政府は9月30日午後5時40分から6時25分まで、令和8年の第13回経済財政諮問会議を総理大臣官邸4階の大会議室で開いた。議題は「年内に取り組むべき新内閣の課題」と、金融政策や物価に関するマクロ経済運営の集中審議の2本である。民間の有識者議員4人は、令和9年度予算を「責任ある積極財政元年」にふさわしい予算にするよう求める提言を出した。柱は、毎年の大型経済対策に基づく補正予算への恒常的な依存から脱却し、必要な施策を当初予算で手当てすることである。

「責任ある積極財政」とは何か

「責任ある積極財政」は、令和8年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」、いわゆる骨太方針で示された枠組みである。この方針は副題そのものが「『責任ある積極財政』元年」で、必要な成長投資を計画的に進める一方、補正予算への恒常的な依存から脱却し、債務残高の対GDP比の安定的な低下を中核として多角的な分析と検証を強化する、という方向を打ち出した。

言い換えれば、使うところは使うが、その全体像と返済の見通しを示して市場の信認を保つ、という組み合わせである。財政の持続可能性については、2040年までの計画期間を通じて国と地方の債務残高の対GDP比を安定的に低下させることを中核目標に置く。歳入から国債費などを除いた基礎的財政収支については、単年度で黒字化を追うのではなく、中核目標と整合するよう複数年度で改善・管理していくとした。

令和9年度予算は、この改革を実際の予算編成と財政運営に移す最初の予算にあたる。有識者議員の提言は、令和9年度を「責任ある積極財政元年」とするには予算を組むだけでは足りず、経済・物価・税収・金利や政策の効果、市場の状況を踏まえて必要に応じて政策を点検し見直す運営を具体化し、来年度以降の「型」として定着させることが重要だとした。

補正予算で措置してきた物価高対策を見直す

補正予算依存からの脱却は、具体的な金額を伴う話として提起された。提言は、これまで補正予算で措置してきた物価高対策について、令和7年度補正で約3兆円だったことを挙げ、必要な見直しを求めた。飲食料品の消費税率の引き下げや就業者負担軽減支援金が物価高対策としての意味を持つことを踏まえたうえでの整理である。

そのうえで、繰り返してきた一時的な物価高対策は必要性を精査し、所得の持続的な向上や負担構造の見直しへ政策の重点を移すべきだとした。歳入の側でも、租税特別措置と補助金の見直しの抜本的な強化を挙げている。この洗い直しについては、「日本版DOGE」で洗い直す租税特別措置、法人税関係は76項目 適用は延べ251万3286件 研究開発減税1兆69億円のうち3032億円は上位10社のとおり、法人税関係だけで76項目が対象になる。特別会計や基金からの歳入確保もゼロベースで進め、基金については長期の資金の滞留を抑え、必要に応じて返納させるとした。

当初予算で手当てする分が増えることは、要求の段階の数字に表れている。財務省が公表した令和9年度の一般会計概算要求は総額143兆656億円で、令和8年度当初予算の122兆3092億円を大きく上回る。このうち12兆1730億円は、高市内閣が新設した『「強く豊かな日本」投資枠』が占める。詳細は令和9年度の概算要求143.1兆円 新設の「強く豊かな日本」投資枠に12.2兆円 片山財務相「大幅な増加との指摘は当たらない」にまとめている。

長期金利3%程度 利払い費の扱いが論点に

2本目の議題は金融政策と物価の集中審議だった。有識者議員の資料は、世界で原油価格の高騰によるインフレが進み、AIや半導体、データセンターといった長期資金の需要が高まって海外の長期金利も上昇傾向にあるなかで、日本の長期金利もこのところ3%程度で推移していると指摘した。そのうえで、金利の動きに応じた国債の利払い費の増加を予算のうえでどう扱うかは、マクロ経済運営の観点から検討すべきだとした。

金利上昇の影響は一律ではない、という整理も示された。家計では30代から40代に住宅ローンを抱える世帯が集中しており、影響が時間差を伴って表れることに注意が必要だとした。一方で家計全体では金融資産が金融負債を上回っており、預金金利の上昇を通じて利子所得が増える面もある。資料は機械的な計算として、2026年3月末の家計の預金1018兆円の金利が0.5%分上がれば受け取る利子は5兆円程度増えるとの数字を挙げた。

飲食料品の消費税率については、引き下げから2年が経過した後は確実に税率を元に戻すべきだとした。物価高対策を抜本的に見直すなかでも、世界経済の変調などで大きな影響が生じる場合には予備費などを機動的に使って対応すべきだとし、便乗値上げやカルテルには厳正に対処するよう求めた。

日銀は短期金利を1.25%程度へ 年内に基本方針を改定

会議には日銀の植田和男総裁も議員として出席し、2026年9月の金融政策決定会合での決定内容を説明した。基調的な物価上昇率が2%に近づいているとして、無担保コール翌日物の短期金利の誘導目標を従来の1.0%程度から1.25%程度に引き上げたことを報告し、それでも緩和的な金融環境は維持されるとした。先行きについても、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針を示した。

内閣府は8月から9月中旬にかけて金融機関と個別に意見交換した結果も配った。現在の長期金利の水準について「やや高すぎる」「相応」と見方が分かれ、今年後半にピークアウトして上がっても3%前半にとどまるとの見立てと、消費者物価の上昇で3%後半まで上がるリスクを挙げる声の両方があった。日銀が国債の買い入れを減らすなかで、その穴を埋める買い手がはっきりしないという指摘も出ている。

今後の段取りとして、提言は投資枠の在り方や基金などの複数年度の予算管理、大型経済対策に基づく補正予算から脱却する方針を具体化し、年内の早い時期に「予算編成の基本方針」を改定するよう求めた。当初予算の段階での税収見通しの精度がこれまで以上に重要になるとして、内閣府と財務省が連携し、財務省がより的確に税収を見積もるべきだとも指摘している。令和9年度予算の政府案が決まるのは12月で、それまでに医療・介護を中心とした社会保障の制度改革や公共事業評価の見直しなどについても結論や方向性を得ていくとした。