医療や介護、バスやトラックの運転、建設、店頭の販売や調理。暮らしが回るために欠かせないこれらの仕事を、厚生労働省は「社会インフラ関連職」とひとくくりにして人手不足の深さを測っている。最新版の労働経済白書によると、この区分の欠員率はおおむね5%前後で高止まりする一方、それ以外の職種は2024年に1.7%まで下がった。同じ労働市場のなかで、人手の足りなさが職業によって3倍近く開いている。

就業者の約35%を三つのグループに分けた

労働経済白書は、一般経済や雇用、賃金の動きを統計で分析して毎年公表される厚生労働省の報告書で、令和7年版は2025年9月30日に公表された。76回目にあたる。テーマは「労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて」で、第Ⅱ部第2章がこの社会インフラ関連職を扱っている。

白書は職業分類を三つのグループに束ねた。保健医療従事者や介護サービス職業従事者などの「医療・保健・福祉グループ」、保安職業従事者や輸送・機械運転従事者、建設・採掘従事者などの「保安・運輸・建設グループ」、商品販売従事者や飲食物調理従事者などの「接客・販売・調理グループ」である。就業者全体に占める割合はそれぞれ約11%、約12%、約12%で、合わせて約35%を占める。働く人のおよそ3人に1人がこの区分に入る計算になる。

この「社会インフラ関連職」という区分は白書が独自に設けたもので、産業別ではなく職業別に切り直している点が特徴だ。たとえば同じ病院で働いていても、看護師はこの区分に入るが事務職員は入らない。産業統計では見えにくい「現場で人が足りない仕事」を浮かび上がらせる狙いがある。

欠員率は約5%、医療・保健・福祉は約6%

欠員率は、その職業で働いている人に対して、企業が埋めたいのに埋まっていない席がどれだけあるかを示す割合である。数字が大きいほど現場の穴が大きい。

白書は「非社会インフラ関連職では、感染症の拡大後に一時的な上昇がみられたが、その後低下し、2024年には1.7%まで改善している」としたうえで、社会インフラ関連職については「欠員率はおおむね5%前後で高止まりしており、人手不足がみられる」と記した。三つのグループのうち最も高いのは医療・保健・福祉グループの約6%だった。

求人側の数字にも差が出ている。2024年平均の有効求人倍率は全職業が1.14倍だったのに対し、建設・採掘従事者は5.12倍、サービス職業従事者は2.98倍、輸送・機械運転従事者は2.18倍だった。新規求人数は社会インフラ関連職がそれ以外の職種の約1.25倍ある一方、新規求職者数は約4割にとどまる。求人は多いのに応募が集まらない構図である。

年間所得は約436万円、ほかの職種は約541万円

人が集まりにくい理由の一つとして、白書は処遇の差を挙げる。令和5年賃金構造基本統計調査の一般労働者でみると、毎月きまって支給される現金給与額は社会インフラ関連職が約32万円、それ以外の職種が約36万円。差がより開くのは賞与などの年間特別給与額で、社会インフラ関連職が約57万円なのに対し、それ以外の職種は約107万円ある。合わせた年間所得は約436万円と約541万円になる。

グループ別の年間所得は、医療・保健・福祉グループが約467万円、保安・運輸・建設グループが約447万円、接客・販売・調理グループが約367万円で、接客・販売・調理が最も低い。月間の総実労働時間は社会インフラ関連職が約211時間、それ以外の職種が約209時間で、保安・運輸・建設グループは約218時間と最も長い。

同じ構図は個別の業界を扱った白書でも確認できる。令和8年版観光白書を扱った記事「宿泊施設の72.2%が人手不足 令和8年版観光白書 宿泊業の年間賃金413万円は全産業より133万円低く、労働生産性は7割」でも、賃金の低さと人手不足が並んで示されていた。

働き手の増え方も細く、高齢化が先行

働き手の入り方にも差がある。2015年から2024年までの就業者数の増加は、それ以外の職種が322万人だったのに対し、社会インフラ関連職は58万人にとどまった。社会インフラ関連職では女性が増える一方、男性は緩やかに減っている。

年齢の偏りも進む。全年齢に占める65歳以上の割合は、2015年に社会インフラ関連職が約11%、それ以外の職種が約12%だったが、2024年にはいずれも約14%へ上がった。若い層はむしろ細っており、25〜34歳の割合は社会インフラ関連職で低下傾向、それ以外の職種ではおおむね横ばいだった。人口減少が進むなかで働き手をどう確保するかは、「中小企業の雇用者数、2040年に2018年比で最大16%減 2026年版中小企業白書が推計 「現状維持は最大のリスク」」で示された推計とも重なる。

白書は共通の課題として、経験を積んでも賃金が上がりにくく、キャリアの道筋が描きにくい点を挙げた。そのうえで、医療・保健・福祉グループでは長時間労働の是正とロボット・ICTの導入による負担軽減、スキルや経験に応じた昇進・昇給の仕組みづくりを、保安・運輸・建設グループでは2024年4月から適用された時間外労働の上限規制を契機とした働き方改革と若年層・女性の参入促進を、接客・販売・調理グループでは賃金水準の改善と自動レジなど省力化投資による身体的負担の軽減を、それぞれ対応の方向性として示している。

社会インフラ関連職は、需要が景気に左右されにくく、人が減っても仕事量がそのまま減るわけではない。欠員が埋まらない状態が続けば、病院の病床が使えない、路線バスが減便される、店の営業時間が短くなるといった形で、利用する側の暮らしに直接跳ね返る。白書が扱っている数字は2024年時点のもので、令和8年版はまだ公表されていない。