財務省は9月25日、片山財務相が同日午後9時にスコット・ベッセント米財務長官と電話会談を行ったと発表した。発表文によると、両氏は「日米首脳会談でも議論があり、高市総理からも発言されたように、円の過小評価は問題であるという点を再確認」した。金融市場の動向などについて意見交換し、両国間の協力をさらに強化していくことも再確認したとしている。

首脳会談での為替のやり取り、財務相が「初めて申し上げる」と公表

この電話会談に先立ち、片山氏は25日午前の閣議後記者会見で、9月22日の日米首脳会談で為替が話題になっていたことを明らかにした。

会見では、日銀の利上げ決定後に円安が進み、同日には長期金利が一時3.1%を超えて30年ぶりの高水準になったとして、政府の対応を問われた。片山氏は「為替を含む足元の市場の動向についてはいつものように具体的な言及は差し控えます」と述べ、日銀が18日夜に金融機関へ相場水準を照会する「レートチェック」に踏み切ったとの見方についても「お答えはできません」とした。

そのうえで「為替についてお尋ねがあったので、官邸ともご相談の上で私から初めて申し上げますが、先日の日米首脳会談では、為替について、トランプ大統領から円安への懸念が示されました。高市総理からは、一般論として、円の過小評価は問題である旨をご発言されております」と語った。今後については「私とベッセント財務長官との間で引き続き為替を含め様々な事項について緊密にやりとりをしていくことになります」と述べた。

会談の場に米財務長官が同席していたため日本側は発言内容を把握していたとして、片山氏は「一連のことについては一切、特にサプライズということではございません」とも説明した。

首相も同日「円安によって米国の貿易が厳しい」と言われたと明かす

高市首相も25日の会見で、記者からこの点を問われ、自らのやり取りを説明した。首相は「今回の日米首脳会談におきましてですね、今おっしゃったような金融政策ですとか、それから財政政策に関するような議論はございませんでした」と述べたうえで、「ただ先方から『円安によって米国の貿易が厳しい』というお話がありましたので、おっしゃったように私は一般論として『円の過小評価』というのは問題であるという旨を申し上げました」と語った。

そのうえで「今後の高市内閣の取組としては、変わりません」として、「責任ある積極財政」の下で「強い経済」と「財政の持続可能性」を両立させる方針を維持すると述べた。

日米首脳会談は、第81回国連総会に出席するためニューヨークを訪問した高市首相が、現地時間の9月22日に行ったものである。首相官邸の記録によると、この日はトルコのエルドアン大統領との首脳会談やグテーレス国連事務総長との会談、ウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談、国連総会での一般討論演説も行っている。会談から3日後に、財務相と首相がそろって同じ日の会見で説明した形で、片山氏自身が「私から初めて申し上げます」と前置きしている。

「円の過小評価」は、実際の円相場が日本経済の実力に見合わないほど安いという見方を指す。円安は輸出企業の収益を押し上げる一方、輸入する食料やエネルギーの価格を上げる。米国側からは、円が安いぶん日本製品の値段が下がり、自国の貿易赤字につながるという不満が出やすい構図にある。財務省が9月24日の関税・外国為替等審議会の分科会に出した資料によると、8月31日と9月1日に米国アシュビルで開かれたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の際の個別会談でも、片山氏はベッセント長官と「秩序だった円相場は米国を含む世界の金融市場の安定のために不可欠である」ことを確認していた。この会議の報告は、日本の2026年成長率見通し、IMFは0.7%から0.6%へ 財務省が審議会に国際金融情勢を報告 米財務長官とは「秩序だった円相場」の重要性を確認で伝えている。

日銀は18日に利上げ、長期金利は3%台に

日銀は9月18日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針を決めた。賛成7、反対2の決定である。片山氏の会見によると、それまでの誘導目標は1.0%程度で、3か月ぶりの利上げにあたる。あわせて日銀当座預金の付利金利を1.25%、金融機関に資金を貸し出す際の基準貸付利率を1.5%に変更した。

日銀は公表文で、原油高や円安、AI関連需要の拡大を背景に国内企業物価の伸びが高い状態が続いていると指摘している。利上げは物価上昇を抑える方向に働くが、決定後の市場では逆に円安が進んだ。

長期金利も上がっている。財務省が公表する国債金利情報では、10年物国債の基準金利は18日の2.981%から24日は3.073%になった。片山氏は「長期金利も含めて金利は様々な要素において影響を受けるものでございまして、私どもとしては私どものできることをきちんとやっている」と述べるにとどめた。

7月の協調介入から続く枠組み

日米の通貨当局は7月31日、28年ぶりとなる協調介入を実施し、8月3日にそれぞれ共同声明を発表している。片山氏は会見で、この声明が日本側は高市首相、米側はトランプ大統領にまで上がっていたとして、「今回そういうことが首脳会談でも確認されたということでございます」と説明した。9月に入ってからの円高局面でも同氏が枠組みの維持を強調していたことは、片山財務相、円高進行でも「対応方針は一切変わらない」 日米協調介入の枠組み維持 米財務長官の「胴元」発言には論評避けるで伝えている。当時と比べると、相場の向きは円安に振れ直した。

片山氏は会見で、内閣改造で18人の閣僚のうち10人が異動した一方、米側の相手はルビオ国務長官、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、ヘグセス国防長官の「カウンターパートはみんな残っています」と首相が首脳会談の冒頭で触れ、場が笑いに包まれたことも紹介した。財務相同士の協議は、その流れを受けて25日夜の電話会談につながったことになる。