厚生労働省は10月2日に開いた労働政策審議会雇用環境・均等分科会(第92回)に、「仕事と育児の両立支援に関する検討項目(案)」を示した。育児・介護休業法などの次の見直しに向けて何を論点にするかを並べた資料で、男性の育児休業をめぐる「くるみん」認定の取得率基準の引き上げ、認定基準への取得期間の導入、企業が公表する項目への取得期間の追加が挙がった。子の看護等休暇の「中抜け」を原則認めることも項目に入った。
「くるみん」の取得率基準、引き上げが論点に
くるみんは、次世代育成支援対策推進法に基づき、仕事と子育ての両立に取り組む企業を「子育てサポート企業」として厚労省が認定する制度。認定は、入り口にあたるトライくるみん、標準のくるみん、より高い水準のプラチナくるみんの3種類がある。
現行の認定基準は、男性の育児休業等取得率について、トライくるみんで10%以上、くるみんで30%以上、プラチナくるみんで50%以上と定めている。認定を受けた企業は令和8年3月末時点で、くるみんが5,779社、プラチナくるみんが882社、トライくるみんが9社。
検討項目(案)は、この認定基準について①男性の育児休業取得率の基準の引き上げ②男性の育児休業取得期間に関する基準の導入③中小企業特例の見直し、の3つを挙げた。中小企業特例は、従業員300人以下の企業について、計画期間内に男性の育休取得者がいない場合でも、子の看護等休暇を取得した男性労働者がいるなど別の条件を満たせば基準を満たしたとみなす仕組みを指す。
公表義務に「期間」を加える案
企業に育児休業の取得状況の公表を義務づける規定も論点になった。この義務は令和3年の育児・介護休業法改正で、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主に年1回の公表を求める形で導入された。令和6年の改正(令和6年法律第42号)で対象が300人を超える事業主まで広がり、令和7年4月1日に施行されている。
公表する内容は、公表前の事業年度について、配偶者が出産した男性労働者のうち育児休業等をした人の割合か、これに育児を目的とした休暇制度を使った男性労働者を加えた割合の、どちらかを選ぶ形になっている。検討項目(案)は、これに「取得期間」も加えることをどう考えるかと問うた。ただし対象は、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業に限っている。
取得率は50.9%、期間は2週間以上3か月未満が58.3%
同じ分科会に出された参考資料によると、令和7年度の雇用均等基本調査(令和7年10月1日現在の状況)で、育児休業を取得した人の割合は男性が50.9%、女性が88.3%だった。前年の令和6年度は男性が40.5%、女性が86.6%で、いずれも上向いた。男性の取得率をめぐる政府目標は令和7年に50%、令和12年に85%で、厚労省は資料で令和7年の目標は達成したとしている。資料に載った取得率の推移をみると、平成27年ごろには2〜3%台で、10年あまりで5割まで上がってきた(男性の育休取得率は40.5% 取らなかった理由の最多は「会社に制度がなかったから」29.1% 法律は申し出れば取得できると定め、会社は拒めない)。
一方で、取得する期間には男女で大きな差が残る。調査前年度に育児休業を終えて復職した人でみると、男性は5日未満が6.8%、5日以上2週間未満が14.1%で、2週間に届かない人が20.9%を占める。最も多いのは1か月以上3か月未満の30.3%と2週間以上1か月未満の28.0%で、合わせて2週間以上3か月未満が58.3%。3か月以上は10.8%にとどまる。女性は6か月以上が93.0%を占め、12か月以上18か月未満が31.4%、10か月以上12か月未満が28.7%と長期が中心だ。資料は、男性は「女性に比べて短期間の取得が多い」としている。
取得率は政府目標に届いたが期間は短いままという構図が、「期間」を認定基準と公表項目の両方で論点に押し上げたかたちだ。
看護休暇の「中抜け」、深夜業免除の年齢も
「その他」の区分には4つの項目が並んだ。1つは子の看護等休暇と介護休暇の「中抜け」。子の看護等休暇は、小学校3年生までの子を育てる労働者が年5日(対象の子が2人以上なら10日)まで取得できる制度で、1日単位か時間単位で取れる。ただし時間単位の取得は、始業時刻から連続する形か終業時刻まで連続する形に限られ、就業時間の途中だけ抜ける使い方は認められていない。検討項目(案)は、これを原則可能とすることをどう考えるかと問うた。
もう1つは深夜業の免除。育児・介護休業法第19条は、小学校入学前の子を育てる労働者が請求した場合、事業主は午後10時から午前5時までの間に労働させてはならないと定めている。ただし、その深夜に常態として子を保育できる同居の家族がいる労働者は対象から外れる。検討項目(案)は、この同居家族の年齢の要件を、現在の16歳から成人年齢の18歳に引き上げることを論点に挙げた。
このほか、障害児や医療的ケア児、不登校の子の親への両立支援と、養育里親・親族里親が要保護児童を養育するための休暇が入った。里親の休暇は、令和6年12月24日に閣議決定された「令和6年の地方からの提案等に関する対応方針」を踏まえ、次世代育成支援対策推進法の行動計画策定指針に、事業主がこうした休暇を設けることが望ましい旨を追記するかを問う形になっている。
結論ではなく「論点の一覧」
検討項目(案)に並ぶ項目は、いずれも「どのように考えるか」という問いの形で書かれており、改正の中身が決まったわけではない。資料の性格は、次の見直しで何を議論するかを先に示したものにとどまる。
この日の分科会は、午前10時から正午まで厚労省の会議室で開かれ、議題は「仕事と育児の両立支援について」と「男女雇用機会均等対策基本方針の改定について」の2つだった。
