総務省は9月28日、1社が複数のテレビ局を持つことを制限してきた「マスメディア集中排除原則」を緩める省令改正を公布し、同じ日に施行した。同じ放送対象地域で1社が持てる地上テレビ局は、これまでの1局から2局に増える。あわせて国の普及目標である基幹放送普及計画も変更し、「民放の総合放送4系統が全国各地域であまねく受信できること」としてきた記述を取り下げた。

同じ県で2局まで 広域局同士は引き続き認めない

マスメディア集中排除原則は、放送法91条2項1号が掲げる「基幹放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保すること」という考え方に基づく規制で、1社が複数の放送局を営むこと(兼営)や、議決権・役員の兼任を通じて他局を支配することを原則として禁じてきた。地上テレビでは、同じ放送対象地域で1社が持てるのは1局までだった。ラジオはすでに同じ地域で4局まで認められている。

今回の総務省令第113号は、放送法93条1項5号ただし書きなどに基づき、2本の既存の省令を一度に改めるものだ。放送法施行規則では207条3項の「1を超えない場合」が「2を超えない場合」に改められ、「基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令」では8条に、同じ放送対象地域で持てる放送系を2つまでとする規定が加わった。ただし、そのうち広域放送に使えるのは1つまでで、東京・大阪・名古屋のように複数の県をまとめた広域放送を行う局同士の組み合わせは認めない。認定放送持株会社が1つの放送対象地域で傘下に置ける地上テレビ局も、1局から2局に増える。

「全国で民放4系統」という目標を書き換え

基幹放送普及計画は、国が放送の普及目標を示す告示で、1988年(昭和63年)の郵政省告示第660号として定められた。テレビについては「NHK(協会)の総合放送と教育放送が各1系統、民間放送事業者の総合放送が4系統、全国各地域であまねく受信できること」「全国の主要地域では民放5系統以上」と書かれていた。

総務省告示第357号による変更後は、NHKの2系統を全国であまねく受信できることは残したうえで、民放については「全国各地域において現に受信できる系統数の総合放送が受信できることを基本とし、その放送が当該地域においてあまねく受信できること」となった。系統数を増やす目標から、いま受信できる数を保つ目標へ書き換えた形だ。

ローカル局の営業利益は10年前の4割程度

総務省の検討会(座長・三友仁志早稲田大学大学院教授)が5月19日に公表した第4次取りまとめによると、県域を放送対象地域とするローカル局の営業利益は、2024年度(令和6年度)は広告収入の増加などで前年度より増えたものの、10年前と比べると約57%少ない。10年間で4割程度の水準まで落ちた計算になる。系列ローカル局の収入は系列キー局が制作した番組を流す対価であるネットワーク費に支えられ、地元企業から得られる収入は2割程度にとどまる。

人口の見通しも厳しい。取りまとめは、2020年と比べた2050年の推計人口が、北海道・信越・北陸・東海・近畿・中国・九州の各ブロックで2割以上、東北と四国では3割以上減る見込みだと指摘した。放送局が3社以上ある地域ほど1社あたりの平均売上高が下がる傾向も示されている。人口減少を受けて全国一律のサービス水準を実態に合わせる動きは、郵便の配達頻度・送達日数・ポスト本数、日本郵便が見直し要望を検討 郵便物は2001年度263億通から2025年度118億通へ55.1%減 営業損益は4年連続の赤字でも起きている。

取りまとめでは慎重な意見も併記された。キー局や準キー局は相対的に経営体力があるため同じ地域での兼営・支配を認める必要性や緊急性に乏しく、市場支配力の強化につながりかねないとして対象から外すべきだという意見や、放送の多元性・多様性・地域性の確保に留意が必要だという指摘が構成員から出ていた。今回の省令で広域放送同士の組み合わせを認めなかったのは、この線引きに沿ったものだ。

自社制作番組を持つよう努力を求める

基幹放送普及計画には、全国放送を除く地上放送を行う民間放送事業者に対し、普及の目標を持続的に達成するため「その経営基盤の強化を図るとともに、自らが制作する放送番組を有するように努めること」を求める規定が新設された。番組やその他の情報を積極的に配信するなど、放送の価値の向上に役立つ取り組みに努めることも盛り込まれた。取りまとめは、ローカル局は自社制作比率が低くインターネット配信による収入が極めて限定的だとしており、統合によるコスト削減で生まれた余力を番組制作に振り向けることを想定している。

総務省は改正案について5月30日から6月29日まで意見を募っていた。今回緩んだのは放送法93条1項5号が定める認定の要件で、実際に同じ地域で2局を持つには、総務相の認定を個別に受ける必要がある。