行政が関与する仕組みを法令に設けるよう、国に要望した。論点整理案も、火葬事業の公共性を確保するには「本来、法改正が必要」としている。

区が交付する葬儀券で割引を受けられる「区民葬儀」制度では、一部の民間火葬場が2026年3月末で火葬の扱いを終えた。特別区は4月から、その火葬場を区民葬儀で使う人に23区共通の助成を始めている。

料金設定の考え方や必要な法制度は、12月頃の第3回で議論する。中間まとめ案もその場で示され、検討会は2027年3月の第4回で全体を取りまとめる予定だ。