厚生労働省の統計「後期高齢者医療事業状況報告」で、令和6年度の後期高齢者医療制度の医療費が19兆4830億円になった。前年度の18兆7982億円から6848億円、3.6%の増加である。年度平均の被保険者1人当たりでは97万1531円で、前年度の96万8102円から3429円増えた。総額が3.6%伸びたのに1人当たりが0.4%しか伸びていないのは、被保険者そのものが3.3%増えたためで、医療費の膨らみの大半は加入者数の増加によるものだった。この統計は政府統計の総合窓口(e-Stat)で公開されており、年報(確報)の最新は令和6年度分、月報(速報)の令和8年分は10月21日に更新されている。
医療費は19兆4830億円、保険給付費は17兆8779億円
令和6年度の医療費19兆4830億円に対し、保険が実際に支払った医療給付費は17兆8779億円だった。医療費に対する給付費の割合は91.76%で、前年度の91.67%からわずかに上がった。残る8.24%、金額にして約1兆6051億円が、窓口で患者が払う分などにあたる。
医療費の件数は6億570万3332件で、前年度より3.5%増えた。被保険者1人が年間におよそ30件の請求を生んでいることになる。後期高齢者医療制度は、75歳以上の人と、65歳以上75歳未満で一定の障害があると広域連合の認定を受けた人が加入する公的医療保険である。国民健康保険や会社の健康保険から切り離された独立の制度で、都道府県ごとに全市区町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」が運営する。この統計は、その広域連合が扱った給付の実績を積み上げた確報値である。
なお65歳以上75歳未満の障害認定者は22万2278人で、前年度より8.9%減った。被保険者全体が増え続けるなかで、この層だけは5年続けて減っている。
1人当たりは97万1531円、増え方は3429円にとどまる
1人当たり医療費は令和2年度の91万7124円から4年続けて増え、令和6年度は97万1531円になった。ただし増え方は年々小さくなっている。令和3年度は2万3388円、令和4年度は1万1255円、令和5年度は1万6335円の増加だったのに対し、令和6年度の増加は3429円である。
後期高齢者医療の被保険者1人当たり医療費(円)
数値で見る(単位: 円)
| 項目 | 円 |
|---|---|
| 令和2 | 917,124 |
| 令和3 | 940,512 |
| 令和4 | 951,767 |
| 令和5 | 968,102 |
| 令和6 | 971,531 |
診療費だけを取り出すと、1人当たりは78万997円で前年度より0.2%増えた。内訳では入院が46万7403円で0.5%増、入院外は27万4488円で0.6%減、歯科が3万9105円で2.2%増である。入院外、つまり通院の1人当たり費用は減っている。
受診の回数そのものも増えていない。被保険者100人当たりの件数でみる受診率は、入院が73.81件で前年度より0.3%、入院外が1516.19件で0.4%、それぞれ減った。増えたのは歯科の275.28件(2.5%増)だけである。頭数が増えた分だけ総額が増え、1人の受診の頻度は横ばいか減っている、というのが令和6年度の姿だった。
訪問看護が2割増、入院は日数が縮んで単価が上がった
費用の種類別に伸びをみると、最も大きいのは訪問看護である。費用額2951億円で前年度より21.4%増え、件数も208万7808件と13.2%増えた。医療費全体に占める割合は1.5%と小さいが、伸び率は他の項目の数倍にのぼる。
| 費用の種類 | 費用額 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 診療費 | 15兆6621億円 | 3.4%増 |
| 調剤 | 2兆8959億円 | 2.8%増 |
| 食事療養・生活療養 | 4418億円 | 5.2%増 |
| 訪問看護 | 2951億円 | 21.4%増 |
| 療養費等 | 1882億円 | 6.9%増 |
表: 令和6年度の後期高齢者医療の医療費の内訳 出典: 厚生労働省「後期高齢者医療事業状況報告(年報)」第2表
診療費15兆6621億円の中身は、入院が9兆3733億円(3.7%増)、入院外が5兆5046億円(2.6%増)、歯科が7842億円(5.5%増)である。入院に6割が向かう構造は変わらない。
その入院の中身が動いている。入院1件当たりの日数は16.94日で、前年度より1.2%短くなった。一方で入院1日当たりの診療費は3万7381円と2.0%上がった。在院日数を詰めながら1日に濃い医療を提供する形に寄っており、その結果として1人当たりの入院費は0.5%増という小さな伸びに収まっている。食事療養・生活療養費が5.2%増えているのも、入院の実日数が減ってなお単価が上がっている動きと合う。
高額療養費の支給は6500万258件、1兆1154億円で、件数が4.5%、金額が6.8%増えた。このうち窓口で負担が上限までに抑えられる現物給付分が9182億円、あとから払い戻される現金給付分が1972億円である。葬祭費は118万5581件、514億円だった。
被保険者は年度末2033万人、都道府県で1.53倍の差
被保険者数は令和6年度末で2033万1704人となり、前年度末の1978万4601人から54万7103人増えた。年齢階級別では75〜79歳が783万6419人で最も多く、80〜84歳581万8305人、85〜89歳377万2893人と続く。100歳以上も9万5530人いる。
年度中の出入りをみると、75歳になったことで入ってきた人が183万7199人、死亡で抜けた人が122万5444人だった。毎年180万人規模が新たに加入し、120万人規模が亡くなる。この回転が続く限り、制度の規模は団塊世代が通り過ぎるまで膨らみ続ける。制度の対象となる75歳以上の人口そのものの動きは、75歳以上の人口は2153万人で総人口の17.5% 65〜74歳は1年で46万人減 要介護認定率は31.0%で扱っている。
1人当たり医療費は地域差が大きい。最も高い福岡の118万6752円と、最も低い新潟の77万7935円では1.53倍の開きがある。
| 都道府県 | 1人当たり医療費 |
|---|---|
| 福岡 | 118万6752円 |
| 高知 | 116万1293円 |
| 鹿児島 | 114万369円 |
| 秋田 | 82万592円 |
| 岩手 | 79万1488円 |
| 新潟 | 77万7935円 |
保険料は都道府県の広域連合ごとに決まるが、医療費は全国で分け合う仕組みのため、この地域差がそのまま保険料の差になるわけではない。
窓口負担は原則1割、費用の約4割は現役世代の支援金
後期高齢者医療の窓口負担は原則1割である。現役世代並みの所得がある人は3割、それ以外で一定以上の所得がある人は、令和3年の健康保険法等改正により令和4年10月1日から1割が2割になった。厚労省は、2割になるのは被保険者全体の約20%と説明している。2割負担の導入にあたって外来の負担増を1か月3000円までに抑えていた配慮措置は、2025年9月30日で終了した。終了後も高額療養費により、外来の自己負担の上限は月1万8000円、年間14万4000円までとなる。
費用の出どころについて、厚労省は「後期高齢者の医療費は、窓口負担を除いて約4割が現役世代の負担する支援金でまかなわれています」と説明している。残りは公費と、被保険者本人が払う保険料である。被保険者1人当たりの平均保険料額は、令和6年度が全国平均で月額7082円(令和4・5年度の6575円から507円、7.7%の増)、令和7年度が月額7192円(令和6年度から110円、1.6%の増)という見込みが示されている。保険料率は被保険者均等割額が年5万389円、所得割率が10.21%で、令和7年度は令和6年度と同じ水準に据え置かれた。
つまり令和6年度に19兆4830億円かかった医療のうち、本人の窓口負担は1割前後にとどまり、残りの大半を公費と現役世代の保険料が支えている。被保険者が年3%ずつ増えるなかで1人当たりの医療費が0.4%しか伸びていないのは制度側の抑制が効いている証拠ともいえるが、頭数の増加そのものは止まらない。支える側の人数が減っていく構図は、高齢化の問題は、高齢者が増えることではない 65歳以上は5年で17万人増なのに75歳以上は260万人増 支える側の不足を一次統計で追うで整理している。
令和7年度以降の確報はまだ公表されていない。e-Statでは月報(速報)として令和8年1月から6月までの被保険者数などが順次公開されており、確報は調査年度の翌年度末ごろに出る予定とされている。
