内閣府が10月7日に発表した8月分の景気動向指数(速報)で、景気の現状を示す「一致指数」が前月の120.6から118.7に下がり、6か月ぶりの下降となった。内閣府は景気の基調判断を「改善」に据え置いた。
出荷と輸出が一致指数を押し下げた
景気動向指数は、生産・出荷・雇用・消費など景気に敏感な統計をまとめ、経済全体の勢いを一つの数字で表したものだ。2020年の水準を100として指数化している。数か月先の動きを映す「先行指数」、景気の現状を映す「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」の3種類があり、このうち一致指数の動きが基調判断のもとになる。
8月の一致指数は118.7で、先行指数は118.0、遅行指数は112.1だった。一致指数を構成する10指標のうち、下げが目立ったのは出荷関連だ。鉱工業用生産財出荷指数は102.2から98.1へ4.0%下がり、耐久消費財出荷指数は107.5から102.3へ4.8%下がった。生産指数(鉱工業)も104.4から102.6へ1.7%の低下、輸出数量指数は106.4から103.5へ2.7%の低下となった。
販売の伸びも縮んだ。商業販売額は小売業が前年同月比3.7%増から2.7%増へ、卸売業が8.9%増から7.5%増へと、いずれもプラスを保ちながら伸び率を落とした。有効求人倍率(除学卒)は1.18倍で前月と変わらず、雇用は横ばいだった。
一方、月々の振れをならすために使う移動平均は上向きを保っている。一致指数の3か月後方移動平均は119.3から119.4へ、7か月後方移動平均は118.2から118.3へと、ともにわずかに上がり、8か月連続のプラスとなった。
「改善」はどう決まるのか 5段階を機械的に当てはめる
基調判断は、内閣府の担当者が景気を論評して決めるものではない。あらかじめ決められた基準に指数の動きを当てはめて機械的に判定する。段階は「改善」「足踏み」「局面変化(上方・下方)」「悪化」「下げ止まり」の5つだ。
最も上向きを示す「改善」の基準は、原則として3か月以上続けて3か月後方移動平均が上昇し、かつその月の前月差がプラスであることとされる。8月の一致指数は下がったため、この2つ目の条件には当たらない。次の段階である「足踏み」は、3か月後方移動平均の前月差の符号がマイナスに変わり、その幅が1標準偏差以上であることを求める。内閣府が目安として示す標準偏差は、1985年1月から2025年12月までの実績で3か月後方移動平均が1.08、7か月後方移動平均が0.83。8月はどちらの移動平均もプラスを保っており、ここにも当たらない。
基準では、5段階のいずれにも該当しない場合は前月の基調判断を踏襲すると定めている。公表資料は「これを機械的な基準に当てはめた結果、今月の判断は、『改善』となった」と記し、表題にも「基調判断据置き」と明記した。単月で大きく下がっても判断が動かないのは、1か月の振れに判断が振り回されないようにこの仕組みが設計されているためだ。前回この指数を取り上げた5月の景気動向指数、基調判断「改善」を維持 一致指数は3か月連続の上昇 先行指数は12か月連続プラスの時点から、「改善」の判断は続いている。
先行指数は中小企業の売上げ見通しが押し上げ
数か月先を示す先行指数は117.6から118.0へ上がり、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は116.7から117.3、7か月後方移動平均は115.5から116.2へと、いずれも上がっている。
押し上げに最も効いたのは、日本政策金融公庫の調査をもとにした「中小企業売上げ見通しDI」で、前月差で7.3の改善となった。消費者態度指数も前月差で0.6上がり、東証株価指数は1.8%、日経商品指数(42種総合)は1.2%それぞれ上昇した。逆に押し下げ側に回ったのは、新規求人数(除学卒)の1.5%減と、新設住宅着工床面積の3.4%減だった。
今回の公表では、先行指数の採用系列である「実質機械受注(製造業)」が、実質化に使う国内品資本財物価指数の遡及改訂に伴い、2025年1月分以降にさかのぼって改訂された。これに伴い先行指数も過去の値が修正されている。機械受注は企業の設備投資の先行指標とされ、7月の機械受注、設備投資の先行指標は3.7%減 内閣府統計 前月の9.7%増から反落、前年比では11.2%増のように月々の振れが大きい。
遅行指数は113.0から112.1へ下がり、3か月ぶりの下降となった。
今回の数字は速報値で、公表日の3営業日前までに判明した統計を使って計算されている。未発表の系列が後から加わるため、同じ月の指数は翌月に公表される改訂値で動くことがある。実際に10月7日の公表では、8月分速報と同時に7月分の改訂資料も示された。8月分の改訂値は、次の月次公表で9月分速報と並んで出ることになる。
