国土交通省関東地方整備局は10月23日、リニア中央新幹線の品川駅と名古屋駅の新設工事を巡る談合事件で有罪が確定した鹿島建設(東京都港区)と大成建設(東京都新宿区)に対し、建設業法に基づく営業停止を命じた。期間は11月7日から2027年3月6日までの120日間で、全国の民間の土木工事について新たな受注などの営業ができなくなる。最高裁判所第三小法廷が9月14日に両社の上告を棄却し、刑は9月19日に確定していた。2018年3月の起訴から8年半を経て、談合に関わった大手ゼネコン4社すべての刑事責任と行政処分が出そろった。

停止されるのは「全国の民間の土木工事」

関東地方整備局の発表によると、処分の根拠は建設業法28条3項だ。同項は、許可を受けた建設業者が同条1項の各号に当たるとき、国土交通大臣や知事が「一年以内の期間を定めて」営業の全部または一部の停止を命じることができると定めている。

今回、整備局が当てはめたのは1項2号と3号の2つだった。2号は「請負契約に関し不誠実な行為をしたとき」、3号は業者や役員らが業務に関して他の法令に違反し「建設業者として不適当であると認められるとき」を指す。独占禁止法違反の罪で会社が罰金刑、元社員が懲役刑を受けたことが、この両方に当たると判断した。

停止を命じた営業の範囲は「全国における土木工事業に関する営業のうち、民間工事に係るもの」だ。発表は注記で、土木工事業の営業を「注文者から土木一式工事を請け負う営業」と定義している。民間工事からは、国、地方公共団体、法人税法が定める公共法人などが発注する工事を除く。国や自治体が発注する公共工事、建物を建てる建築工事は今回の停止の範囲に入らない。

両社は23日、東京証券取引所などに処分を受けたことを開示した。鹿島は「今回の処分を厳粛に受け止め、役員・従業員一同、コンプライアンスの一層の徹底を図り、信頼回復に努めてまいります」とした。大成は「今般の処分を厳粛に受け止め、これまでの取り組みを一層徹底する」と述べ、別紙で再発防止策を示した。同業他社との会合に出る際の事前届け出と事後報告の義務付け、営業部門の社員が同業他社と送受信するメールの監視、社内で違反を自主申告できる窓口の社内外への設置などを挙げている。

大成はあわせて、公正取引委員会から受けた排除措置命令の取り消しを求めて最高裁に起こしていた上告と上告受理申し立てを取り下げると発表した。2021年3月に提訴し、2025年5月27日に上告していた。刑事事件の有罪確定を受け、行政訴訟でも争いをやめることになる。

品川と名古屋の3工区で「受注予定」を決めていた

事件の舞台は、東海旅客鉄道(JR東海)が発注したリニア中央新幹線のターミナル駅の工事だ。営業中の東海道新幹線の駅の真下を地上から掘り下げ、地下に新しい駅を造る「地下開削工法」の工事で、最高裁の決定は、品川駅ではビル3棟の1階に入る営業中の新幹線駅などの直下を、名古屋駅では東海道新幹線や在来線の駅の直下を開削すると説明している。

JR東海は、財務状況や技術者数、営業中の線路の近くで工事をした実績を基に業者を指名し、技術提案の評価点と見積価格を組み合わせて交渉先を選ぶ「指名競争見積り」の方式を採った。指名を受けたのは大林組、清水建設、鹿島、大成の4社だった。決定は4社を、完成工事高などで業界1位から4位を占める国内最大手の総合建設業者だと認定している。

決定が是認した一審の事実認定によると、4社の幹部らは2014年4月下旬ごろ(1社は2015年1月下旬ごろ)から2015年8月下旬ごろまでの間、品川駅新設の北工区と南工区、名古屋駅新設の中央工区の3工事について受注予定の会社を決めた。さらに、見積書をJR東海に出す前に、受注予定の会社が代表を務める共同企業体(JV)の見積価格などの情報を他社に伝えていた。

品川駅の2工区は2014年12月に発注手続きが始まったが、見積りが予算に合わず、JR東海は工程の一部を切り出して2015年8月に出し直した。最も安い見積りを示した会社が北工区と南工区をそれぞれ受注した。名古屋駅の中央工区は予算を大幅に上回ったため同月に手続きを中止し、2016年3月に範囲を絞った「中央西工区」として改めて発注している。

公取委によると、駅の工事を受注したのは大林組と清水建設の2社で、鹿島と大成は受注していない。

告発から確定まで8年半

公取委は2018年3月23日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で4社と、当時大成と鹿島でリニア工事の受注業務に携わっていた2人を検事総長に告発した。東京地検は同じ日に起訴し、国交省は3月29日から4か月、4社を直轄工事の指名停止とした。

4社の対応はここで分かれた。大林組は2018年10月22日に罰金2億円の判決を受け、清水建設も有罪判決が確定した。両社は2019年1月18日、今回と同じ「全国の民間の土木工事」を範囲とする営業停止を受け、期間は2019年2月2日から6月1日までの120日間だった。

これに対し、鹿島と大成は起訴内容を争い、裁判は最高裁まで続いた。東京地裁は2021年3月1日、両社と元社員に有罪判決を言い渡した。大成の開示によると、同社への判決は罰金2億5000万円、同社の顧問は執行猶予付きの有罪だった。東京高裁も2023年3月2日に同じ結論を示した。大成はその直後の開示で、上告審で「独占禁止法違反がなかったこと」を引き続き主張するとしていた。

時期 出来事
2014年4月〜2015年8月 4社が品川・名古屋の3工事で受注調整
2018年3月23日 公取委が告発、東京地検が起訴
2018年3月29日 国交省が4社を4か月の指名停止
2019年2月2日〜6月1日 大林組・清水建設が営業停止120日
2020年12月22日 公取委が4社に排除措置命令、2社に課徴金
2021年3月1日 東京地裁が鹿島・大成に有罪判決
2023年3月2日 東京高裁が控訴を退ける
2026年9月14日 最高裁が上告を棄却(19日に確定)
2026年11月7日〜2027年3月6日 鹿島・大成が営業停止120日
リニア駅工事の談合事件の経過

出典: 公正取引委員会、国土交通省、最高裁判所、関東地方整備局の発表、各社の開示資料

行政処分の面では、公取委が2020年12月22日に4社へ排除措置命令を出した。課徴金の納付を命じたのは大林組の31億1839万円と清水建設の12億331万円で、合計43億2170万円だった。2社とも、違反を自ら申告した事業者の課徴金を減らす減免制度で30%の減額を受けたうえ、刑事裁判で確定した罰金の半額が差し引かれている。鹿島と大成は違反事業者と認定されたが、工事を受注していないため課徴金の対象にならなかった。

最高裁「4社とも施工する能力があった」

上告審で最高裁は、上告の理由には当たらないとしたうえで、4社の行為が独占禁止法2条6項の「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」に当たるかについて、職権で判断を示した。裁判長は渡辺惠理子裁判官で、5人の裁判官の全員一致の結論だった。

論点になったのは、そもそも4社の間に競争があったのかという点だ。決定によると、4社のうち2社は、発注の何年も前からJR東海の依頼で品川駅や名古屋駅の技術的な検討を担っていた。こうした事情の下では、他社は本当に施工できたのか、受注調整がなくても結論は同じだったのではないか、という問題が生じる。

決定はこれを退けた。4社はいずれも、営業中の線路の近くでの工事や、線路や既存の構造物を支えながら地下に構造物を造る工事の経験があり、各工区の工種や工法にも一定の共通性がある。決定はそのうえで、実際の施工状況を「何より」重い事実に挙げた。JR東海の依頼で技術検討をしていなかった工区を、別の社が実際に受注して施工していたからだ。決定は、技術検討をしていなかった会社も「客観的に」発注者の需要を満たす工事を供給する能力を持っており、検討を担った会社が自由に条件を決めようとするのを抑える立場にあったと述べた。そのうえで、受注調整は競争を実質的に制限したと結論づけた。

渡辺裁判長は補足意見で、競争の弊害が生じる前提として、複数の事業者に「現実的な供給可能性」があったかを客観的に検討することが重要だと述べた。

決定は、発注者の依頼で事前に技術検討を担った会社がいても、それだけでは他社との競争が無かったことにはならないという立場を取った。大型で特殊な工事であっても、各社に客観的な施工能力があるかどうかで判断するという考え方だ。公取委は9月にも、マンションの大規模修繕工事で業者を事前に決めていた事件で処分を出している(マンション大規模修繕の談合、課徴金16億3788万円の会社名と金額の一覧 最高は伊勝の3億8204万円)。

4社の処分が出そろう 罪を認めた社と争った社で7年の差

今回の営業停止で、リニアの駅工事を巡る談合事件の行政処分は、4社がいずれも「全国の民間の土木工事」で120日の営業停止を受ける形でそろった。範囲と日数は、大林組と清水建設が2019年に受けた処分と同じだ。

違いが出たのは時期だ。罪を認めた2社は2018年に刑事裁判を終え、翌2019年の2月から6月まで営業を止めた。争った鹿島と大成は、地裁、高裁、最高裁と3度の判断を経て2026年9月に刑が確定し、営業停止は2026年11月から2027年3月までとなる。処分の時期は7年以上ずれた。

課徴金でも扱いが分かれた。工事を受注した大林組と清水建設には計43億円余りの納付が命じられ、公取委は受注しなかった鹿島と大成を課徴金の対象外とした。一方、公取委の発表と関東地方整備局の発表によれば、刑事裁判の罰金刑は4社すべてに科されている。このうち大林組は2億円、大成は2億5000万円だった。

大成は今回、排除措置命令の取り消し訴訟も取り下げることを決め、2021年から続いた行政訴訟も終わる。鹿島の開示は、処分の内容と謝罪、再発防止への姿勢を述べるにとどまり、具体的な対策は記していない。営業停止が両社の業績に与える影響についても、両社の開示はいずれも触れていない。